今回注目したのは、大正元年、1912年に創業した三重県の会社、《水谷養蜂園》が手掛ける 新たなブランド『Tamitu』。まずは、この『Tamitu』どんなブランドなのか伺いました。

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「【暮らしに花を、わたしに蜜を】というのをコンセプトにした新しいはちみつの形を提案するブランドでして、ファーストプロダクトとしては、冷たいものにも溶けやすいという性質を持ったハーブとスパイスが調合されているHerbal honeyというものを販売しているブランドです。」

お話を伺がったのは、ブランドディレクターの水谷優里さん。優里さんのご実家の会社が《水谷養蜂園》です。そんな優里さんですが、実は幼いころからバレエ一筋。ドイツやロシアでバレエ・ダンサーとして活動されていたそうです。

「とあることをきっかけに、バレエダンサーというものを引退することになりまして。それで、日本に帰ってきて人生で初めて何をしていいかわからないという、ふらふらしてる時期があったんですね。今の弊社の社長になる父がそれを見かねて、父が毎年回っている はちみつの海外の買い付けに同行してくれないか、という話をもらって。何もすることもなかったので、とにかく行ってみたんですね。 その中で、はちみつの奥深さだったりとか環境の問題と特に密接したお仕事なんだというところに興味がすごく湧いてきたのと、それと同時に、ちょっと大げさかもしれないんですけど 養蜂園の一員として生まれたからにはという使命感みたいなところ、もっと何かできるんじゃないかという使命感みたいなところも少し出てきたところがあって。海外帰国後、社長に"入社させてください"って言ったのがきっかけですね。」

実家の会社に入社した、水谷優里さん。ハチミツの魅力をより伝えるため、さまざまなことに取り組みます。そして、『Tamitu』のきっかけとなる出会いがありました。

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「入社してからも、年に1回の世界のはちみつのツアーの同行は一緒にしていました。その中で、とあるヨーロッパの街で、エルボステリアというものに出会ったんですね。 エルボステリアでは、年齢問わず皆さんが気軽にお店の中に入って、例えば「頭が痛いんだけど」とか「なかなか眠れないんだけど」という日常にある相談をお店の方にして、「じゃあ、今日はあなたはこうね」みたいな感じで処方箋を書いて袋の中にその人専用のハーブを調合してお渡しする。その様子が暮らしの中に根付いていて、生活のお助けマンのような感じに見えたんです。それで、これをぜひはちみつでできたらすごく面白いんじゃないかと思って、その場に父もいたので、"これどうだろう?"っていう話を2人でわいわい、夜な夜なしていましたね。 」

この時のことをアイディアの種として、優里さんのおばあさまである太美さんの教えにもインスパイアされ、【はちみつを通して、すこやかに、そして美しくなれる】というコンセプトのブランド、『Tamitu』が設立されました。最初のプロダクトは、はちみつに数種類のハーブとスパイスを調合した〈Herbal honey〉。水に溶けやすい、ということが特徴のひとつです。

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「私の実家の場合は、調味料の中の甘味と呼ばれるものは全てはちみつを使っていたんですね。 それが普通だと思ってもちろん食べていたんですけど、実際ひとり暮らしをするようになると、ドレッシング1つ作るのもとてもめんどくさかったんです。ちょっと温めないとオイルと混ざらないし。 私はバレーをやっていたんですけど、はちみつレモンを作ろうとしても、1回温かいお湯で溶いてレモンを絞って入れなきゃいけない。母はやってくれていたんですけど、ちょっとめんどくさがりの私にとっては、とても手間のかかることでした。はちみつ屋の私ですらそうということは、一般の方ってもっとめんどくさいんだろうなと。冷たいものに溶けたら もっと広がりも使い方の幅も広がって、ひとつ手に取っていただくきっかけになるんじゃないかなっていうところから、冷たいものに溶けるっていうのはすごく重要なポイントとして開発を始めました。」

〈Herbal honey〉、現在は4種類が販売されています。

「それぞれテーマがあります。まず[インナービューティー]ですね。美の[インナービューティー]、体を守る[プロテクト]、体を癒す[ヒーリング]、体にパワーを与える[エンパワー]。この4種類のテーマに合わせて、はちみつとハーブとスパイスを調合してるんですけど、このテーマはもともと純粋はちみつが持っているパワーはこの4つがあるという風に仮定して、そこにあったHerbal Honeyのフレーバーを作っていきました。

ハーブとスパイス以外にももちろん純粋のハチミツもそのまま調合しているんですけど、テーマに合わせたハチミツを調合しているので、ビューティーであればブルガリア産のダマスクローズのハチミツ。ブルガリアのバラの谷から採れるダマスクローズのハチミツがとっても香り豊かで美味しいので、ちょっと贅沢ではあるんですけどブルガリアのローズのはちみつを使わせていただいています。 プロテクトであれば、マヌカハニーとレモンのはちみつ。ヒーリング...癒しであれば、ラベンダーのはちみつ。エンパワーであれば、ライチやロンガンといったちょっとパワフルなハチミツを調合しています。 ロンガンというのは'龍の眼'って書くんですけど、中国とかで漢方でも使われるロンガンのお花から取れる蜜です。」

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水谷優里さんに最後にうかがいました。『Tamitu』が 今後目指すのは、どんなことでしょうか?

「『Tamitu』は、決して流行を作りたいわけでもなく、蜂蜜という文化を作っていきたいという風に思っていて。よくハレの日、ケの日という言葉があると思うんですけど、このケの日...。いわゆる私たちの日常に寄り添ったはちみつを作っていきたいと思っています。 蜂蜜って科学的なお薬ではないので、それを食べたからと言って一瞬で頭痛や腰痛がなくなったり、急にお肌が綺麗になったりっていうことはないんですけど、だからこそ毎日接点を作ることで自分自身の体を耕していってくれる。 それがいずれ、心身ともに健やかに美しくなるきっかけを作れると思っているので、そういう文化を作っていきたい、そのきっかけを作っていきたいなという風に思っています。」

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『Tamitu』