今回は、前回に引き続き農業を営む方が、温室効果ガスを削減することによって収入を増やすことができる。そんな仕組みを 農家のみなさんが利用することをサポートしている会社『フェイガー』ご紹介しました。

前回は、稲作をおこなう農家のみなさんが、田んぼに張った水を一定の期間 抜く〈中干し〉という作業をおこなうことで温室効果ガスを削減。脱炭素できた量について【Jクレジット】という制度を使って認証を受け、それを販売し収入に繋げる。フェイガーでは、この一連の手続きを支援しているというお話伺いました。

この日本での事業に加え、代表の石崎貴紘さんは世界を視野に入れています。

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まず直近でいうと、この同じ取り組みは海外に広げられるものなので、東南アジアを中心にどんどん広げていきたいという風に思ってます。 私も他の創業メンバーもですね、東南アジアでビジネスしていた経験が長いんですけれど、日本よりもより多くの農地を持っていて、かつ農家さんの所得というのは非常に低かったりするというケースもある中で、こういった環境価値というところが農家さんに還元されていくのは、すごく大きな意味合いがあるなという風に思っています。」

東南アジアでの可能性、石崎さんは こう考えています。

「日本だと割と灌漑設備とか整っていて非常にレベルの高い農業をやられてるんですけれども、例えばミャンマーですと600万ヘクタール水田があるんですけど、そのうちの100万ヘクタール程度しか灌漑設備が整ってないんですね。それで灌漑設備があるとミャンマーの気候だと2毛作ができるんですけれども、設備がないので、この600万あるうちの100万ヘクタールしか2毛作ができていない。もし灌漑設備が全部整っていれば、残りの500万ヘクタールも二毛作ができるようになるので、国全体の収穫量が2倍程度になります。そうすると、ミャンマーの人口の4分の1は今、飢餓リスクがあると言われてるんですが、そこに対して食料を自国で生産して供給できるようになるっていう食糧安全保障みたいなところにも寄与できるぐらいのポテンシャルがあるようなものだと思ってるんですけど。それを補助金とか援助みたいな形だと1回きりの取り組みになるんですけれども、このクレジットというものを生成できるという前提でファンド形式にして投資を行って、灌漑設備を作る。そうして農家さんはその灌漑設備を使っていただきつつ、脱炭素は進めていただくと。その灌漑設備の支払い分はその脱炭素によって生まれたクレジットで行うことによって農家さんが現金で払っていくとか収穫した中から一部を返済に充てるということをしなくても良くなるというスキームが成立するので、これができると補助金とかそういった形ではなくて、ビジネスとして持続可能な形でそういった収穫量の増加とか食糧安全保障問題への貢献とか、そういったことに繋がっていくので、クレジットだけではなくて、そういった広がりも踏まえて今いろんな国とビジネスの立ち上げをしているというような状況です。」

灌漑設備というのは、田んぼに水を供給したり、逆に水を排出したり農業に使われる水を管理する設備。これがあれば、例えばミャンマーの場合は1年に2回作物を収穫できることになり、生産量が2倍になる。この灌漑設備を作る費用を農家のみなさんが温室効果ガスの削減をすることで捻出される【クレジット】で支払う形にすれば、新たな出費をせずに 農業の生産量は増え、温室効果ガスも削減できる。まさに、大きな可能性を秘めていると言えそうです。

そして、フェイガーは 海外でのプロジェクトと同時に、日本の農業についても活動を続けています。石崎さんに今後のヴィジョンを教えていただきました。

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「日本の農業由来のGDPって1パーセントぐらいなんですけれども、そこに対して1.3パーセントの方が農業に携わってるので、平均の産業と比較すると収入ってだいたい76パーセントぐらいになる。農業儲からないというのが現状だと思うんですけど、一方で、海外で日本の農作物みたいなところを見てみると、ものすごく品質は高いという風に評価されている。評価されているのに、収入に繋がっていない。ここって何かがおかしいわけで、ここを解消すれば日本ですごく良いものを作ってる方っていうのは当然評価されます。評価されるということはちゃんとお金も含めて還元されていくはずであるという風に思っていて。我々自身がその農作物の値段を上げに行くみたいなことはさすがにできないかもしれないですけども、環境価値というJクレジットみたいなものも含めてですね、そういったことによって収益というところを農業に流せるというポテンシャルは非常にあるものだと思うので、我々としてはそういったところで貢献しつつ、ゆくゆくはちゃんと日本の農業っていうところがもうすでに評価されている。なので、そこに対して収益というところもちゃんと乗ってくるというような形にしたいですし、これは日本だけの話ですけど、海外は海外で先ほどの食料安全保障とか、もっと効率的に農業というところが発展するようなところに繋がっていけばいいなという風に思ってます。」

株式会社『フェイガー』の事業を通して石崎さんが思い描く未来、伺いました。

「フェイガーの社名の由来をちょっとお話しさせていただきたいんですけども、これってフェアっていう公平とか平等とかいう意味の英語の古英語で、そこに美しいという意味もあるようでして。これもちょっとイメージの問題なんですけども、平等で公平な世界って、ある意味ちょっと美しさみたいなものもある。語源としてそういう意味もあるみたいなんですけれども。この会社を作る時にいろいろ考える中で、農業でも脱炭素というものに貢献できる、貢献した場合、そこに対して資本主義のお金という形で還元されることがフェアであると。それでかつ、このフェアな仕組みが継続していくと、地球の脱炭素というところが進むので、ちょっと平たく言うと美しい地球が守られるという。こういったところの想いを持って最初作ってるんですけども、ここのフェアネスみたいなのはずっとこう大事にしていきたいと思っていて。どんな未来をという話で言うと、農家さんでそういった脱炭素に貢献していただいた方にはフェアにそういった取り組みへの対価がちゃんと流れるような仕組みをどんどん作っていきたいと思ってますし、ゆくゆくはもしかしたら農業以外もやるかもしれないですし、あるいはその農業分野での他のビジネスをするかもしれないんですけれども、ここも想いとして共通しているのは、そういった貢献っていうところに対してちゃんとフェアに評価されるようなビジネスをやり続けたい、という風に思っています。」

フェイガー