今回は、三浦大知さんのニューアルバム『OVER』のHidden Story

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OVER』は、2017年のアルバム『HIT』以来、およそ7年ぶりのオリジナル・アルバムです。2018年に発表された、全曲Nao'ymtさんプロデュースによるコンセプチュアルなアルバム『球体』から数えても6年。まずは、これだけ間隔があいた理由からうかがいました。

「1曲1曲いろんなお話をいただける機会が多かったので、単曲で制作を進めていくというのがありがたいことにこの7年続いていたという感じで。次アルバム作るのどうしようみたいな、そういう悩みみたいなものが特にあったとかではないですね。『球体』があるから次はこうしようみたいな、その比較対象としての『球体』みたいなのは特別置いてなくて。あれはプロジェクトみたいな感じなので。『HIT』というアルバムから数えると一応7年ぐらい経っていて、それで、そろそろやっぱ出した方がいいよねみたいなことから。じゃあアルバムを作るんだったら、この7年でそれこそアルバムというものが持つ聞かれ方・音楽の聞かれ方とか、だいぶ変わったと思うので。サブスクみたいなもので音楽がどんどん聞かれるようになって、プレイリスト文化みたいに皆が自分の好きなアルバムのようなものを作れるような文化になって、好きなように単曲で音楽を聞く感じの聞かれ方にどんどんなってく中で、じゃあアルバムを作る意味とか、アルバムである理由みたいなのがないとアルバムって作れないよね、みたいなのはなんとなくありました。」

そんな中で、アルバムを作る意味を三浦大知さんはどんなところに見出したのでしょうか?

「まず、じゃあアルバムを作ろうとなった時に、シングルがすでに7枚ぐらい出ていたんですよ。それで、この7枚のシングルをアルバムに入れて、例えば3曲とか4曲とか新曲を入れて、これがアルバムですと言うにしては、ちょっとシングルの曲多すぎるなっていうのがちょっとあって。それはもう、もはや、ほぼプレイリストなんじゃないかっていう。それだとアルバムとして作る理由みたいなことを見出だすのが難しいなと思ったので、やっぱりこれはアルバムに向けてというか、アルバムのために作った楽曲・全曲新曲で構成することに意味があるんじゃないかっていうところで、このアルバムの前にシングルコレクションっていうのも別で作って、そこにシングルを全部入れさせていただいて、もう『OVER』というアルバムに関しては本当にゼロからこその構築していく。 個人的には、やっぱり、さらっと聞ける、ものすごく充実した内容なんですけど1周がするっと過ぎていくような心地よいアルバムがいいなと思っていたので。30分とか35分ぐらいの、、、なんか《35分ぐらいの1曲》みたいな(笑)」

そうした想いのもとスタートした制作。参加してもらう音楽プロデューサーやアーティストのみなさんは、どうやって決めたのでしょうか?

「この『OVER』というタイトルというかコンセプトがまずあって。ものづくりをする時はいつもそうだとは思うんですけど、今の自分をしっかり超えて、1歩、2歩新しいエリアにちゃんと足を踏み込んで新しいものづくりをする、今まで見たことないものをしっかり作っていくっていうのにトライしていく。それで、今回もそれをしっかりやろうという流れの中で、例えば初めて一緒に楽曲を作る音楽プロデューサーの方、あとは今までご一緒したことないアーティストの方とコラボレーション作品を作らせていただく。あとは、今まで一緒にやってる方だったとしても、何か1曲ずつに超えたものというか、今までにはない音像感みたいなものを1曲1曲作っていけたらいいなという風に思って、それぞれお声掛けをさせていただいたっていう感じですかね。」

アルバムの1曲目は、Nao'ymtさん作詞作曲、【Pixelated World

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「今回のアルバムは1曲1曲強いものにしたいなと思っていて。それで、その中でこの楽曲を聴いた時に、本当に今の時代だからこそ生まれた楽曲だなっていう風にもすごく思いましたし、あとは覚悟をすごいやっぱ感じる曲だなって思ったので。色んな問題だったり、不安だったり、色んなものが蔓延しているこの世界、なんとなくそういうネガティブな気持ちみたいなものもみんなが共有しながら生きているこの世界の中で、なんかちょっとこう、少しずつ崩壊していくようなっていうか、ガワがぽろぽろとピクセル化して剥がれていくようなちょっと不安定な世界の中で、自分自身の魂は決してピクセル化されないというか、この《魂だけは必ず守り抜く》っていう覚悟をすごく感じる曲だったので、これは1曲目に持ってくるべきなんじゃないか。この強さを持ってアルバムがスタートしていくのがいいんじゃないかなと思って1曲目に持ってきたという感じでした。」

Pixelated World】につづくアルバム2曲目は、sソングライティングがTOMOKO IDAさん、TSUGUMIさん、三浦大知さんによる【能動】。

「これは、そもそも音楽プロデューサーのTOMOKO IDAが昔からの知り合いというか、当時TOMOKOもアーティスト活動をやられていて、それで自分もソロデビューして間もない頃で、なんかお互い切磋琢磨してるような。それこそクラブのイベントだったりとか そういう時に一緒に飲んだりとかしてるような友達だったんですけど、音楽でがっつり絡んだことはなくて。ただ、TOMOKOも音楽プロデューサーとしてトラックメーカーとして活動を始めて、それをいち音楽ファンとして僕は聞いてて。それでかっこいいなってずっと思っていたので、いつかTOMOKOのトラックで歌いてみたいなっていう気持ちがずっとあって。その中で今回『OVER』っていうアルバムを作ることになり、初めてのトラックメーカーだったり、新たなものづくりをするってなった時に1番最初に思いついたのがTOMOKOの楽曲だったのでお願いして作っていただいたっていう感じでした。」

三浦大知