今回は、元Jリーガー 清水慶記さんが立ち上げたチョコレートブランド『よろこびをしるす。』のHidden Story。

まずは、Jリーガーだった清水慶記さんがなぜチョコレートブランドを設立されたのでしょう?そもそも、チョコがお好きだったのでしょうか?
「アスリートではあったのでそんなに頻繁に食べるわけではなかったんですけど、学生の頃に今の妻からバレンタインデーでチョコレートをもらいまして。そのチョコレートがめちゃくちゃ美味しくて、クリームチーズが入っていてかなり濃厚なチョコレートだったんです。自分はブラックコーヒーが当時飲めなかったんですけど、それを食べてから、コーヒーと合わせてチョコを食べる、みたいなのがすごい良いなっていう風に思って。そこからブラックコーヒー単体でも飲めるようになったっていうのがあるんですけど。で、妻にレシピを教えてもらって、バレンタイン以外の時間でも食べたいなと思って、自分で作って、休みの日にコーヒーとチョコレートを合わせて食べるのがリラックスする時間みたいな感じで過ごしていたというのが経緯ですね。」
ちなみに、2016年に加入したザスパ群馬では、こんなニックネームで呼ばれていたそうです。
「ザスパ群馬ではサポーターから1人1人キャッチコピーをもらえるんですけど、その中に【ゲームパティシエ】というキャッチコピーがあって。名前が慶記、というところから派生してゲームパティシエっていうキャッチコピーをいただけることになって。その当時から、ゲームパティシエが本当にチョコレートとかお菓子を作ってスタジアムググルメで出したらサポーターの方が喜んでくれるかな、というのを2016年ぐらいからちょっと考えてたというところですね。」
2016年、清水さんはザスパ群馬に加入。その後、ブラウブリッツ秋田、大宮アルディージャでもプレーし2020年に再び、ザスパ群馬に戻ってきます。そして、プレーをする中で年齢も30代後半に差し掛かり選手を引退したあとのことを考え始めた清水さん。以前から構想していたチョコレート作りについて、クラブに相談を持ちかけました。
「セカンドキャリアも考えて、ちょっとそういうことを考えてますという話をした時に、個人事業主でやっていいよっていう話をしてくれて。僕としてはすごく意外な、予想外の反応だったというか。Jリーグって選手の肖像権がリーグ側にあったりして、写真を使ったりエンブレムを使うということになると売り上げの何パーセントをクラブにくださいねという話になったり、他のビジネスをする時になかなか難しいのかなと思っていたところ、ザスパ群馬はもう個人事業主で自由にやっていいよって言ってくれたので、そこから自分で元々作ってたチョコレートをザスパ群馬のスポンサー企業さんに配り回って、1度食べてもらってこういったチョコレートを販売したいんですというような話をスポンサー企業さんにして回ってたって感じですね。」
突然の提案だったのにも関わらず、清水さんのチョコは好評を博しました。
「結構受けも良く、色んな企業さんが興味を持ってくださって。その中でもホームセンターのカインズさんがザスパ群馬のメインスポンサーなんですけど、カインズさんから、カインズの中にカフェスペースでCAFE BRICCOというお店があって、その中でマフィンを主に販売しているんだけど、もしよかったらマフィンをプロデュースしてみないかという話をいただいて、現役中に動き始めました。
実際、僕も練習の合間を縫って群馬から本庄に、埼玉の本庄にカインズの本社があるんですけどそこに通いながら実際にカインズさんのキッチンで一緒にマフィンを焼かせてもらって、チョココーティングさしてもらって、っていうのをやりながら。5月ぐらいからスタートして、結局販売したのは11月ぐらいですかね、その年の。」
さらに、目標だったチョコレートの販売についてもザスパ群馬のスポンサー企業が協力してくれることになりました。

「それもスポンサー企業のジーシーシーさんという前橋のIT系の企業なんですけど、子会社で農業に参入しようっていうことで。ジーシーシーアグリテックという農業とテクノロジーを掛け合わした事業をやっている会社さんが、僕がキッチンカーでスタジアムグルメとして販売するのが夢ですというような話をした時に、たまたまその年からキッチンカーで農業で育てた野菜を使ったものを販売していきたいということで、一緒にやってみないかというお誘いをいただいて。
実際、去年の開幕戦からキッチンカーで販売させてもらうような流れになったんですけど。」
引退後、ということになりましたが、最初に思い描いた通りゲームパティシエのチョコレートを、スタジアムグルメとして販売。
チョコレートブランド『よろこびをしるす。』が誕生しました。現在はチョコレートの事業のほか、ザスパ群馬のクラブアンバサダー、そしてアカデミーのゴールキーパーコーチをされている清水慶記さん。最後に、今後のヴィジョンを教えていただきました。
「子供たちにJリーガーになりたいと言われた時に、実際今の自分が胸張ってその子に対してJリーガーになって頑張れと言えるかって言ったら、ちょっと今胸張って言えないなというのがあって。
それは、今は必ず引退後大変な思いをするというのが分かっている状態なのかなと思っていて。親御さんもJリーガーになったところで、という考えになってしまうと、Jリーグ自体が衰退していくだろうなという風に思っているんですね。
なので、僕がJリーガーの中では日本代表クラスになってるわけでもないですし、Jリーガーの中で言ったらくすぶってきたようなJリーガーだとは思うんですけど、こういった立場の選手でも挑戦したことによって、これだけ成功できるんだよって、花開くんだよっていうのを証明したいなと思っていて。
Jリーガーになったらセカンドキャリア不安だよね、ではなくJリーガーになったら安泰だよね、色んなことにチャレンジできるよねっていう形にしていきたいなって思っていて。これまで真摯にサッカーと向き合ってきたからこそできた自分の価値みたいなものを利用して、スポンサー企業さん、ほかの企業さんも自分のやりたい事業に選手を巻き込んでPRできるような形。さらにはそのクラブのスポンサー企業さんとしてクラブをPRできるような形を作ってウィンウィンの状態でスムーズにセカンドキャリアに移行できるような形を、自分がロールモデルとして作っていけたら嬉しいなという風に思ってます。」


