新年最初にご紹介したのは、お酒を飲むときに使う【とっくり】。

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そのとっくりの中でも、特徴のある商品。お酒をそそぐ時に、鳥のさえずりのような音がする【鳴き徳利】。

岐阜県土岐市で長く作られてきた伝統ある酒器に新たなデザインがほどこされ、いま海外でも注目を集めています。美濃焼の産地である、岐阜県土岐市。この地で、お酒のとっくりを中心に製造してきたのが、今回取材にお答えいただいた《作山窯》代表の勝股五美さんにお話を伺いました。

「勝股:僕で5代目になる感じですけど、始めたのは昭和初期だと思います。 土岐市には他地区にどんぶりを生産するところ、盃を作るところ、茶碗を作るところ、色々な種類がありますけど、とっくりを作るには下石町の粘土が適していたということで、下石町でとっくりの生産が盛んになったと聞いてます。

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土によって、どんぶりに適しているとか盃に適している といった違いが。そして作山窯のある下石町の土はとっくりに向いていた、そんな経緯で長年とっくりを作り続けてきたそうです。そして【鳴き徳利】について、勝股さんに解説いただきました。

「勝股:とっくりの中に壁があって、下の底の部分で、右と左が共通になっとる感じ。その壁の1つの部屋は注ぎ口で、もう1つの反対側には中に笛が仕込んであります。それで、注ぎ口の方の空気は注ぎ口へ逃げますけど、笛のある方の部屋の空気は笛を通してしか空気が出入りしない。そうすると、その空気の出入りによって音が出るっていう構造です。作るのは大変ですね、これは。2つのとっくりを作って、くっつけているような感じなんで。」

この【鳴き徳利】に新たなデザインを加えて商品開発をしたのが、以前このコーナーでもご紹介した会社『CEMENT PRODUCE DESIGN』です。代表の金谷勉さんに、鳴き徳利を最初に見たときの印象、そして商品開発のきっかけを教えていただきました。

「金谷:こんなに面白いのに、なんで僕らがいま世の中で見てないんだろうと感じたのがきっかけです。それで調べてみたらですね、いわゆる昔ながらの龍の柄とか鳳凰とか孔雀みたいな、s昔ながらの柄が結構作られてたのを見て、もっと今の時代に合わせた方が面白いんじゃないのかなっていうのが、本当最初の直感というか、見て感じた印象でしたね。振るとぴよぴよぴよって鳴いてくれる可愛い感じの雰囲気が、もう少しデザインできたらなと思ってリデザインしたっていうのがきっかけですね。 」

やさしい水彩画風のデザインをほどこした【鳴き徳利】は一躍人気に。さらに最近では、海外でも展開しているとか。

「金谷:台湾とかシンガポールとか海外にも僕ら展開していくようになりまして。つい先日もシンガポールの酒祭りというイベントでも販売を5月からして、今度10月にもしたんですけど、やっぱり売れているので数量をもう少し作りたいって思って窯に行った時に現状を聞いて、ちょっと大変だなっていうところにも直面した感じですね。」

窯に行ってみて、ちょっと大変だなと感じたと話す金谷さん。どんな点が大変だと思ったのでしょうか?

「金谷:元々、業務用の食器を岐阜県は作ってたんですよ。例えば、皆さんが普段行かれているカフェとかレストランとか。ああいったところで使われている食器のほとんどは岐阜県の多治見とか土岐が1番作られてる町なんですけれど。それが皆さん知っての通り、コロナで飲食業がかなり厳しい状況になったこともあって、岐阜県へのそういった陶磁器の発注量がものすごい減ってるんですよね。それもあって、当然廃業される方が増えたのも致し方ない事実だなとは思ってますけど。なので、作山窯さんも当然。土岐市って、結構お酒のとっくりも作ってる産地なんですね。ということは、日本酒のメーカーさんがお酒が日本で売れなくなるってことは、当然とっくりの量も減っていくってことなので。和食の居酒屋さんも当然とっくり使ってらっしゃいますし、1番はその酒のメーカーさんとか飲食業の方々とか、全部が繋がってるので。想像以上に皆さん打撃を受けたっていうのが、この産地の課題というか問題ですよね。」

しかし、その産地にはこんなに楽しい商品がある!CEMENT PRODUCE DESIGNの金谷さんは、そうしたアイテムにデザインの力でスポットを当てたいと考えています。

「金谷:知らない方々に知っていただいて、使っていただけるようなきっかけを作る。要は売っていくっていう活動も僕らは大事にしていかないといけないと思っています。なので、日本で販売するだけじゃなくて、今は海外でも販売する機会を増やしていってる感じですね。昔は、江戸時代から酒宴と言いますか、お酒を飲む場で楽しむような器だったり道具があったっていうのは、その後にいろんな方から聞くことが増えまして、実は各地にもまだまだこういった酒器が転がってんじゃないのかなと。

勝股:コミュニケーションツールみたいなところがあって、要は酒を飲みながら"鳴るね、面白いね"って言って、それを切り口に美味しく酒を楽しく飲んでもらえればっていうふうに思っています。」

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●お酒の席のコミュニケーションツールに、いかがでしょう?セメント・プロデュース・デザインが手掛ける「コト・モノ・ミチ」というショップで販売されてます。公式ウェブサイトにはオンラインショップもありますのでチェックしてみてください。とっくりに おちょこが2つセットになって、税込み9900円となっています。

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鳴き徳利