今回は、前回に引き続き、布袋寅泰さんのニューアルバム『GUITARHYTHM Ⅷ』のHidden Story。

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まずは、アルバムに先行してリリースされた、Charさんをフィーチャーしたナンバー【Side by Side】!

【Stereocaster】という楽曲以来、19年ぶりの2人のコラボとなったこの曲について教えていただきました。

Charさんとは僕がまだ10代の頃、Charさんの音楽を初めて聞いた時に非常にショックを受けてですね。僕がギタリストとして存在するのは、 Charさんの存在あったからだと思うんですね。今回、【Stereocaster】からなんと19年ぶりに久しぶりのコラボレーションをお願いしたんですけれども、やっぱりシルエットが見えた瞬間にその人のギターが聞こえる。

それは全てのギタリストの理想だと思うんですよね。Charさんとの場合は、あまりフレーズ細かいところまで作ってCharさんに弾いていただくというよりは、なんとなくのモチーフがあって、特にこの【Side by Side】は♪パーンパーンパーンというフレーズだけが初めにあって、その他はコードを決めながら2人がほとんどアドリブで作ったという感じですね。それがセッションの極意であって、相手が投げてきた音をどんな風に返すか、そんな中でスリルを味わったり、またそこにリラックスした、愛情あふれた会話を味わうような。これはやっぱりCharさんだからこそできたセッションだし、Charさんだからこそ生まれた【Side by Side】という曲だと思います。」

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今回、この曲のリリースに際して、YouTubeにて布袋さんとCharさんのスペシャルトークセッションが全3回アップされていて、その中でも お話になっていたのが、お二人ともギターを弾きながら歌う、というタイプのギタリストであるということです。

「ギターを弾きながら歌うギタリストであるという。これって世の中でも多そうでいないというか。クラプトンやブライアン・セッツァーやジョン・メイヤーや、もちろんプリンスとかたくさんいますけれども、意外とそうはいないんですよね、やっぱり。でも、歌うギタリストだからこそ奏でる音があるし、その声のようにね、ギターの響き、そしてビブラートやトーンっていうのがあると思うんです。そんな風に聞いていただくと、布袋のギターは布袋の歌みたいだな、CharのギターはCharの歌みたいだな、というようにギターを聴く楽しみが増えるんじゃないかなと思います。」

前回、布袋さんはファンクミュージック、カッティングギターにも影響を受けた、とおっしゃっていました。アルバム4曲目の【Love is】も冒頭のカッティングギターが印象的です。

そして、カビラがカッティングギターが好きということもあり、このカッティングギターについてもお話しいただきました。

もちろんディストーションをかましてですね、クィーンとギターが伸びる。そしてヘビーなロックを奏でるのもロックギターの醍醐味ではあるんだけれども、でも、アンプにギターを直にさして生々しい音で右手と左手の音符の長さを調節しながらですね、なんか体を動かすように、まるでダンスを楽しむように指先で踊るっていう。そういう意味では、カッティングは弾いてる方も聞いてる方も気持ちいいギターのスタイルだと思うんですよね。だからカビラさんもきっとギター弾くときは、そんなファンキーなEarth Wind&Fireとか、そんなみんなが踊り出したくなるようなギターを弾かれるんじゃないかなと思いますし、いつかカッティングのセッションをできたら楽しいですよね。」

今回は、電気グルーヴ 石野卓球さんとの初めてのコラボ楽曲も収録されています。タイトルは、【Move Your Body】

もう電気ブルーも昔から大好きな音楽ユニットでですね。そして石野さんとはちゃんとじっくりお話するのは今回初めてだったんだけど、どう考えてもルーツが一緒だなっていうか。ニューウェーブ、パンク、テクノ。僕はギタリストであったからこういった形になったけれども、石野さんのデジタルというか、ダンスミュージックとロックンロール、きっとこの2つの要素がぶつかった時に必ず面白いものができるなという確信はありましたね。ロックとテクノの融合っていうよりは、異種格闘技に近いっていうか。で、今回はリズムの骨格を卓球さんに作っていただいて、そこに僕がギターのリフを乗せていって、何度かやり取りして完成させたんですけれども、歌詞も途中でね、電気グループを匂わせる歌詞をあえてのせたりとか、体を揺らしながら楽しんでいただける曲に仕上がったと思います。ある意味では、このMove Your Bodyって曲が1GUITARHYTHMらしいというか、ザクザクとした尖った感覚と、ビートと。だから卓球さんにお願いしたことで、ニューウェーブへのオマージュが2025年の新しい波としてのニューウェーブに結びついたような、仕上がったような。そんな感じですね。」

ちなみに、今回ロンドンのご自宅とオンライン会議システムを繋いでお話をうかがったんですが、画面越しで布袋さんの後ろに見えたのは、額に入った、デヴィッド・ボウイのアルバム『Heroes』のジャケット写真。

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こちら、写真家・鋤田正義さんによるオリジナルプリントなんだそうです。デヴィッド・ボウイも素晴らしいポップミュージックを生み出し続けたアーティストでしたが...。

BOØWYCOMPLEX、そしてソロ。 布袋さんの音楽を貫いているのは、どんなことなのでしょうか?

「やっぱり僕はこのアバンギャルドとポップの狭間、そこをいかに描くっていうところにすごく意欲を感じていて。アバンギャルドと言っても難解だという意味合いではなくて、チャレンジング、何か挑戦的であるということ。これは曲作りやテーマ作りもしかりですけれども、でもやっぱり聞いた後に音楽という余韻が広がっていく。そして心の色が一色増えるようなね、カラフルになっていくような。それをポップという言葉で表すとしたら、何かこう自分の感性がビビッと響きながら、そして心が豊かになるような、アバンギャルドでポップなものというのは自分の大切にしたい音楽のスタイルの1つですね。」

歌詞の面では、どのようなテーマをお持ちなのでしょうか?最後に教えていただきました。

「僕の書く歌詞は本当に、言葉のボキャブラリーが少ないというのも相まってですね、ずっと変わんないんですよね。言ってみれば、今、君は夢を追いかけているか。今、君は自分らしく生きているか。今、君は何かを探し求めているか。常日頃生きていると、どうしてもうつむいたり、忘れがちな自分自身というものをね。時に流されたり、またどこか自分で諦めなければいけないことももちろんありますし。ただ、でも、そうやっても時間は流れて、自分の人生は続いていくんだっていう。そして明日のために今日はあるんだという、全てやっぱりポジティブに変換できるような、そんな音楽を作り続けていきたいし。言葉やサウンドでもそういった、元気になる音楽でありたいなと思ってるんで、そこはもうずっと変わらないですね。」

布袋寅泰