今週は、新規就農者=新たに農業を始める方を支援する事業を展開中、株式会社【WithFarmer】のHidden Story。

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代表の平戸 裕馬さんにお話をうかがいました。

平戸 裕馬さんは福井県出身。おじいさまが農業をされていたので、農村の風景には馴染みがありました。また、フィリピンのゴミ山を訪れたことをきっかけに飢餓と飽食、という課題に興味を持ち、大学は農学部に進学。そして、、、

「僕は大学の時に農家巡りで日本2周をしまして、お昼は農作業して、夜は一緒に飲むみたいなことをずっとやっていたんです。100軒以上の農家だったり、いろんな土地を巡らせていただいて、その中で日本の農業にものすごい感動したんですけれども、同時に僕の大好きな農村が年々疲弊をしていって、『もうやる人がいないんだ、産業として儲からないんだ』といった声をすごく聞く中で、旅先で出会った農家さんと一生関わっていくような仕事がしたい、あるいは、あの旅で見てきた農村の原風景をなんとかして守れないかな、といった想いで、『農業分野に一生を捧げていこう』と思って、就職した先が日本政策金融公庫という政府の銀行だったんです。」

平戸さんは、日本政策金融公庫に就職。そこで、新規就農者に融資をするなか、『新たに農業を始めるのは あまりにも大変だ』ということに気づきます。

農業するにあたって、最初に誰に声かけていいか、新規就農者の方がわからない。じゃ、ここでやろうって思った時に、農地を見つけるのがまず大変で、いい農地って基本的に地元のしっかりとした農家さんがちゃんと抑えてるんですよね。新規就農者にあてがわれる土地って、基本的に条件の良くないところが多いと。あとは、農家さんの弟子になって、その園地を引き継がせていただくという風になったとしても、実際にあった例として、経営が回ってなかったとこに、若者1人入ると経営が回るようになって、農家さんがすごくやる気を出してしまって、『やっぱりお前に渡さないよ』って言ったり、あと、その農家さんと生前は仲良かったんですけど、亡くなられた後に親戚が出てきて、『やっぱりその土地返せ』というようなことをおっしゃったり。あとは、就農できたとしても、近くに栽培技術を指導してくれる先生がいるかとか。また、僕がやっている果樹になってくると、あの苗木が成木になるまで、しっかり実が採れる木になるまで実がつかない期間があって、3年から5年ぐらいは無収入になってしまうと。その間をどうやって繋ぐのか、とか。もうありとあらゆる課題があって、つまずくポイントだらけだと。」

これだけでも かなりの課題がありますが、このほかにも、初期投資にお金がかかる、という課題もあって、新規に農業を始めるのが難しい状況があるんですね。こうしたことを解決するべく平戸さんは、会社を立ち上げます。

「まず僕らが、『農業辞めたいんだ』って言ってるような農家さんを市町村の方々だったり、 あとはJAの方々とチームを組んで探します。そして、『もう辞めたいよ、引き継いでくれ』って言ってくれた方がいましたら、その農家さんの農地の状態っていうのをチェックさせていただいて、居抜きですぐ入ることができるかとか、その農家さんに借金が紐づいてないかとか、あとは、その農地に拡張性があって未来があるかどうか、みたいなところを見た上で、JAさんが定める栽培方針通りやっていりいけばこれくらい稼げるだろうと判断できたところに対して僕らが新規就農したい人を探してきて。」

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では、このサービス、具体的には、どのように進むのでしょうか?

「新規就農者の方と離農される方をといきなりマッチングさせるわけではなくて、一旦、新規就農される方に弊社に入社していただいてで、2年間みっちり修業していただいてから、3年目からそのまま独立してもいいし、独立が怖かったら、弊社の子会社という形で切り離してそこの社長をやっていただくと。で、子会社の社長になった場合は、3年から5年ぐらいを目処に、経営的な数値も栽培技術も安定してきて、もう1人でやってけると言っていただいた人に対しては、本社の株っていうのを格安で新規就農される子会社の社長に売ってですね子会社の社長は、自分の会社の株を本社から買い戻すという形で、経営権を奪取すると。で、そうすることによって、無事に土地は承継されて、晴れて新規就農される方が独立できると。」

いったん、WithFarmerの社員になってもらって、つまり、給料をもらいながら 農業の修行を積みます。その後、そのまま独立してもいいし、『いきなり独立はちょっと怖い』という場合は、WithFarmerの子会社の社長、という形で農業を始められる。現在、実際にこのシステムを利用して、農業を始めた方がおひとりいらっしゃるそうです。

「海上保安庁で12年半働いて、コロナを機に農業をやりたいと志すようになった方、 神奈川県出身なんですけれども、ローンもあった家を売り払って、熊本に来ていただいて、このモデルの元、今頑張っているという方が1人います。彼がもう少ししたら独立するかなといったところで、このモデルが一旦の完結っていう、一例目がようやく出せるかな、といったところに来ております。」

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いま、最初に農業の修行を積んでもらう農園は熊本県にあるそうですが、今後、静岡県にも1箇所 開設予定。10年以内に、10の都道府県に農園を作りたい、ということです。平戸 裕馬さんに最後にうかがいました。今の日本の農業について、そして、WithFarmerの今後のヴィジョンとは?

農業をやりたい方は多いんじゃないかなっていう風に思っていて、ただ、どうやって農家になっていけばいいかわからないだったり、農業で生きてくっていうことに対して、ものすごい不安を持っているという方がすごく多くて、このハードルを11個取ってく必要が、やはりあるんじゃないかなと思ってます。

しっかりした考えと、しっかりしたやり方があれば、夢も見れるんだよっていった姿を、まずは自分たちからできれば、そして、仲間と一緒に伝えてくっていったことができていけば、農業をやりたい方と駆け橋が繋がっていって、そこの仲介として弊社も存在して、もっともっと就農者の方を増やせるんじゃないかなとは思っております。

弊社を通じて就農していただいて、自分たちで独立して作った農産物をドヤ顔で、『あこれうめえだろ』って、笑って農産物を販売してるような、そんな光景が見れたらいいなと思っていたり、弊社をモデルとして、 全国各地に新規就農を総合的に支援できるような団体だったり、会社が他にもできて、仲間が増えてきたらとってもいいなっていう風に思っております。」

WithFarmer公式Twitter