今回は、サッカー、イングランド・プレミアリーグのクラブ、アーセナルで、"グラウンズ・パーソン"という、グラウンドの芝生を管理する仕事を担当している日本人。村井郁允さんのHidden Story。
村井郁允さんは、岐阜県のご出身。まずは、そもそも、なぜグラウンズ・パーソンを目指すことになったのか教えていただきました。
「僕の出身が岐阜なんですけれども、芝生のグラウンドが少なくて。やっぱり、芝生のグラウンドに対しての憧れっていうのがサッカーやってた時はありました。
だったらこれ、自分で作れるようになったらいいんじゃない?っていう。そんな感じの小さな子供ならではの発想から、この仕事を目指すようになりました。
やっぱり痛くないじゃないすか、転んでも。それが芝生のグラウンドの方がいいなっていう憧れではありましたね。
それで、当時そこまでインターネットも大勢が使ってたってわけではなかったので、植物を育てられる人間ならいいんじゃないかという発想から、まず農業高校に入ることを考えて。そこで、ある程度の芝生の知識を学んで、その次に農学部のある大学に行きました。芝生だけに関してじゃなく、植物全体の働きだったりとかというのをより深く学びました。」
大学の農学部で学んだ村井さん。卒業後の進路について、決意を固める出来事がありました。
「大学2年生の時、イギリスのロンドンに2週間ぐらい旅行に行った時に、色んなスタジアムツアーだったりとか試合も見に行ったりして。
その時に感じたことは、俺はやっぱりこのデカい舞台でやってみたいなと。
いつも綺麗じゃないですか。プレミアリーグの中継見ててもそうですし、スタジアムツアーでお伺いした時も、芝生管理者が芝生刈ってた時も、すごく見栄えもきれいで。
プレミアリーグといえば、今ではもう本当に世界中から注目される大きなスポーツの1つ。そういった大舞台というか、誰もが1度は夢見る舞台でも仕事をしてみたいなっていう気持ちはそこから出ましたね。」
いずれは、その舞台で仕事をしたい!という想いを胸に、村井さんは大学卒業後、まずは日本の芝生の管理会社に入社。Jリーグ、名古屋グランパスの練習場。さらに、主にFC岐阜が練習場として使用するグラウンドの管理を担当されました。そんな日々の中、イギリスで仕事をしたいという想いが村井さんを突き動かします。
「どうすればプレミアリーグ、ないし、イングランドで働けるのか。まずは自分のtwitterアカウントを開設して、イギリスで仕事してる人や芝生管理者を直接フォローして、ダイレクトメールしたりして、何でもいいから情報をかき集めました。
そこから、ようやく仕事の履歴書を送れるぐらいになって色んなクラブに履歴書を送っていったんですけど、やっぱりビザを持ってない人間は雇ってくれない。
それで、その作業を2年ぐらいずっと続けて、2022年の1月に、30代以下の若い人が取れるビザの抽選で当たりました。ビザが当たったんならもしかしたらいけるかもと思って、その時に応募していたクラブや団体に色々と連絡していきました。
2022年1、2、3月ぐらいで、ちょうど募集してたクラブがアーセナルとマンチェスター・ユナイテッドとイングランドサッカー協会とテニスのウィンブルドンの会場がちょうど僕の目についたので、とりあえずここ4つポンっと履歴書送って。
そして返ってきたのがウィンブルドン、マイチェスター・ユナイテッド、アーセナルでした。」
実は村井さん、2020年から2022年にかけて様々なサッカークラブはもちろん、ラグビー関係も含め、およそ100通の履歴書を送ったそうです。2022年になってビザが取れたこともあり、その年の初頭に募集をおこなっていた4つの団体にアプローチ。ただ、村井さんのビザが2022年の8月から有効だったこともあり、なかなかうまくいきませんでした。最終的に村井さんが加わることになるアーセナルも...。
「2022年3月末に面接した時に言われたのが、僕のビザがやっぱり8月からだから、我々アーセナルはすぐに働ける人間を探してると。だけど、その期間もし誰か抜けて空きが出たら連絡したいと言ってくれて。
僕、これ最初は本当にリップサービスかなと思ってたんですけど。あれはいつだったかな、7月かな?そのあたりで急に僕の今のボスからメールが来て、「あなたのビザがイギリスで本当に働けるのかどうかを調べてほしい」と言われて。それで、いろいろ情報をかき集めて、そこからやり取りして8月の16日にメールを受け取ったって感じですね。」
この8月16日のメール、アーセナルから村井さんへのオファーのメールでした。
「「アーセナルのグラウンズパーソンとしての仕事のオファーをあなたに書きました。サインしてくれると嬉しいです」っていうメールが来ました。
いや〜、叫びましたよ。夜中でしたけどね。12時くらいだったと思うんですよ。そうですね、12時18分ですね。ちょっと寝つきが悪くてメール確認したら来てて嬉しかったですね。もちろん秒ですぐに起きてサインしました。」
村井郁允さん、グラウンズパーソンとして、アーセナル加入決定!挑戦の扉が開かれました。