今回は、技能実習や特定技能といった在留資格で日本に働きに来る若い外国人のサポートをおこなうNPO『Adovo』のHIDDEN STORY。

代表の松岡柊吾さん、代表代理の名取陸之助さんにお話をうかがいました。
NPO法人『Adovo』は、2020年に当時高校生だった松岡柊吾さんなどが立ち上げた団体です。活動を始めるきっかけのひとつは、ベトナム人の僧侶ティック・タム・チーさんが日本でおこなう活動を松岡さんが知ったこと。チーさんは、劣悪な環境からのがれてきた技能実習生を保護する《シェルター》を運営していたのです。
「松岡:最初に立ち上げるきっかけで1番大きいのが、やっぱり《保護シェルター》を運営されている尼僧の方の存在を知ったことだったんですけど、高校生なので《保護シェルター》なんて出来るわけないと思って。彼らが日本に来て、ちょっと日本語を勉強する機会がなくなっちゃうとか、徐々に日本語を忘れてしまうとか、会社の寮と会社の往復になって休みの日も家でゴロゴロしてるとかであまり楽しくないっていう人もいたので、彼らが楽しく生活できるように僕たちがなんかできたらいいねと。 」
松岡さんの想いに、そのころニュージーランドに留学中だった名取さんが賛同。技能実習生に、日本に来る前に日本の文化に触れてもらうことを思いつきます。
「名取: 例えば僕が留学した時に、大丈夫だろうとか思ってちょっと舐めてたんですけど、意外とカルチャーショックみたいなものを感じることが多くて。でも、それってやっぱり事前に海外に飛んだ時に、どういう日本との違いがあるのかとかを何も予習・勉強しないで、現地の人たちがどういう関わり方をするのかとかいうのも全く勉強しないで行ったらギャップに打ちのめされて、しばらく向こうで生活しづらい時間が続いた、というのがあって。じゃあ、せっかく向こうから日本に来てくれる人たちがいるっていうのだったら、いち早く日本での生活を楽しいものにしてもらいたいな、というのがあったので。だから、例えば満員電車の話とかあるんですけど、満員電車って多分何にも知らないでいきなり見たら、どう乗っていいかもわかんないし、列に並ばなきゃいけないとかも分からないじゃないですか。 だから事前に、電車に乗れないまんまずっと過ごさなきゃいけないとか、そういうことが起きるんじゃないかっていうので、日本に来た時に元々知っておくことで、生活しやすくなることっていうのを教えたい、というのが最初のそもそも始まりの想いでありました。」
では、そうした情報をどこで伝えればいいのかということですが、技能実習生の皆さんは日本に来る前に、それぞれの国の送り出し機関でトレーニングを受けます。松岡さんたちは、その送り出し機関にアプローチしました。
「松岡:あまりツテがなかったので、最初は国際電話で電話しました。ベトナム人が出るので、google翻訳で話して。
名取:どうにかして家から国際電話をかけて少ない電話代で済ませなきゃいけないって言って、相手が出る前からあらかじめパソコンにgoogle翻訳の〈日本人を出してください〉という画面を出しておいて。google翻訳って発音とかも聞けるじゃないですか、なのでその発音を何回か押して耳コピして自分が言えるようになって。相手が出て、なんかあっちが喋った瞬間に間髪入れずに〈日本人を出してください〉っていうベトナム語を言うと、切られるか、ちょっと繋いでくれるかで。なんとかその最初に繋がった方が、今でもお世話になっている送り出し機関の方になってます。」
現在『Adovo』では、技能実習生など外国人の労働者が日本に来る前、さらに来日したあとの"交流会"、そして"日本語教室"を開催しています。オンラインでの日本語教室では、こんなこともあるそうです。
「松岡:オンラインだったらマンツーマンなので、例えば恋バナとか、サッカーの話とか。それぞれの趣味の話で盛り上がって仲良くなって悩みの相談を受けることもあるし、メンバー同士が仲良くなって遊ぶということもあります。」
これまで『Adovo』の交流会には、ベトナム・カンボジア・ミャンマーなどのおよそ600人が参加。一方、外国の方に日本のことを伝えるメンバーは、90人以上に増えました。

今後も大学に通いながら、この活動を続ける松岡さんと名取さん。これからやりたいことの1つは、中高生に向けた情報発信です。
「名取:実際に自分たちの周りの友達とかに[こういうことがあるの知ってる?]って言っても、やっぱ知らない人がほとんどで。僕たちが言ってる、技能実習生たちが過ごしやすい、楽しく日本で生活できるようにしたい、ということの1つの前提としてそういう現状があるっていうことを知ってもらって、そういう人たちに対してサポートとまでは言わなくても、そういう人たちに対して受け入れる心とか、良い接し方を出来るような心構えとか準備というのを、我々受け入れる側が持ってることが大事だなと思ってます。」
『Adovo』の代表・松岡柊吾さんに、最初に感じた外国人技能実習生についての課題。どうやって解決していきたいと考えているか伺いました。

「松岡:日本語教室や交流会を通して、技能実習とか働くとかそういうことよりも、日本を好きになってもらう、というのが1番メンバーが思っていることです。交流会や日本語教室で楽しい思いをしてもらって、日本人の友達、つまり僕たちのメンバーを友達だと思ってもらって日本を好きになってもらいたいっていうのをすごく思っています。」
一番大切なのは、日本を好きになってもらうこと。人と人、心と心をつなぐ活動が続きます。