今回注目したのは、大阪のてぬぐいブランド『てぬぐいChill』。こちらを手がける三上翔さんにお話を伺いました。まずは、『てぬぐいChill』とはどんなブランドなのでしょうか?

「大阪の柏原市の地場産業である注染という染色技法を用いて、ストリートアーティストのアートワークを落とし込んだてぬぐいを作っています。」
【注染】という言葉がありました。この【注染】とは...?
明治期に生まれた伝統工芸です。布の染めない部分に型紙でのりをつけて、50枚ほど重ねて染料を注ぎ込む染色技法になります。戦前は、大阪でも市内の方に染屋さんがあったんですけども、戦争で焼けてしまったりとかで、戦後、生地を求めた人たちが堺の方に、水を求めはった染屋さんが柏原の方で事業を起こされました。染めない部分にのりを引くんですけども、そののりを染めた後にのりを水でザバザバと落としたりするので、やはり水がないとなかなかできない染色技法になりますね。それこそ戦後の頃とかは、浴衣の生産量とか日本一ぐらい、もう染屋さんが何軒も川沿いに並んでいて、川の色が染料の色で変わってしまったというぐらい盛り上がってたんですけども、今ではやっぱり微々たるものですね。」
【注染】とは、布を染める方法の一つで、明治時代の大阪で生まれたものなんだそうです。『てぬぐいChill』がある柏原市は、水が豊富だったこともあり、戦後に染屋さんが増え、最盛期には全国の浴衣の25%を生産していたということ。しかし、その染屋さん、今は市内に数軒程度。激減してしまいました。
今回ご紹介している三上翔さんは、ご実家が その注染で使う《のり》を製造する町工場。三上さんは、なんとか注染を盛り上げたい、という想いから2016年にてぬぐいを扱う実店舗をオープンします。
「まず初めにてぬぐい屋としてオープンさせたんですけども、取り扱ったてぬぐいとしては堺のてぬぐいが中心だったんです。なぜかというと柏原の染屋さんはOEMがほとんどで、柏原産を名乗れる手ぬぐいがなかったからなんです。それで、柏原で店をやっているので、柏原産の手ぬぐいをやっぱり販売したいということで、自分で柏原の染屋さんにてぬぐいを作ってもらって、柏原産のてぬぐいを販売しようと思ってブランドを立ち上げました。」
そして、てぬぐいをより広い世代に使ってもらうため、デザインには こんな工夫をほどこしました。
「今まではどちらかというと、もう少し年代が上の女性をターゲットにしたブランドさんだったりとか、伝統的な和柄のてぬぐいだったりというのが中心だったので、可愛いデザインだったりポップなデザインっていうのを心がけてデザインをお願いしてますね。僕自身がジャマイカンミュージックだったりとかヒップホップが好きだったりするので、例えばラジカセをデザインしてほしいという発注をかけたりとか、音楽にインスパイアされて作ることは多いですね。」
2017年にブランドを立ち上げてからこれまで、さまざまなミュージシャンやショップとのコラボもおこなってきました。今もオリジナルのてぬぐいの制作について多くの問い合わせがあるそうです。そんな『注染てぬぐい Chill』。ちなみに、注染によるてぬぐいの素晴らしさはどんなところにあるのでしょうか?
「なんで染めのてぬぐいがいいか?うちのてぬぐいで言うと2500円もしちゃうんですけども、それでもなぜ染めのてぬぐいを使いたいと言うてくれる人が多いのかっていうと、シルクスクリーンだったりとかプリントでもてぬぐいってあったりするんですけども。そういうプリントのものだと顔料インクがのってたりとかで、そこの色が付いてる部分がごわごわになって水を吸わなかったりするので、柄が全面に入ってても水を吸うというのが染めとプリントで全然違うので今でも染めのてぬぐいを使いたいと言ってくれる方が多いという感じですね。色落ちはしたりしちゃうんですけども、でもそれはデニムの色落ちを楽しむような感じで、色合いの変化も楽しんでもらえたらなと思ってます。」

大阪府柏原市で、2017年にブランドを立ち上げ。地元の伝統の技とポップなデザインを融合。新しいてぬぐいを作ってきた『注染てぬぐい Chill』。最後に、これからのヴィジョンについて 三上翔さんにうかがいました。
「おかげさまで日本中いろんなお店さんのOEMだったりとかもよく作らせていただいて、という感じなんですけども、今後は海外の人たちだったりとかにも届けられるように広げていけたらなと思ってます。そうですね。もちろんイケてるてぬぐいを届けたいと思ってるんですけども、いけてるだけじゃなくて、毎日ポケットに入れてもらえるような、生活に根付いたてぬぐいを作りたいですね。」