今回は、砂糖漬けにした柑橘をチョコレートでコーティングした【オランジェット】。

その美味しさに魅了され、オランジェットの専門家として活動する方がいらっしゃいます。その名も、オランジェット橋本さんのHidden Story。
オランジェット橋本さん、、、そもそも、オランジェットを極めようと思ったのは、どんなことがきっかけだったのでしょうか?
「もともと僕はチョコレート好きから入ってます。社会人1年目の時に京都が最初の勤務地だったんですけども、京都はチョコレートにすごくあふれたというか有名なお店があるエリアで、そこでチョコレートを色々買ったり見たりしてたんです。その中で、あるバレンタインの催事が京都でありまして、その催事の中でフランスのトップ・シェフ、ショコラティエが来るセミナーがあって参加して、そこでたたまたまそのシェフが『今日紹介するのは、オランジェットです』ということで、色々話を聞いて食べたところ、めちゃめちゃ美味しくて。もともと知ってはいたんですけど、今まで食べたことあるオランジェットは何だったんだろう、というくらいの衝撃で、もうオランジェットに魅了されて、そこからオランジェットを見る目が変わっていって。どんな種類があるんだろうとか、自分でも作ってみたいなと、どんどん思いが強くなっていたっていうのがきっかけというか、最初ですね。」
その後、さまざまなオランジェットを食べ歩くようになった橋本さん。もうひとつ、大きな出会いがありました。
「色々食べる中で今もですけど、当時やっぱり海外産の柑橘が多かったんですね。もともとフランスのお菓子なので、海外から来るオランジェットが多かったんですけど、まれに国産の柑橘を使ったオランジェットがありまして。で、天草晩柑という柑橘を使ったオランジェットに出会ったのが1つ大きなターニングポイントというか。すごく力強かったんですよ。今までは、甘いオランジェットばかりだったんですけど、ほろ苦さがある、ちょっと大人のオランジェットというのに、そこで初めて出会って、これも京都のお店だったんですけど、そこのオランジェットを食べて、『あ、オランジェットって、こんな幅広い味があるんだ』というのを知って。ちょっと自分でも作ってみたいと思って、スーパーで和歌山のはっさくを買って自分で作ったら、 なんか意外に美味しくて、まあ、本当に家で作ったレベルだったんですけど、国産柑橘は面白いなと思うようになって。」
オランジェット橋本さんは、ご自身の活動には、2つの軸があると話します。ひとつは、チョコレートが好きだ、ということ。もうひとつは、オランジェットに『柑橘』の面からアプローチしたい、という想い。橋本さんは、みかん農家に詳しく、農業の未来を考えたプロジェクトを展開する会社=WithFarmerに転職。全国のみかん農家をたずねました。 その中で気づいたのは、、、
「思っていた以上にオランジェットって魅力的だなと思って。僕が思ってたのは 、例えばちょっと傷ついてB品になったものを加工するぐらいかな、ということだったんですよ。そういう声もちろんあるんですけど、 それ以外にも、『農作業めちゃめちゃ忙しいんで、やりたいけど、そんな時間はないけど、加工商品やったらいいよね、どこかお願いできるところを探してたんだ』という方もいらっしゃいますし、あとは、日本って本当たくさんの品種があるじゃないですか。もう本当に海外から見ても柑橘大国って言われるぐらいいろんな品種がある。でも、スーパーで見る柑橘ってそんなに多くないと思うんですよね。100種類とか品種としてはあるんですけど、スーパーで見る品種ってすごく少なくて、けど、やっぱりいろんな柑橘が作られてるので、それをアピールしたい。でも、例えば、酸っぱくて生だと食べれないからどうやってアピールしていいかわかんない、とかいう声が結構あって、その生のフルーツを知ってもらうきっかけとして、オランジェットを活用したいとか。」
橋本さんは、株式会社WithFarmerの事業として、国産の柑橘の可能性を広げるブランド『daidai』を設立。オランジェットの製造に乗り出します。
「本格的に始めるっていうことになって、どこかに工場立てないといけないよね、と。弊社は熊本に農園を持っているので、せっかくだから自社で自分たちで作った柑橘でも作りたいし、 弊社としては始まりの土地でもあるので、熊本でしたいね、という話で、熊本でじゃあどこか加工できるとこないかなっていうのを探し始めたのが、去年の春とか夏ぐらいですかね。で、そこで色々探して良いところがあったので、今ちょうどバレンタインシーズンですけども、ここに間に合うように、できたらまあ、10月、11月ぐらいに建てたいなと思ったんですけど、ちょっと色々押しに押してギリギリ。まあ、年内なんとかできてっていうところで、今工場を色々揃えながら製造してる、ということ。」
『daidai』のオランジェットは、さまざまな柑橘、さまざまなチョコレートが使用されていますが、そんな中、今シーズンのイチオシは、どんなオランジェットなのでしょうか?

「聞き慣れない柑橘なんですけど、今季最高傑作だと自分では思ってるのは、山口のオリジナル柑橘『長門ゆずきち』という柑橘がありまして、ゆずだったり、カボスだったりに近い品種なんですね。で、結構酸味もあるんですけど丸い酸味で果汁もすごく豊富で香り豊かで、という品種があって、これで作ったオランジェットがもうめちゃめちゃ美味しいんです。合わせたのは、ペルーのチョコレート。ちょっとビター目のチョコレートなんですけど、これとの相性がすごく良くて、余韻がものすごく長いんですよ。ゆずきちも力強いですし、そのペルーのチョコレートもすごく力強いんですけど、ずっと喧嘩せずに、ずっと最後までお互いがどっちが勝つわけでもなく、両方寄り添って最後まで続く、というのが出来上がったので、それがもう今季イチオシのオランジェットです。」
最後にうかがいました。オランジェット橋本さんの、これからのヴィジョンとは?

「もともと始めたのがやっぱり国産柑橘農家さんの力に、というところだったんですけど、チョコレートの力を借りて、例えばオランジェットを召し上がっていただいた方が『あ、この柑橘、何だろう』と興味持ってくれたら、すごく嬉しいんですね。例えばデコポンのオランジェットを召し上がっていただいて、『デコポンってこんなに美味しいんだ。ちょっとデコポン買ってみよう』とか、『この農家さんから買ってみよう』という流れができたら、すごく嬉しいなと思っていてます。そんな商品が少しでも多くできるように、そのチョコレート好きの人が柑橘好きになったりとか、逆でもすごく嬉しいんです。柑橘好きの人がチョコレート好きになって、もう2つのその世界がミックスされるというか、シナジー効果が生まれるようなオランジェットをこれからたくさん作っていければなと思ってます。」

