今回は、包丁のほか、農業・漁業で使う刃物を製造・販売、さらに、刃物の修理をおこなう会社、石川県の能登半島北部、能登町の【ふくべ鍛冶】に注目します。

実は、この【ふくべ鍛冶】がおこなう包丁研ぎの宅配サービスが大人気!そのHidden Story、ご紹介します。
お話をうかがったのは、明治41年創業、【ふくべ鍛冶】の4代目、干場 健太朗さんです。
干場さんは大学ご卒業後、地元、石川県の能登町役場で勤務。その後、お母様がお亡くなりになったことをきっかけに公務員をやめ、実家の鍛冶屋で 働きはじめます。当時、赤字の状態だった【ふくべ鍛冶】。まずは、こんなことにトライしたそうです。

「一つは移動販売ですね。能登町だけでも193の集落が密集してまして、そういった過疎地の山のそういった集落にもどんどん2 tのワゴンボックスで回って、『修理はないですか?足りない道具はないですか?』と回ったんですね。やっぱり鍛冶屋に山間の方からこのバスに乗ってくわとかを持って修理に来るっていうのは非常に大変で重い。私も店番していたときに、そういうおばあさんやおじいさんがたくさんいて、これはこちらから出向いて点を線で繋いでいけばより集まるんではないかな?というところで、地域のそういう"困った"をどんどん"良かった"に変えるような、そういう取り組みをどんどんしていきましたね。」
しかし、経営面では厳しい状況は続き、干場さんはこう考えます。他にはないサービスをやろう。思いついたのは、包丁研ぎの宅配サービスでした。

「家庭で簡単に研げる、シャープナーもありますけれど、実際に先端だけしか研げないので、すぐ切れなくなってしまいますので、砥石で刃肉っていう包丁の外側のところを研がないと鋭く、長く切れないというところがありますので、そういうお客さんがじゃあどこに持っていくのかっていうと、近くに研ぎ屋さんがあればいいんですけど、例えばスーパーさんに何ヶ月に1回来るとかあればいいんですが、なかなかタイミングが合わなかったり、あと刃物屋さんに持ち込むわけなんですけども、繁華街に刃物屋さんもありますので、包丁をバックに忍ばせて持っていくなんて非常に危険じゃないですか。そういったことで刃物を持ち歩かずして、包丁を研ぎに出せるっていうのはやっぱり需要があるんじゃないかということで。」
【ふくべ鍛冶】がスタートしたのは、『ポチスパ』というサービスでした。
「文字通り、【ポチスパ】というのはネットでポチっと注文しましたら、まず箱が届くんですね。その梱包箱にお客さんは包丁を入れて、最寄の郵便ポストに入れると、約1週間後にスパッとした包丁がご自宅に届くというサービスです。1本からですね5本までの包丁が入る専用の梱包箱っていうのがかなり味噌でして、梱包が難しい大変っていうお客様に簡単に届けられるので非常に好評を得ていますね。」
実は、この包丁研ぎの宅配サービス『ポチスパ』、アメリカへの進出を 視野に入れています。
「日本の包丁もですね、たくさん輸出されて使われているんだけど、実際海外ではどのように包丁を取り扱われてるんですか?っていうのをいろいろ聞いたところ、包丁を砥石で研いでないと。シャープナー、簡単にシュッシュッてやるようなああいうものがほとんどでして、砥石で研いでないからすぐに切れ味が悪くなって、数年で買い替えしてしまうんですね。
もう非常に僕もったいないと思ってまして、僕自身もその包丁を1から作るんですけども。包丁とその鋼を合わせる技術とかですね、こういう伝統的なその技術って本当に大変なんですね。神経をすり減らして職人が本当に魂を込めて1本1本作っているので、そういった包丁が簡単に捨てられている。非常にもったいないと思いましたんで、なんとかですね、包丁が数十年を使えるっていうメンテナンスの仕方を、アメリカの方でもそういった日本の精神を伝えてですね、いい包丁を長く使ってもらいたい。そういう思いでアメリカの方には進出したいなというふうに思ってますね。」
干場さんによると、アメリカの包丁の市場規模は日本の8倍! なのに、日本の包丁を砥石でとぐ、ということがおこなわれず、切れなくなると捨てられている。これはまさにもったいないことですし、逆に言えば、包丁研ぎのビジネスチャンスは非常に大きいと言えそうです。
ちなみに、【ふくべ鍛冶】では、包丁をはじめとする刃物の製造・販売もおこなっています。WEBサイトを拝見すると、『まきり』という刃物が出てきますが、、、これは??

「まきりっていうのは漁師さんが使う万能ナイフのことで、船の上に持って行って魚をさばいたりロープを切ったり、網を切ったりですね、これ1本で船の仕事は全部をするという包丁でして、これが今キャンプブームで30代から50代の男性にうけてまして、山の方で今活躍してますね。一番うちで売れている包丁をまだ紹介してなかったですね、イカ割き包丁という両刃の小出刃があるんですけども、文字通りイカをさばくのに適した包丁でして、イカのこのぶよぶよとした肉質のものでもしっかり切り離すことができるので、イカ刺しを作るのも非常に優れています。イカだけじゃなくてですね、手のひらサイズぐらいの魚ですと、簡単にさばくことができるので、万能小出刃として非常に便利ですので、人気がありますね。」
公務員から、鍛冶屋の仕事に転身。【ふくべ鍛冶】4代目の代表となった干場 健太朗さんに最後にうかがいました。 今後のヴィジョンとは?
「能登は人がどんどん減ってきてですね、過疎にはなってきているんですが、今、移住者の方もどんどん増えてきてまして、この田舎でも働きやすい環境というのはどんどん整備されていまして、鍛冶屋を通じたビジネスに興味のある方っていうのはやっぱりうちも採用をどんどんしていきたいなと思ってまして。今後はですね、やっぱり仕事作り、能登ならではの仕事作りっていうのをどんどんしていってですね、能登では当たり前にやっていたこの鍛冶屋の仕事を全国、世界でも手軽にこの鍛冶屋の機能が使えるような、そういう便利な会社を目指していきたいなと思ってますね。」

