今週は、チョコレートソムリエとして活動されているさつたにかなこさんのHidden Story。 世界のチョコレートを輸入・販売する『トモエサヴール』の代表を務める、さつたにかなこさん。

チョコレートにまつわる仕事を始めたのは、90年代の終わり頃ということなんですが...そのきっかけはどんなことだったのでしょうか?
「私自身は元々チョコレートが好きでこの業界に入ったわけではなく、紅茶が好きだったんです。それで紅茶を売りたいがために紅茶の販売している会社に入りまして。そしたら、その紅茶を販売してる会社がいろんな輸入商品を扱っていて、その中にチョコレートがあったんです。チョコレートの部門の有名なお店があるんですけれども、そこのお店の店長さんが退職され後釜になる方が誰もいないということで、私に白羽の矢が立ちまして、そのチョコレートの部署に入ることになりました。私はチョコレートのことをしようと思って入ったわけではないので全くチョコレートに関しては無知で、しかも1粒で当時240円とか300円とかそんな値段で売っているっていうところで、自分がそんな値段でチョコレートを買ったことないので、この値段で満足して買ってもらえるためにどんな説明したらいいんだろうと思って色々勉強し始めるうちに、チョコレートの魅力にどんどんとりつかれたと言ったら変なんですけど...。それで、その先にカカオのお話が出てきまして、カカオは産地が違ったら味が違うんだということが分かって。でもその産地のことを知らないなと思って勉強し始め、今度はカカオに興味を持ち始めたというのが、私がこの世界に入っていくきっかけですね。」
その後、最初の会社は離れ、チョコレートの輸入などチョコレートにまつわる仕事をしていたさつたにさん。2014年、こんな仕事が舞い込みます。
「2014年に阪急百貨店の梅田本店でバレンタインチョコレート博覧会がありまして。それは今もずっと毎年やってるんですけれども、そこで初めて"板チョコレートだけを集めた売り場を作りたいんだけど、その監修を手伝ってもらえませんか"というお声がけをいただきまして。 "bean to barと呼ばれる、カカオ豆からチョコレートまで一貫生産してるチョコレートが世界中でムーブメントが起きてるので、そういったものに光を当てて紹介しませんか"ということでそれを私が紹介することになりました。その時に、色んなブランドのチョコレートを紹介するので、急に降って湧いてきたように誰か名前が出てきてもなんだかよくわからないんじゃないかなという話で、《チョコレートソムリエ》という肩書きがいいんじゃないかという風になりまして。この食事ならこのワインがいいですよ"と選ぶのと一緒で「こんなものが食べたいんだけど」と言われたら、「それだったらこれがいいですね」みたいな感じで。ブランドを問わず色んなところの"こっちのブランドのこれがいいですよ"とか、「このブランドのこのチョコがあうんじゃないですか」みたいな感じでご紹介するのがソムリエの仕事に似ていたので、チョコレートソムリエにしましょうとなりました。」
板チョコにまつわるイベントについてのコメントがありましたが、実は今も『トモエサヴール』では、板チョコを中心に扱われています。その理由はどこにあるのでしょうか?
