今回は、前回に引き続きOfficial髭男dismのニューアルバムRejoice』のHidden Story今回は、アルバムの11 曲目、【Anarchy (Rejoice ver.)】のお話から。2022年に配信リリースされた【Anarchy】が新たなアレンジで、Rejoice ver. として収録!この曲について、藤原聡さんはこう語ります。

20240726h02.jpg

「ライブにおいて盛り上がりをすごく感じる曲でもあったんだけど、もう1段階ギアを上げられる気がして、ライブアレンジっていうのをやってみたんですよね。そしたら、当時声出しできないライブ会場にも関わらず、お客さん・みんなの熱量っていうのがすごくグワっと上がる感覚があって。で、手応えを感じたので、今回。というか、最近そうなのかもしれないですけど、何かタイアップとかでシングル曲という感じで世に出していくと、アルバムの新しい楽しみっていうのがなんかちょっと減ってしまうと言ったら言い方がちょっとあれなのかもしれないですけど、新しい曲を聴くときのワクワクっていうのが、何曲か分少し減ってしまうような感覚っていうのがあって。でも、そのアルバムってやっぱり自分たちの活動の記録でもありたいし、だからその既存の曲は全部もうはじいて新録だけで作りましたっていう風にするつもりも特になかったんですけど、やっぱり楽しんでほしいっていう思いもあって。これはライブバージョン、手応えもあったし、録り直しっていうか、このバージョンも世に音源として残したいという思いがメンバーの間に芽生えまして。さらにテンション上がるようにリアレンジを加えたというような形でしょうか。」

さらにテンションが上がるように リアレンジされた【Anarchy】。アルバムで、そしてライヴ会場でお楽しみください。さあ、アレンジの話でもう1曲。【Chessboard】というナンバーの、<大きな歩幅で 一っ飛びのナイトやクイーン> というところ。これは、バンド、クイーンを意識したアレンジなんでしょうか?

「歌詞がね、[クイーン]だったんで、QUEENだろうっていう感じで。で、ちょうどそこ、ブレイク入るような感じの譜割だったので、じゃあこれもう音楽の神様がやれって言ってんなって。こういうのやってった方が面白いでしょっていうことで、ちょっとだけやらしてもらいましたね。ずっとオマージュみたいになると、その曲のオリジナリティが...みたいな話になったりするっていうのもあるけど、それが音楽的に1番良ければやるんですけど。そうですね、やっぱQUEENというバンドはすごく僕含めメンバーも大好きなバンドですし。で、たまたま全然関係なく、そのチェスの駒の名前としてクイーンが出てきたので、ご縁ということで、ちょっと取り組みましたね。」

20240726h03.jpg

この遊び心、最高です。遊び心といえば、こんなユニークなタイトルの曲、【うらみつらみきわみ】も収められています。

「あんな人間どっかで転んでしまえばいいのにっていうフレーズは、なんかメロディーと一緒に出てきちゃったんで。それで、ネタっていうか、どうせ書き換えるだろうなと思って。本当に、なんて穏やかじゃない歌詞なんだろうと思いながら、そのワンラインを見つめてましたけど、それでデモ音源を1回作っちゃったら、なんかもうこれ以外考えらんないかもなってなってきて。面白い!逆にこの言葉からどれだけ喜びを作れるだろうな?っていうことにフォーカスというか、やってみたんですよね。なるべくプラスにコミカルに、軽い口当たり耳当たりでやっていけないだろうかというので、他の周りの歌詞を書き進めていったかなって感じではありますけど。でも僕は割とこんなマインドでやってるなって感じですね。何か嫌なこと言われて悔しいって思っても、見返してやろうっていうのはもはやもう違うんですけど、あの時成長のきっかけをくれてありがとうぐらいの感じで自分のことを高めたりとか自分の日々をより良くしていけたら、それが1番よかったっていうか。そんな風になるんじゃないのかなっていうようなことを言える日もあれば、嫌なこと続いたりイライラしたりとかすると思えない日もあるんで、その思えない日もまた人生よっていう感じで。

人生の色んなシーンを描きながら、アルバムは、ラストトラック【B-Side Blues】を迎えます。

「この『Rejoice』ってアルバムは、【Chessboard】までレコーディングしたところで、スタジオが閉店しちゃって。文化村スタジオという渋谷にあったスタジオなんですけど、音・居心地が好きで、色んな楽曲をレコーディングさせてもらってきてたんですけども。で、なんか大人になっても、心の中に嫌だなとか寂しいっていう思いってメンバーには大なり小なりあって。でもそれを言わずに"お疲れ様でした、ありがとうございました。お世話になりました"って、スンとみんな帰ったんですよね、最後の日も。写真は撮りましたけど。でも、やっぱり心のその裏面。だからA面じゃなくてB面の方には、そういう"まだここにいたい"っていう現在地への執着っていうものがあって。その文化村スタジオを筆頭に、僕たち初めて東京でライブしたライブハウスももうなくなっちゃって。ヒゲダンがはじめてのライブをしたライブハウスもまだあるんですけど移転してるんですよね。鳥取県のすごくよくリハーサルでつかわせてもらっていたスタジオも閉店しちゃって。なくならないでほしいじゃないですか、やっぱり自分たちの思い出の場所だし。だけど、そんなこと言っててもしょうがないっていうか。だから、そこで紡がれた、そこで培われた音楽だったり、自分たちのそのバンドとしてのパワーだったり...そういったものって、多分自分たちが未来で、次の曲・次のステージで皆さんに向けて音をこう放っていくっていうことでしか、ここから先報われていかないんじゃないかなと思うっていうか。その過去を愛しながら、その過去を経た自分たちだからこそできる音楽をこれから先やっていくっていうことが1番大事なんだろうなっていうのが、その[続きだけをなくさないようにしよう]っていう、そういうメッセージになってるのかなっていうことで。」

《過去を愛しながら、その過去を経た自分たちだからこそできる音楽を やっていく》。そう語る藤原聡さんから、最後にあなたへのメッセージです。

「マスクとかいろんなマナーを、決まりを守りながらじゃないとライブを楽しんでいただけないっていうような状況がありまして。その中でも、心の中の大切な部分としてライブを求めてくれた人たちがいたっていうのはすごく救いだったんですよね。声出しが世間的にもうライブでは全然解禁されてるんですけど、そのタイミングで、なんと皮肉なことに僕の喉にポリープができたりとか。なんか活動休止というには全然休んではなくて。純粋に療養してる期間っていうのも、数か月程度だったんですよ。実は結構すぐに新曲の制作に取り掛かったりしてたんですけど。とはいえ、いつライブするのかとか、いつ新曲出るのかとか、バンドとしてどうだとか、僕はあんまり性格的にSNSを上手に使えないので、そういう近況も言いませんでしたし。それでも応援してくださってた方々っていうのがすごくたくさんいらっしゃったっていうことに、すごく救われながら辛い日々を乗り越えてまいりました。それで、ついにアルバムを出して、声出し解禁のマンキンのライブっていうのが始まるわけなんですけれども。そうですね、僕ができることは、もうただただその感謝と喜びっていうものを届けることかなと思っておりまして。それをともに受け取ってもらえたらすごく嬉しいなと。もうとにかく続けていくっていうことを大事にするっていうか、療養期間を経て、すごく芯の強い人間、芯の強いバンドに少しは成長できてると思うので、今回とかすぐは難しい方ともいつかライブでお会いできたらなと思いますし、これからも新しい楽曲やアルバムを楽しみにしていただけたらとても嬉しいなと思ってます。」

20240726h01.jpg

Official髭男dism