今回は、前回に引き続き yamaさんのHidden Storyニューアルバム『awake & build』までの〈道のり〉と〈これから〉。yamaさんの言葉をお届けしました。

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デビュー当時は、"とにかく自分を出したくない"という想いが強かったというyamaさん。活動を続ける中で、気持ちが変化していきます。そのきっかけのひとつが〔ライヴ〕でした。

「1番最初はフェス、Japan Jamに出た時に、パッて見上げたらもうほんとに予想以上の人が集まって聞きに来てくれてて。自分のステージ見に来てくれてる人がこんなにたくさんいるんだと思って、なんか怖さより、あ、すごい嬉しいなって気持ちがそこで芽生えました。それでだんだん頑張ってライブするようになっていって。ACIDMANと対バンする機会があって その時にライブの良さっていうものをすごい体感したし、大木さんのMCとか聞いてすごい感化されましたし、自分の素直さをもうちょっと出せたらいいのになと思って取り入れたりとか、MCしてなかったけどだんだんするようになって。最初スタンドマイクでずっと動かなかったところから、徐々にハンドで動いてみたいと思って挑戦したり...っていう感じです。」

そして、"ハンドマイクで動きたいと思って、挑戦した"、というお話もありましたが、ニューアルバムに収録された【偽顔】、【沫雪】の2曲は、Matt Cabさんをプロデュースに迎え、ダンスビートを取り入れています。

【沫雪】と【偽顔】、それぞれリクエストしたことは同じで。2ステップというかビートの2ステップ感、2ステップの曲を作りたいんですってお願いして。いくつかトラック作ってくれて、その中の2曲が【偽顔】と【沫雪】ですけど。ほんとにm-floの【Come Again】が好きで、ああいった2000年代のちょっと爽やかなんだけど切なさもありっていう雰囲気の楽曲を作りたいと思ってリクエストしました。」

続いて、【独白】という曲についても教えていただきました。

「【独白】に関してはテーマとして、過去に経験したちょっと辛いこと・トラウマみたいなものがテーマになっていて。ただ、そういったトラウマって多分大人になっても消えないし、もしかしたら死ぬまで消えないとは思うんですけど。消すのが難しいものを抱えてる中で、じゃあ一体どうやってそのトラウマと向き合いながら前を向いて歩いていくのかっていうので。とはいえ、光とか、なんとかなるさ、頑張ろうみたいな、そういう楽観的なものにはしたくなかったので、そこの塩梅が難しかったのが【独白】です。消えない傷を抱えながらも、なるべく自分自身に向き合って、何とかこう生きていきましょうよという思いを込めて歌詞を自分が書いてて。」

タイトルどおり、yamaさんの心のうちが聞こえてくるような【独白】さらに、【陽だまり】という曲は...

「完全にこれは、この楽曲をこの人のために書くっていう、その人に向けて書くのがもう決まっていて。本当に自分の育ての親のような人がいて。その人の死期が近づいているなという感じで、何度か体調悪くなって忙しい合間を縫って帰ってたんですけど、あ、いよいよだなっていうのを感じる中で、なんかすごいその死生観みたいなものが変わってきたんです。今までそういう自分のパーソナルを100パーセント出した楽曲は書かないし、書くつもりもない、って思ってたけど、いや、これは正解でも不正解でもいいから、その人を思って曲を書きたいと思って衝動的に書きました。」

自分自身を表現していくこと。ここに一歩踏み込んだのが、サードアルバム『awake & build』。

「今回、『awake & build』までをモラトリアム3部作と呼んでいますが、その最終章ということで。だから自分のアイデンティティがようやく確立されつつあるなっていうの感じられたのが今回のアルバムになっています。自分の振り幅みたいなものを結構見せられたアルバムで、ポップなサウンドからロックまで、そしてすごい裸のような、もう100パーセント自分みたいな【陽だまり】っていう楽曲も見せられたので。今後こういった100パーセント自分っていうものは作らないかもしれないですけど、そういったレンジの広さみたいなものを今回のアルバムで見せられたので良かったなと思ってます。」

"アイデンティティがようやく確立された"という言葉がありました。では、yamaさんのアイデンティティ、ご自身ではどう捉えているのか?最後に伺いました。

「やっぱり自分の性格的に、人からの目線にすごい敏感で、なんか考えすぎたりっていう生きづらい人間でもあるので、気にしなきゃいいのにって思うことも気にしちゃったりする。そこの、なんかちょっと神経質・繊細な部分も大事というか。自分だからこそ、そういう自分だからこそ作っていける作品もあるし、寄り添えるのかなっていうところがまず1つと。それで、音楽的に言うと、インターネットカルチャーっていうものを改めて やっぱりらしさでもあるから。自分のそういうものを大事にしたいなと思ってます。今回のアルバムでも、是さんであったりとか、こめだわらさんっていうボカロPさんとか、インターネットで活躍されてる方にもお願いしたりしましたが、そういう原点回帰みたいなところもしつつ、そこに寄り添いつつ提示できる自分なりのポップスみたいなものを、今後はちゃんと見つけて作れたらいいな、なんて思ってます。」

yama