「私自身も、最初ボンボンショコラの販売から入りまして。王室御用達のチョコレートとか、そういうものから入って、それも本当に素敵だし歴史もあるんですけれども。今度は、その次に販売したのがMOFと呼ばれる最優秀職人の方の技術の入ったボンボンショコラで、だんだんカカオに興味が持ってきたので、カカオを1番味わえるものとなると、カカオの味がしっかり分かる...シングルオリジンという呼び方をするんですけど、単一の品種のカカオだけを使ったほんとにシンプルな板チョコレートが1番その味わいをしっかり感じることができるので。これだな、と色々食べてきた中でたどり着いたという感じです。」
カカオの味わいをしっかり感じることができる〈板チョコレート〉。トモエサヴールでは、各地の先住民族が作るカカオを原料にした板チョコも販売されています。

「コロンビアだと、シラネバダ山脈という山脈があるんですけど。そこの白い衣装が印象的なアルアコ族という民族がいるんですが、その方たちのカカオだったりとか。あとはペルーのアマゾナスというエリアで狩猟民族としても有名なアワフン族という民族がいて、そのカカオを使ったものとか。あとは、アンデス山脈の麓でフニン地方という場所にもアシャニンカ族とか、マチュゲンカという方たちが暮らしていらっしゃって、そのカカオを使ったチョコレートなど、結構いろんな先住民族の方が関わっているチョコレートがあります。こんなに地球の裏側に行って色んな先住民族の方に会えたりとか、この仕事じゃなかったらできなかっただろうなと思うので、ほんとに貴重な仕事をさせてもらってるなと思ってます。なので、携帯の中に自分で、ケチュア語の辞書とか、アルワコ語の辞書とかを作って、教えてもらった言葉はそこに貯めていくようにしたりしています。」
さらに、[お茶のチョコレート]について教えていただきました。
「ここ数年、フレーバーのチョコレートが人気があるんですけれども。その中でも、お茶を使った、ティーチョコレートという言い方をしてるんですけど、それがすごく人気になりまして。チョコレートでよく日本だと抹茶のパウダーが入ったホワイトチョコレートで緑色のチョコ、というのは皆さんイメージをしやすいと思うんですけれども、そうではなくて本当にカカオの香りがしっかりある茶色いカカオのチョコレートにお茶を混ぜ込んで、そのお茶の味とカカオの風味が両立しているというようなチョコレートになります。中国茶のジャスミンティーとか、あとは台湾のお茶ですね、鉄観音茶とかウーロン茶とか、あとはスパイスを使ったマサラチャイとかのようなインドのお茶だったりとか。そういったものもありますし、日本で今、和紅茶というものがすごく注目をされてるんですけれども、熊本の茶農家さんの〔お茶のカジハラ〕さんのべにふうきを使わせていただいたお茶のチョコレートとか。あと、三重の亀山の〔Jikonka〕さんで、いま青柚子に紅茶を詰めた小青柑というお茶を作られてるんですけれども、そんな日本のお茶を使ったものも作っています。」
取り扱うチョコレートは300種類以上。さらに、インターナショナルチョコレートアワードの審査員も務めるさつたにかなこさん。
最後に、会社の名前『トモエサヴール』に込めた想い、そして、さつたにさんが考えるチョコレートの魅力についてお話しいただきました。
「社是が【心体魂が喜ぶ上質な味わいをお届けします】ということで、サヴールはフランス語で味わいという意味がありまして。トモエは、よく私がトモエちゃんだと思われるんですけど名前ではなくて、三つ巴とかの巴という意味で。心にも良くて、体にも良くて、魂が喜ぶ、または地球環境にも良いという、そういったものを届けたいなということでこの会社の名前にしました。チョコレートの原料は言わずと知れたカカオなんですけども、カカオはいま日本で育てようとしてるところもあるんですけれども、一般的には寒いところでは育たないんですね。私たちの場所からは遠く離れた場所で育つカカオを使ったチョコレートということで地産地消もいいことなんですけども、そういう私たちから見えない、知らない、地球の裏側のことを知ることができる切符みたいなものだなという風に思ってます。その国ってどんな国なんだろうとか、そういうことを知るきっかけですね。それを与えてくれるのはチョコレートで、いろんな人と出会わせてくれるのもチョコレート。自然が作ってきたもの、そういった壮大なドラマの旅へ招待されている切符として受け取ってもらえたらなと思っています。」
トモエサヴールは、伊勢丹新宿店で1/15から1/20まで開催される「サロン・デュ・ショコラ」PART1や、銀座松屋「バレンタインワールド」、池袋東武「ショコラマルシェ」などにご出店されます。
また、チョコレートはオンラインでも購入できます。
【トモエサヴール】

