今回は、国際舞台での活躍を志すプロサッカー選手を中心に、語学や異文化コミュニケーションなどを教える、【フットリンガル】、タカサカモトさんのHidden Story。

サッカー日本代表・遠藤航選手や 原口元気選手にも語学を教えるタカサカモトさんは、鳥取県のご出身。プロフィールにはこうあります。『東大に進学後、人生に迷う。メキシコでタコス屋の見習い、鳥取で 学び場づくり、ブラジルの名門サッカークラブ広報、ネイマール選手の通訳などを経験。』

「途中、何年か休学をはさんだりしてちょっと長めに大学生活を送ってまして、最後の年になった時に、じゃあ、これから何をしようかっていうところの答えが出しきれていなかったんです。ある日、たまたまリベルタドーレス杯という南米チャンピオンを決めるクラブの大会で、ネイマール擁するサントスが優勝した、というニュースを目にしまして、そのニュースが気になって、ネイマールを検索して、YouTubeで彼がドリブルしたり、プレイしてる動画を見たんですね。その時に衝撃を受けたといいますか、彼のプレーする姿に、それまであんまり感じたことがないような、大きな衝撃を受けて、何年もボール蹴ってなかったのに、真似していきなりボールを蹴りたくなってしまったり、一体この人はどういう人なんだろう?ってことに興味が湧いてしまって、そのまま最終的に卒業後、ブラジルまで行ってしまったっていう流れです。」
ネイマールをきっかけにタカさんはブラジルへ。ブラジルの名門サッカークラブ、サントスで広報に関わる仕事を得ます。日本からのリモートで サントスの広報の仕事をしつつ、ネイマールとの接点もできました。それと平行して、鳥取で『寺子屋』と題して、学びの場を開設。そしてその後、タカさんは、サッカー選手に語学を教えることになるんですが、これもネイマールが ひとつのきっかけでした。
「ネイマールが個人的に来日をしたタイミングで、その通訳、アテンドをやらせてもらう機会っていうのが、その何年か後に訪れるんですけども、その時に、ネイマールのアテンドをしていた中で、日本人のJリーガーとの出会いがありまして、それがきっかけになって生徒ができていった形です。その時に知り合ったのは、李忠成選手という、当時、浦和レッズに在籍していた元日本代表の選手なんですけれども、自分自身がサッカーに関して、国際コミュニケーション、語学文化適応っていうところで課題のある選手のサポートができるんじゃないか、と思ってると言った時に、後輩をぜひ紹介したいから見てほしい、みたいな形で選手紹介してもらって、そこから始まっていきました。」
李忠成選手との出会いをきっかけに、タカさんは、Jリーガーに語学や異文化コミュニケーションを教えるようになります。その中のひとりが、当時は浦和レッズでプレーしていた遠藤航選手です。遠藤選手への英語のレッスン、どんな風に始まったのでしょうか?

「基本的にもうテイラーメイドと言いますか、その個人の個性と学習における傾向とか、得意不得意みたいなものに合わせて変えていくんですが、 遠藤選手の場合でいうと、音楽聴くのと歌を歌うのが好きな人なので、いわゆる洋楽の曲をピックアップして、まず1曲を徹底的にちゃんと歌えて、かつその英語の歌の内容を聞いてたら、映像としてちゃんと英語で頭に入ってくる、という状態を作る、みたいな作業から始めました。それは、エドシーランの『Thinking Out Loud』という有名な歌なんですけれども、彼自身がバラードが好きというのと、エドシーランを歌えるようになったら、現地でエンドー・シーランとか言ったら、ちょっと笑い取れるんちゃうか、みたいなところもあってやってました。実際、それをマスターして現地で歌ったら、チームメイトの一部がSNSでエンドー・シーランとか言って、彼をいじってきたりみたいなのを実際目にしたので、多少は機能したんじゃないかなという気はしてます。」
エド・シーランのナンバー『Thinking Out Loud』のあと『Perfect』という曲などもマスターしていったそうです。遠藤航選手は浦和レッズから、まずはベルギーのシントトロイデンに移籍。その後、ドイツのシュトゥットガルトへ活躍の場を移します。その頃、タカさんが遠藤選手に ドイツ語を教えることはあったのでしょうか?
「ドイツ語は、彼自身は結果的にベルギーに行ったんですけれど、日本人選手の場合、ドイツというのは、移籍先の候補としてあがりやすい国であったことは事実だったので、実は、ロシアワールドカップのメンバーに選ばれた時に、こちらでドイツ語のドリルを1個選んで持って行ってもらっていて、彼、ロシアワールドカップの直前合宿と大会期間中にドイツ語のドリルを丸1冊終えて帰ってきてたんです。そういった形でちょこちょこ『このテキストいいよ』みたいな、学習法指導みたいな形では、ドイツ語のサポートはしていて。ただ、結果的に移籍した先のチームの監督がUSA出身の方だったこともあって、どちらかというと、英語の勉強の方をしていたような記憶がありますね。 」
【フットリンガル】という名前のもと 活動されているタカサカモトさん。海外でのプレーを志す日本人選手のほか、日本でプレーするブラジル人選手のサポートもおこなっています。さらに、今後のヴィジョンとしては、こんなことも考えています。
「具体的な部分で、サッカー選手で始めたんですけど、結果的にビジネスパーソンの方とか、あるいは他競技の選手で、ちょっと興味持って、みてほしいと言ってくれる人が最近ちょこちょこ出ているので、そういった人たちも含めてサポートしていきたいなということが1つと、あと、新しいことで考えているのは、ブンデスリーガにいる選手から、ドイツ語をしっかりできるようになって、ドイツ語を指導できる人になってほしい、と。それは今後の日本サッカーのためにも必要なことで、できる人間が必要だから、ドイツ語をしっかり教えられる人になってくれ、というリクエストを受けているので、それをやりたいということ。さらに、これも選手からのリクエストで、いわゆる育成年代だったりとか若い選手たち、トッププロとはまた別のカテゴリーでも、語学や海外でやっていくということの重要性を教えること。これ、いずれも原口元気選手からのリクエストなんですけれども、それは今後やっていきたいな、という風に思ってます。 」
タカさん、これまでに、英語、スペイン語、ポルトガル語を習得。それに加え、原口選手からリクエストのあったドイツ語のほか、イタリア語や韓国語も勉強中だとか。そんなタカサカモトさんに、外国語を学ぶときのヒント、教えていただきました。
「外国語を色々学ぶとなった時に、どうしてもまず一つの言語しっかりちゃんと、というふうになる方が多いと思うんですけども、個人的にずっと心がけていることが1つあって、それは、なるべくいろんな国の言葉で、挨拶とありがとうとか、おいしいとかだけでもいいから、なるべくたくさん覚えるようにしています。あとはその国のマメ知識をなんでもいいから1個覚える。どこかで誰かとばったり、その国の人と会った時に、こんにちはありがとうを伝えるだけで、すごく笑顔になってくれたりとか、興味持ってくれたりって形で広がってくことがあるので。
豆知識、例えばですけど、ある時、鳥取の観光地を歩いていたら 海外出身の方がいて、『どこから来たの』と聞いたら、バルバドス出身だと言っていて、で、『バルバドス知らないよね』と言われたんですけど、『リアーナの出身地じゃん』みたいなことを言っただけで、すごい喜んでくれて。あなたの国のこと本当ちょっとだかもしれないけど、知ってるよ、ということをサインとして出せるというのはあってもいいことなのかなと思ってるので、それは語学に関心のある方におすすめしたいですね。」
タカサカモトさん著書『東大8年生 自分時間の歩き方』
