今回はaikoさんのニューアルバム【今の二人をお互いが見てる】のHidden Story。aikoさんインタビューさせていただきました。

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早速、アルバムの1曲目『荒れた唇は恋を失くす』についてうかがいましょう。島田 昌典さんがアレンジのこの曲、イントロは、どうやってできたのでしょうか?

「私はピアノとボーカルでデモを作ってるので、ピアノだけ、テテレテテっていうイントロが入ってるんですけど、その形のまま島田さんにアレンジをお願いしたら、そこにブラスが入ってさらに華やかになっていて、自分が持っていた以上の世界が広がっていたんですよね。もうワクワクして、で、もう絶対1曲目って。1枚目のアルバム【小さな丸い好日】に『ジェット』という曲が収録されてるんですけど、『荒れた唇は恋を失くす』を聞いた時、アレンジが島田さんから上がってきた時に、三軒茶屋の街を走ってみたことがあったんです。その当時、事務所が三軒茶屋にあって、で、この曲聞いて、どんな気持ちになるだろうと思って、走ったらすごい気持ちよくて。その時を思い出すぐらいの感覚に、島田さんのアレンジのおかげでまたなることができて、もう聴きながら踊りまくって、家で1人でヘッドホンで聞いて、あ、もう絶対1曲目みたいな。」

躍動感あふれるナンバーで幕をあけるニューアルバム。ちょっと飛んで、7曲目『果てしない二人』。この曲の、この歌詞について、教えていただきます。[月もとっくに眠っていて、愛おしいあなたの声と涙が落ちる音だけが聞こえた]

「夜中に1人遊びしてる時って、お月様も眠ってるって思ってるんです。私、今は東京に住んでて、東京の街もすごく静かになった時間って、みんな寝てるかもしれんと思って、お月様は上がってるけど寝てるんじゃないかなって思ってて。で、みんなが寝てる時に、私と大切な人だけが起きていて、その音だけが空をかけて聞こえてくるというイメージがあって。それぐらい見てるよ、っていう。あなたの声は聞こえてるよっていう気持ちでいたいんですよね。お布団に入って泣いてたら、その涙が1回その布団に落ちた時にポスッて言ったんですよ。涙って落ちたらこんな音がすんねんなと思って、その音を聞けるぐらいの距離感っていうか、そういう気持ちでいたい、っていつも思うんですね。 」

『果てしない二人』に続く8曲目は、『のぼせ』。Tomi Yoさんのアレンジによる1曲です。

「のぼせてる時って、自分があんまり考えたくないことは考えないなと思って、そこで浮かぶものって多分、自分の大切にしてるものしか浮かばへんようなイメージがあったんです。そう考えた時に、あーまた好きな人のこと考えたらまたのぼせた、と思って、そのままメモに入れました。iPhoneのメモに入れて、で、曲にした時に、もうカルテットでやりたいと思って、Tomiさんにお願いをして、ストリングスの皆さんが演奏してくださいました。」

この曲「のぼせ」について、こんなことを聞いてみました。2002年のアルバム【秋 そばにいるよ】に収録された『心に乙女』。

『のぼせ』は、『心に乙女』へのセルフ・アンサーソングなのでは?

「全然意識はしてなかったけど、今そうやって考えると『のぼせ』は『僕』やし、『心に乙女』は『あたし』で女の子。時間が経ってこれをかけたっていうことは、全部繋がってるなっていう感じがすごいしました。 あと、変わってないんやなって、なんかそれも嬉しいですね。同じことを違う形で続けられてることと、あと、自分の恋愛とか、愛とか恋にまつわる気持ちが、今も昔も変わってないんだなっていうことが とても嬉しかったです。女なんて男なんて、って思ってなかった。今もラヴ、みたいな。」

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『変わらずして変わっていく』がテーマだと語るaikoさん。今回のアルバムには、19歳のときに書いた曲『夏恋のライフ』も収録されています。

「友達から連絡が来て『あいこあの曲出さへんの?』って。『何の曲?』って聞いたら、『年に何回か思い出して口ずさんでる曲なんやけど』『え、ちょっと歌ってみて』って言ったら、ボイスメモが送られてきて、『夏が終わりをつげる』って歌ってて、これ昔作った曲や、と思って。カセットテープを探したら出てきたんですよね。ちょっと聞いてみようと思って、カセットテープレコーダーで聞いて。で、 あ、懐かしいなっていうのと、やっぱり出したいなっていう気持ちがあって、そのままそのAIWAのカセットテープレコーダーを持って、道端でレコード会社のスタッフの方に聞いていただいて、タクシーがすごく通る中で、耳を一緒にくっつけて再生して聞いて、そしたら『すぐCDにしよう』と言ってくれて、レコーディングすることが決まったんです。」

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アルバム【今の二人をお互いが見てる】。最後に、このタイトルにある『今』という言葉について 語っていただきました。

「曲を作るって、自分と向き合う大事な時間でもある、ということに、最近気づいたというか、歌詞を書いてる時とか曲を作ってる時に、それぐらいの気持ちで大切な人とも向き合いたいし、これを聞いてくれたみなさんとも1対1で向き合えていたいし、人と人やなって。あと、時間をどれぐらい大事に大切に過ごすかっていうことを、ここ何年かで改めて感じたので、『今』っていう言葉もすごく自分の中では大事。今を大好きで愛して、それで昔の自分を許して受け入れて、全部楽しく過ごしていけたらいいなって思いながら、悲しい曲も嬉しい曲も、このアルバムは収録した感じですね。」

aikoさんウェブサイト