今回は、杉並区の西荻窪にある花と焼菓子とカフェのお店【cotito】のHidden Story。

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【cotito】を営むのは、前山真吾さんと前山由佳さんのご夫婦です。真吾さんがお花、由佳さんがお菓子を担当されています。お店の誕生秘話の前に、おふたりの出会いについてご紹介。以前、真吾さんが勤めていたお花屋さんの隣の飲食店で由佳さんがデザートづくりを担当されていて、そこでふたりは知り合ったそうです。

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「由佳さん:そこは結構広い飲食店で結婚パーティーとかもよくやる空間で、ブーケとかを隣のお花屋さんで作っていたので真吾さんはうちのお店に来たりとかはしてたんですけど、私は常にデザートのことで必死すぎて隣にいることすらも見てもいないぐらいでした。本当に必死で花屋さんとか見ずに毎日お店に行くみたいな毎日を送っていて。でもその時、ほんとにふと その日は"あ、ちょっとお花を飾ってみたいな"って思ってお花屋さんに行ってみたんです。でも私、お花は本当に詳しくなくて知らないので、あの人に聞けば何かアドバイス教えてくれるんじゃないかって思って聞きに行ったんですけど、すごい素っ気なく『なんでも自分が良いと思うものを選べばいいんじゃないですか』みたいな。

真吾さん:そんな言い方した?(笑)

由佳さん:何も分からないのに、この人優しくないんだみたいなっていうのが第一印象でした(笑)。でも時間もなかったし選ぶのも分からなかったので、その時はそのままお店に戻って。でも、その後に『お花どうします?』みたいにまた来っちゃって。"もういいやお花は"って思ってたんですけど来ちゃって。そこでもう1回お店に行ってちょっと教えてもらったりして買ったんですけど。その辺からほんとにちょっと話すようになってきました。 」

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そんな始まりからしばらくして、おふたりはご結婚。真吾さんはお花屋さんで勤務、由佳さんは飲食店で働く日々が続きました。

「真吾さん:一緒になった時に『2人で将来、お店をやりたいね』っていう、ちょっと漠然としたところから始まりました。それで結婚して、子供も生まれて、やっぱり2人の中でお店をやりたいっていうのがあったんですけど、なかなか踏み込めなかったのがずっと続いていて、でもやっぱり奥さんはお店をやりたいっていうのがあって。道具とかお店に置くようなものっていうのは、古道具屋さんとかが好きだったので、行った時に"将来使えるね"みたいな少し漠然とした買い方もしてたりしてたんですけど。古道具屋から帰りの車で、何か僕が吹っ切れて、『2年後にやろう』っていう風にちょっと線を引いたのがスタートだと思いますね。 

真吾さんの決断を受けて、いよいよ開店の準備が始まりました。では、ふたりのお店はどんなお店にしようと考えたのでしょうか?

「由佳さん:ちょっとしたプレゼントを買おうって思う時に、美味しい焼き菓子屋さんとか丁寧に作られた手作りのお店とかはいっぱい好きなお店知ってるんですけど、やっぱりちゃんとしたプレゼントってなると華やかさだったり、ちょっと箱に詰めるっていうお店っていうのが少ないので、結局デパ地下っていうか、そういうところに行って買うということも結構あったので。自分たちが。焼き菓子をやるのであれば、 普段のおやつのお菓子も作るけど、プレゼントとしても選べるようなお菓子があったらいいなっていうのもだんだん思い始めました。花屋さんと一緒にやるので、今日は花束を買ってプレゼントをしようっていう日もあっていいけど、今日はあの人にクッキーをプレゼントしようっていう日があってもいいなっていう。それが選べるようなお店ってあまりないので、そういうお店にしたいねっていう話にはだんだんなっていって。」

【cotito】のクッキー、印象的なのはクッキーの表面をかざる色とりどりの食べられるお花、エディブル・フラワーです。 これは、どんな経緯で使うことになったのでしょうか?

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「由佳さん:エディブルフラワーの生産者さんに出会うきっかけがあって、その方にエディブルフラワーのお話を聞きたくてお電話した時に"来てもいいわよ"って言っていただいたので家族でみんなで行きました。、それでお花も買って、やっぱりエディブルフラワーかわいいし、そこで食べさせていただいて味もちゃんとしていて。何かエディブルフラワーを使ったお菓子もやっぱりやりたいなっていうのは、そこで思いました。

クッキーの生地の上に乗せて焼いている花サブレっていう商品がメインで今もあるんですけど、でもお店をやっていくうちにエディブルフラワーは時間が経つと枯れてきてしまうので、それがすごくもったいないなかったんです。そのお花たちをどうにかできないかっていうので、オーブンで低温で焼いてドライにさせて。低温で焼くので色も飛ばないので、すごい繊細な色とかもそのまま残るんです。花もすごい可愛いんですよ。それを焼いたクッキーの上にアイシングを乗せてから、その上にドライの花を散らしたり乗せたりっていう商品ができあがったりしていきましたね。」

アイシングというのは、一般には砂糖や卵白水を混ぜたペースト状のものですが、【cotito】では、てんさい糖と水で作られているそうです。また、クッキーの生地にも卵やバターは使っていないということでした。

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2014年8月、西荻窪駅から歩いて10分ほどの場所にオープンした【cotito】。これまで営業してきた中で、前山さんご夫妻はどんなことを感じているのでしょうか?

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「由佳さん:ここ最近は、お客さんが一度食べてまた来てくれたりとか、プレゼントした人がすごく喜んでくれたからまた来てくれたとか、そういう反応をほんとにしみじみ感じます。最初は2人で不安しかなかったですし、ずっと、これで大丈夫なのかなっていう感じで。でも、もう自分たちを信じてやるしかなかったのでやってきましたけど、でもそれで良かったんだなというか。これからもこうやって頑張っていこうねっていう気持ちに最近はすごくなることが多いですね。お客さんがみんな、入ってきた時からもう、ちょっと嬉しそうに入ってきてくれる人が増えたというか。

真吾さん:まあ、ちょっとわざわざっていう場所に近いので喜んで帰ってもらいたいし、来てもらえたらすごい喜んでもらえるようなお店がこれからも続けばとは思います。」

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