今回は、前回に続いて、サッカー、イングランド・プレミアリーグのクラブ、アーセナルで、"グラウンズ・パーソン"という、グラウンドの芝生を管理する仕事を担当している日本人。村井郁允さんのHidden Story

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前回は、村井さんがアーセナルでグラウンズ・パーソンの仕事につくまでのストーリーをご紹介。今回はまず、そのアーセナルのグラウンドを村井さんが初めて見学した日のことから教えていただきました。

「仕事を開始する前、1週間前かな?ボスが仕事前に見学に来たかったら2時間ぐらい見に来てもいいよっていうことで、ちょっとその時に伺ったんですけど、まあ、でかいっすよね。本当にでかくて、練習場が11面、トップチームのゴールキーパー専用の練習場が半面ぐらいの大きさの縦長の芝生のグラウンドがあって。もちろん当然11面は天然芝ですし、そのゴールキーパー用の練習場も天然芝で。クラブハウスがドーンってあって、グランドチームの専用の倉庫もめちゃめちゃでかかったりして。うわぁ、でけえ、っていうのが感想です。」

村井さんが働くことになったのは、ロンドンの北 ロンドンコルニーにある、アーセナルのトレーニングセンターでした。

「ロンドンコルニーにあるアーセナルのトレーニングセンターには、そこのグラウンドチームがいて、それでもう1個アカデミー用のグラウンドにもそこの専用のクルーがいたりとか、スタジアムはスタジアムだけのクルーがいて。本当にしっかり雇用として成り立ってるなっていうのはそこで初めて知ったので、全然日本と規模が違うんだということにまず驚きましたね。」

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いよいよスタートしたアーセナルのグラウンズ・パーソンとしてのお仕事。携わる中で村井さんが感じたのはこんなことでした。

「雨が多いんですよね。晴れる日が少ないっていう印象を持ちました。朝は寒いし、芝生を含めて植物を育てるということに関するとすごく厳しい条件だなと思って。それを冬場でも緑にしてたり、この雨の多い中でも全然ダメージが少なかったりっていうのを維持して管理してるというのは、技術力の高さだったりとか、テクノロジー...最新設備って言うんすかね?今、アーセナルのトレーニングセンターに2面だけ地温コントロール、ヒーティングシステムというものがあって、地面の下をあったかくするものが備わってて。冬場でもある程度の温度を保てるみたいなシステムがあったり。あとは、当然、散水設備もしっかりピッチ内にあったり。その散水もスマートフォンのボタンでポチっとやれば、あっちのピッチからみたいな。日本だとわざわざ設備のある機械板みたいなところに行ってパチパチってやんなきゃいけなかったんですけど、すぐにそういうことが出来るという効率性だったりとか、あとは芝生を育てるライトだったりとかもいくつかあったりして、テクノロジー、最新の設備というところに関してのクラブとしての投資っていうのは日本とは規模が全然違う。だからこそ、イギリスの厳しい気候であったりとかでも管理できてるのかな、緑を保ってるのかな、というのは感じましたね。」

グラウンドをいい状態でキープできている要因の1つは、最新のテクノロジー、設備に対する投資。そして、もう1つ。村井さんはこんなポイントを指摘します。

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「うちのボスだったりとか、グラウンドチームと練習するコーチングスタッフ陣だったりのコミュニケーションがすごく円滑で。パス回しだったり、フィジカルのトレーニングだったりとかっていうトレーニングセッションがあるんですけど、それも毎回違う場所でやってくれたりとか、前半のミニゲームはこっちのサイドで、次のミニゲームのセッションはこっちのサイドとか、別に言わなくてもわざわざ動かしてくれたりとかして。利用する人の芝生に対するリスペクトというか、芝生を大事にするという、もう文化に近いのかなって感じるんですけど。そういう協力や理解があってダメージも最小限に抑えられています。」

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芝生のグラウンドで、同じ場所ばかり使っていると芝生がダメージを受けるけれど、トレーニングセッションによって使う場所を変えてくれるので、それが最小限で抑えられる。村井さん、このことについて、『日本で 芝生のグラウンドを利用する方にもこうした使い方をこころがけてほしい』とおっしゃっていました。

アーセナルのグラウンズ・パーソンとして、2年目がスタートした村井さん。この1年で印象深かったこととして、こんなエピソードも教えてくれました。

アーセナルに所属している、ということに関して、みんな誇らしく思って仕事はしてると思います。あと、日本と違ってイギリスで感じたことは、グラウンズパーソンという仕事に対しての認知度の高さはありますし。あとは、街行く人にたまに挨拶されるんですけど、サッカークラブ、アーセナルの所属してるんだっていうことを言うと、"まじかよ!"みたいな、そういうリアクションを取ってくれたりするんで、それは面白いですよね。あと僕、今シェアハウスに住んでて、前住んでたハウスメイトがアーセナルファンだったんですけど、初めて会った時に"学生?"みたいな感じで聞かれて、"いや違うよ。仕事してる""何の仕事?""アーセナルで働いてる""アーセナルか。は?アーセナルで働いてんの!"みたいなリアクションをしてくれたり、"おい、ちょっと写真一緒に撮ってくれよ"みたいな。あ、そんなになんだ、っていうのはありましたね。」

子どもの頃に芝生のグラウンドにまつわる仕事をしたいと思い、今やイギリスで グラウンズ・パーソン。村井郁允さんに、最後に伺いました。芝生を管理する仕事、その楽しさは どんなところに感じていますか?

「手をかければかけるほど良くなりますし。かといって、例えば今日肥料やりました、でも明日明後日にすぐ変わってるかって言われたらそうではなくて。その結果が出てくるのは何日も先、下手したら何ヶ月後に違う未来になってるという、その長い目で見た時のすごい頭を使う管理がすごく楽しいかもしれません。そう、それが楽しいのかもしれないですね、もしかしたら。」

アーセナルグラウンズパーソンの日常

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