今回は、去年11月、フランス、パリで開催された『ロン・ティボー国際コンクール』ピアノ部門で韓国のイ・ヒョクさんと並んで第1位!ピアニスト、亀井聖矢さんのHidden Story。

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亀井聖矢さんは、2001年生まれ。愛知県ご出身です。まずは、亀井さんがピアノを始めたきっかけについて教えていただきました。

「僕がピアノを習い始めたのは4歳のときで、小さい頃ピアノのおもちゃとか、キーボードのおもちゃみたいなものでずっと遊んでいたのを親が見ていたらしく、それでちょっと習わせてみよう、というのが、僕がピアノを習い始めたきっかけです。最初の先生は近所の幼稚園に教えに来られていた若い地元の先生なんですけれども、その先生がすごく僕のやりたい曲を尊重してくださる先生でした。僕は小さいながらにすごく難しい曲だったり弾きたい曲がたくさんあって、例えば、小学校4年生の時に『ラ・カンパネラ』を弾きたいと言ってみたり、『英雄ポロネーズ』を弾きたいと言ってみたり。『そういう作品はもう少し大きくなってから勉強したらまた違ったものが見えてくると思うけど、でも今やりたいという気持ちはすごく大事だから挑戦してみたらいいんじゃない?』というふうに背中を押してくださる先生だったので、自分が好きだ、という気持ちをずっと持ち続けたままピアノを続けてこられたのは、本当にその先生のおかげだなと思っています。」

亀井さんは、高校の音楽科に進学。そして、大学は、飛び級で入学することになります。桐朋学園大学 音楽学部に17歳で入学。そして、この年、日本音楽コンクールピアノ部門、第1位。ピティナ・ピアノコンペティション特級でもグランプリを獲得しました。

「ピティナというのは、年齢が若い頃からいろんなカテゴリーがあるんですが、この特級というのが最終的に目指していたところです。日本音楽コンクールというのは17歳から出場資格が得られるので、このコンクールもずっと出たかったコンクールでした。ピティナもいろいろ若い級から受けてきて、最後のこの特級という一番大きなところへの挑戦、そして日本音楽コンクールも17歳になりたてだったので、初めて参加資格を得られて、ここもずっと夢だった挑戦っていうのが、たまたまこの大学1年のタイミングで重なって。一人暮らしも始めて、生活にもなれないまま、本当に勢いでがむしゃらに練習していた記憶があります。」

2022年、亀井さんは、実は3年前には予備予選を通過できなかったコンテスト=『ロン・ティボー国際コンクール』に挑戦します。予備予選、一次審査を突破。つづくセミファイナルは、45分のプログラムを、課題曲と自分で選んだ曲で構成する、というスタイルでした。

「ここは非常に悩んだんですけど、45分を通して意味合いを持ったストーリーを持った選曲にしたいなと思い、今回、フランスのコンクールだったので、やはりフランスものをプログラムの核として組み込んで挑戦したいな、という思いがありました。ラベルの『夜のガスパール』という作品をまず軸に一つ目において、それから課題曲であったショパンの『プレリュードの第16番』という1分ぐらいの短い作品なんですけれども、すごく強烈な個性のある作品でこの作品を差し込んで。3曲目に、これはレアな作品ですけど、日本人の細川俊夫さんという作曲家の方の作品でフランスの作曲家のピエール・ブーレーズという方に送って書いた『俳句』という作品があるんですけれども、この作品を、日本人である僕が、そのフランスのコンクールに向けて弾くというところで、全体としてフランスに対するやはりすごく敬意を持ったプログラムというものを組みたかったですし、その意味づけをこういう作品でできたかなと思っています。そして最後に自分がすごく大好きな作品であるリストの『ノルマの回想』という作品、すごく華やかな作品なんですけれども、この作品でプログラムを締めくくって一つの45分の大きなストーリーを作れたかなと思っています。」

コンクールのファイナルへ進出した亀井さん。ファイナルは、オーケストラとともに演奏する審査です。亀井さんが選んだのは、3年前、最初のチャレンジのときにも課題曲となっていた、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番《エジプト風》。この曲の魅力、、、亀井さんに語っていただきました。

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全部なんですよね。どこを切り取ってもどこも飽きさせないし、どんどん次のいろんな風景が見えるような着想が出てきて、副題がエジプト風と言うんですけど、エジプト風のすごく民族的な旋律だったりリズム感だったり。かと思えば、3楽章とかも本当にものすごい推進力を持って進んでいきますし、1楽章の出だしは爽やかな朝の澄んだ空気のような、いろんな景色をこの1曲の中でどんどん見せてくれる、旅に出ているような感覚になれるような作品なので、どの瞬間も飽きることなく30分走り続けられる作品だな、と感じていたので、そこがやっぱり自分がこの曲を大好きな理由ですね。」

『ロン・ティボー国際コンクール』ピアノ部門。ファイナルの結果は、その日の夜に発表されます。その結果は、韓国のイ・ヒョクさんと並んで第一位だったのですが...

表彰式で発表されたんですけど、このイ・ヒョクさんは最初から優勝候補だと思っていたコンテスタントでしたし、ファイナルもものすごく素晴らしい演奏されたので、そこに肩を並べて第1位という結果をいただけたことは本当に嬉しかったです。ただ、ファイナルのその結果発表のときにフランス語で『2人とも1位』みたいなことを言っていたみたいで、どちらの名前も呼ばれないまま結果発表が終わってしまったので、とにかく何か祝福ムードっぽい感じでお互いハグとかし合っていたんですけど、祝福とも取れるし、喜びとも取れるような一番ニュートラルな笑顔していました。後から耳打ちで『1位タイだよ』みたいなことを聞いて、なるほどっていう。嬉しさ的にはじわじわと実感していった感じです。」

素晴らしい成果をおさめた 亀井聖矢さん。この結果について、どんな感想をお持ちなのでしょうか?

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もちろんいろんな活動の幅を広げてくれる素晴らしいコンクールであることには違いないんですけれども、ただやっぱり自分がやっていくことはこれまでもこれからも変わらないと思っているので、まだ他に挑戦したい大きなコンクールもまだ残っていますし、これからいろんなコンチェルトだったりとかコンサートだったりとかいろんな機会をいただけるものを、本当に一つ一つ全力で自分の音楽表現していく、ということは変わらないんじゃないかなというふうに思っています。

亀井聖矢さんウェブサイト