今回は、前回に引き続き、『カトマンズに飛ばされて 旅嫌いな僕のアジア10カ国激闘日記』という本を書かれた、古舘佑太郎さんに注目します。

アジアの国々を61日間かけて、バックパッカーとして旅をされた、古舘佑太郎さんのHidden Story。

サカナクション、山口一郎さんの"カトマンズへ行け"という言葉を受け、2024年3月1日、タイから始まった旅。

カンボジア・ベトナム・ラオス・中国・バングラデシュを経て、3月30日、古舘佑太郎さんは ネパールのカトマンズに入りました。

出会った人にも助けられながら、一人で考え、行動し、たどり着いた約束の地 カトマンズに到着した古舘さん。しかし、まだ旅は続きます。

「カトマンズに着いたっていうことで、一郎さんとの目的を果たした。でも、ちょうど旅から3月1日から出て1ヶ月ぐらいだったんで、なんかこのまま目的が終わって残り1ヶ月過ごすのも嫌だったので、やっぱりインド怖がってたけど、インドに行ってガンジス川に沐浴しようっていう。

今度は自分との約束みたいのを掲げてたので、インドに行かなきゃっていうことで。しかも4月5日が僕の誕生日だったんですよ。なので、誕生日にネパールのポカラからインドのニューデリー目指して越境バスに乗るっていう、すごく自分の中でもメモリアルな気持ちで乗り込んだんですけど。もう、とんでもなく揺れるんですよ、道が。

ネパール、ただでさえトランポリンみたいに跳ねる車内が過酷なんですけど、その状態で10何時間揺られて、ようやくインドに夕暮れ時に着いて。

インドの国境に向かって国境審査官たちのとこに入っていったら、僕のビザだけが認められなくて、最初はもうそんなの絶対ありえないと思って、こんなとこで止められるわけないと思ったんで、いやいやいやって言うんすけど、まったくダメなんですね。

20250509h02.jpg

もうとにかくダメだと、"お前は入れない"って言われて。信じられなかったんですけど、気づいたらもう本当に僕だけ。僕以外を乗せた乗客みんなインドに行ってしまい、僕の乗ってたバスもいなくなり、そこに僕の本当にリュックサックだけがポツンと捨てられてて、もう泥だらけになってて。初めてですね、ここはどこっていう状態。で、自分は何してんだろうっていうのよくわかんないまま、ぼーっと30分ぐらい座り込んで。」

aaこのように、紆余曲折あって やっと入国したインド。最初に古舘さんが向かったのは、インド北部の街、レーでした。

20250509h03.jpg

そこがもう標高3800メートルぐらいあるんじゃないかっていう、もうとてつもない。なんて言うんだろうな、もう目の前の景色がヒマラヤのような真っ白なあの雪景色と、茶色い岩だらけの、峰に囲まれてるような閉鎖空間みたいな天空の街で。それで、そこに着いて当然携帯の電波も入らない極寒の地なんですよ。僕、東南アジアから巡ってたから、そんな防寒具も持ってない。しかも偶然その日が日曜日で、ただでさえもう街なんて言えるもんじゃない集落みたいなところの、唯一のちっちゃいマーケットも全部閉まってて、もうほんとにどうしようっていう状態だったんですけど。そこでもゲストハウスのお兄ちゃんと出会って、優しくしてもらって、そこに泊まることができて、そこでバイクをレンタルできることが分かったのでバイクをレンタルして、レーの街からちょっと離れたとことかをバイクで旅をしたんですね。

景色がすごいので、ほとんど車もないし、ビルもないし、そんなところをなんかバイクで走るのはすごい気持ちよくて。調子乗っていろいろ遠くまで行ってたら、とある山の上の寺院に行った時に、一番上の方にブッタ像があって、すごく珍しかったんですよ。ほとんどブッタ像は屋内にあるものばっかりだったんで、青空の高い山の上にブッダがポツンとあるのがかっこよかったんで、そこに行った帰りにバイクの鍵をなくしてしまいまして。もうパニックですよね。

もう何百段も階段降りたところで気づいて、え、ない?でも、ここでバイクの鍵がなかったら、もう多分、人里戻るまでに歩いて何時間...4時間ぐらい、下手したら。人もいない、車もない、どうしようみたいな。で、マイナスに気温がなるらしいんですよ。どうしようと思って、もう1回その階段一段一段ずつ調べながら登って、ほんと偶然なのか、僕のただのうっかりなんですけど、ブッダの右手の先にポツンと鍵が置いてあって。」

20250509h04.jpg

実は、このあと、さらなる出来事が古舘さんの身に起こるのですがそちらはぜひ本をお読みください。

さあ、インドでの目標は、ガンジス川で沐浴をすることでした。これは実現したのでしょうか?

