今回は、石川県加賀市にある石川樹脂工業株式会社が手掛けるテーブルウェアのブランド、【ARAS】の Hidden Story。

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美しいデザイン、そして、1000回落としても割れない、という耐久性。これが、【ARAS】の食器の特徴です。まずは、このブランドを展開している石川樹脂工業とはいったいどんな会社なのか、専務取締役の石川 勤さんに教えていただきました。

「石川樹脂工業は樹脂の成形をしている工場で、それを食器であったりOEMとして、例えば、新幹線の枕木だったりトンネルの部品だったり、また全然違うところでは、仏具というお葬式に使われるようなものだったり。ということで、食器から工業部品、そして仏具といった形で、幅広いところへ提供させていただいている会社となっております。

もともとは、うちの祖父から始まっていて、実は我々、山中温泉というところから発生した会社になっております。山中温泉は『山中漆器』という漆器の産地で、曾祖父が元々昔は漆器の木地をひいていたんですが、それが時代の移り変わりとともにより効率よく、より耐久性もある樹脂の食器という形で移ってきた、というところから、石川樹脂工業というものが始まっております。」

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そんな歴史の流れを引き継ぐ存在と言えそうなのが、テーブルウェアのブランド【ARAS】です。

ARASは、こだわりのある人の普段使い食器という形で展開しているんですが、どうしても、いい食器というと割れやすいとか晴れの日にしか使えないみたいな、本当にいい食器だとそういうイメージがあるんですが、普段使いでも肩の力をあまり入れずに、でも気持ちよくできる食器が本当にないのかなということで、1000回落としても割れなくて、どんなお料理をのせても食体験が豊かになって、今の時代なので写真映えもしっかりするような、そんな食器を目指して作っております。

今までやはり樹脂とかプラスチックって聞くと、木の偽物だったり、ガラスの偽物、金属の偽物みたいな感覚があったと思うんですが、そうではなくて、樹脂ならではの美しさとか、機能美っていうのが本当にないのかなというところでARASを開発させていただいております。」

樹脂ならではの美しさ、1000回落としても割れない耐久性。こうした素材をつくるために、2年以上の月日が費やされました。

「やはり単純に作っちゃうと、今までのプラスチック食器みたいな、子供用のちょっと安いっぽい感じになってしまう食器にどうしてもなってしまうので、高級感があって、でも日常的に使える機能性っていうのを掛け合わせた素材というものを選定・開発するのにすごい時間がかかってます。

まず食器なので汚れ移りにおい移りがしないというのは、ひとつの選定基準になっております。また、プラスチックはやはりちょっと柔らかい素材になっていて、そうすると金属のカトラリーとかを使ってしまうと傷がつくという問題もあるので、通常の樹脂に加えまして、さらにガラス繊維というのを複合させて、ガラスと樹脂を混ぜ合わせたそんな素材になっております。」

考え抜かれた素材を使って どんな食器をつくるのか?デザインは、金沢を拠点にものづくりをするクリエイター集団 seccaとともに考えられました。2020年、テーブルウェアブランド、ARASが立ち上がります。そして、翌年の12月には、ARASサステナブルコレクション『杉皮シリーズ』が発表されました。

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「実は杉皮に関しては、石川県もすごく林業が盛んな土地柄で、林業の方にお伺いするとやっぱり林業ってすごく経営が厳しい方がたくさんいらっしゃるんです。そのひとつの理由に、杉皮を捨てる、廃材の費用というのが非常に費用負担が大きいという問題を知り合いの林業の方からいろいろ聞きました。ならば、その杉皮を何か再利用してアップサイクルすることで何か面白いことできないかな、ということでトライしたのが最初の商品になっております。

杉皮の商品に関しては51%が杉皮になっていて、杉皮そのものでできています。それを形作るためにちょっと樹脂と混ぜ合わせてる、という感じなので、半分以上が杉皮ですね。」

そして、このサステナブルコレクションは さらに加速します。『海水』を使ったシリーズが発売されているんですが、そのきっかけは、石川さんが 以前、シンガポールで暮らしたこと。石川さんは その際、『水』の問題に気づきました。世界には、水を確保するのに苦労している国があり、海水を濾過したあとの不純物の処理が課題となっている。これを知ったことが開発の原点でした。

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「杉皮と実は似たような話で問題になっているのが、海水を濾過した不純物の処理に困っている、という話をすごく耳にしていました。それを単純に海に放出すると赤潮の原因だったり海水温の上昇だったり、いろんな問題を引き起こすということなので、その処理に困ってるってこともシンガポールにいるときに勉強させていただいて、すごく身近な問題として捉えていて。その濾過した不純物の再利用はどうしたらいいのかなというので、三井化学さん達の原料の方にご提案いただいたのが今回の素材になっております。

海水の中にも、例えばお豆腐のニガリみたいな成分がありまして、いわゆるその無機物っていうところのミネラルをギュッと凝縮させて、それに樹脂を添加することで、そのミネラルが機能性を付加して硬くなるみたいな形かなと思ってます。」

最後にうかがいました。石川樹脂工業株式会社、石川勤さんの今後のヴィジョンとは?

「まだまだやはり生産の過程だったり物作りの過程で、不要になった物っていうのが存在すると思っておりまして、それをアップサイクルしてより良い商品に高めて、まだまだ食体験を豊かに、そして物作りも豊かにしていく。そんな表現になればなと思っていて、まだまだ海水の後にも、他の素材も含めてどんどん展開していきたいなと思っております。やはり、その素材開発は非常に難しいところだなと思っています。

ですが、やはり自社工場を持っている強みを生かして、しっかり技術開発というのができて、サステナブルな未来に貢献して、かつ世界を驚かせるような商品を作ることが弊社のミッションでもあると思っていますので、利益とのバランスを取りながらにはなるんですが、可能な限り新しい素材にトライして新しい表現ができればなと考えております。」

テーブルウェアブランド「ARAS」のHidden Story、お届けしましたが ブランド名は、アルファベットで、A、R、A、S。 逆から読むと、SARA(皿)となります。「お皿の概念をひっくり返す」という思いを込めて 名付けられた名前なんだそうです。

ご紹介したサステナブルコレクションは大人気になっていて、「杉皮シリーズ」は、毎月10日の午前10時から、「海水シリーズ」は、毎月20日の午前10時から ARAS(エイラス)のオンラインショップで、数量限定で販売されます。つまり、「海水シリーズ」は、あさって、ですね。~ちなみに、海水シリーズの大皿(直径27センチのもの)は、お値段、5500円となっています。

詳しくは、ARASのオフィシャルサイトをご覧ください。

ARASのWEBサイト

石川樹脂工業株式会社WEBサイト