「やっぱりガンジス川は、ヒンドゥー教徒の方からすごく神聖な川として崇められていて、ヒンドゥー教徒が人生で一度はガンジス川に訪れたいっていう、ほんと夢見るような場所らしいんですけど。だから僕もガンジス川はぜひ行きたいなと思っていたんですけど。プラス、やっぱり旅の間一人ぼっちだったので、いろいろ考える時間があって、後悔するのだけが嫌だなと思って。ここまで一生懸命来たんだし、カトマンズも行けたんだし、なんかもう一生自分がしないようなことをしてみたいって思いにもかられてて。自分が潔癖症っていうことも相まって、ガンジス川に飛び込もうっていう目標を掲げてしまったんですよね。

先ほども言ったように、宗教的には神聖な川ですけど、でもやっぱりそこには動物だったりとか、人間の生活排水だったりとか、火葬場がたくさんあって、そこでご遺体が焼かれてそのまま流されたりとか。もういわゆる旅行客の免疫力ではどうにもならないものがたくさん宿っている川でして。だから現地の人たちはそこで泳いだり、沐浴したりしてるんですけど、外国から来た人はやめた方がいいよっていうのが当たり前の場所で、みんな眺めるだけの場所なんですけど、中には日本人で沐浴した方たちがいて。

そういう体験談とかを聞いてるうちに、なんか自分も興味が湧いたんですよね。でもやっぱ怖くて入ると体調崩すっていういろんな噂を聞いてたので、どうしようかなと思ってたけど、やっぱし最後はどうしても入りたくて挑戦して、朝6時ぐらいですかね、早朝7時ぐらいにガンジス川の中に入って。で、3回お祈りして潜るっていうのやって、ちょっと泳いでみたりして、どうなるんだろうと思ったら、なんかもうとてつもない爽快感に包まれちゃって。大袈裟じゃなく、人生で初めての経験でしたね。」

20250509h05.jpg

ガンジス川の沐浴など インドを旅したあと、古舘佑太郎さんはスリランカ、そしてタイを経て帰国されました。

20250509h06.jpg

このアジアを巡る旅。そもそも、バンドを解散したことをきっかけに、山口一郎さんの言葉もあって、旅をすることになった、というお話でした。旅を終え、音楽については、今どんな思いをお持ちなのでしょうか?

「音楽に関して言うと、やっぱりこの本ですごく自分の中で見つめ直したことがたくさんあったんで。ただなんかそれを自分が語る時というか、答え合わせするときは、やっぱり音楽でしなきゃ意味ないなと思ってて。

だからこの本でもずーっと音楽に対しての今までの考え方とかズレとかは書いてるんですけど、最後こっからこうしていきたいってことは明言してなくて。今もそれを自分が表現するときは、あくまでもその感じたこと、音楽に対してこうしていきたいとか、音楽で鳴らさないとなあと思って。でも、そんな中でも思ってるのは、ちょっと抽象的な言葉になっちゃうんですけど、この旅で2ヶ月間自分がしてた旅をしてた気持ちと近い気持ちで音楽をやりたいなって少し思っているんですよね。

失敗もあるし、道も間違えるし、うまくいかないこともたくさんあるし、計画性のない行き当たりばったりの出会いがたくさんあってって、なんかそういうものに価値を見出して、なんか遠回りも楽しめるような気持ちで音楽やりたいなとは思ってますね。」

20250509h01.jpg

『カトマンズに飛ばされて 旅嫌いな僕のアジア10カ国激闘日記』 古舘 佑太郎

幻冬舎