今回、注目するのは『お手伝い』と『旅』をかけあわせたサービス【おてつたび】。

「【おてつたび】は、『お手伝い』と『旅』を掛け合わせた造語になっておりまして、季節的・短期的な人手不足で困っている収穫時の農家さんであったりとか、ハイシーズンときのお宿さんと、地域にいろいろ行ってみたいっていう方々が、Web上でマッチングするプラットフォームを運営しています。特徴としては、お手伝いをすると報酬・アルバイト代が得られるようになってますので、意外といろんな地域に行く際のボトルネックになりがちな旅費・交通費っていうのを削減することができ、お手伝いを通じて、知らなかった地域に行くきっかけができて、地域の方と関係ができ、第2第3のような故郷ができていくっていうところを目指しているサービスになります。」
お話をうかがったのは、株式会社 おてつたびの代表、永岡里菜さんです。『お手伝い』と『旅』をかけあわせたこのサービス=【おてつたび】を始めたきっかけは、どんなことだったのでしょうか?

「私自身が三重県の尾鷲市という、東京からだと車でも電車でも6時間ぐらいかかってしまうこともある、漁業と林業の街出身なんです。
うちの地域も他の地域と同様に少子高齢化や過疎化でどんどん若い人もいなくなっていってしまって、かつ著名な観光名所もないので、なかなか人も来てもらいにくかったり魅力を伝えにくいんですが、素敵なものたくさんあるっていうのを、幼少期から思っていました。
どうやったらそういった地域に人が訪れてくれて、その地域の魅力を知ってもらい、そういった地域も存続していく未来が作れるのかっていうのを模索しました。
実は5年前の26才のときにサラリーマンを辞めました。当時、東京に住んでいたんですけれども、東京でいろいろネット等を通じて、どうやったらできるのかっていうのを考えてたんです。
でも、東京にいてもその地域の方の現状であったり、課題、本当に求められるサービスが絶対できないと感じ、まずは地域の方の声を聞くために、現場を見に行こうと思い、いろんな地域を夜行バスで巡ってました。」
夜行バスも使って、全国各地をめぐり、頭を悩ます日々。地域の魅力を伝えるにはどうすればいいのか、さまざまな試行錯誤があったそうです。
「最初はやっぱり地域の方と仲良くなるのが大事なんじゃないかっていうのは根底にはありましたので、旅行先で地域の方と飲めるプラットフォーム、マッチングがあればいいんじゃないか...、仲良くなるためにはみんなでスポーツするのがいいんじゃないか...、そういうのを小さく試したりしていました。
でも飲み会自体はすごい盛り上がりましたが、その地域の方がすごい求めてるわけではなくて、正直なくても良いサービスだったってなったっていうところもあって、これは10年20年続かないなぁだったりとか、地域の本当に抱えてる課題って何なんだろう?っていうのを地域の方とお話したり地域に溶け込んだりしている中で、もちろん労働力不足っていうのは日本全体としても大きな課題ですしより、地方も課題感として大きいと思うんですが、より、季節的・短期的な人手不足の多さっていうところを痛感しまして。」
そして、永岡さんはあることに気づきます。人手が不足している、ということは、人と人をつなぐチャンスでもある。このピンチとチャンスを結びつけたのが、おてつたび、だったのです。最初の【おてつたび】は、こんな【おてつたび】でした。

「最初は長野県の山ノ内町という地域にあるお宿さんでのおてつたびでした。たまたまその参加された方がですね、建築関系を学んでいる大学生の子だったんですけれども、お手伝いをしながらちょっと休憩のときとか、あの空き時間に地域の方に、『実は建築を学んでいるけれども、いつも座学が多くてもっと現場を知りたいんです』っていうのをポロッと...
地域の方が、『ここら辺、空き家がたくさんあって困ってるんだよ』っていうので何か一緒にやろうよっていう話になって、トントンと実はそのおてつたびが終わった後の数ヶ月後には改めてその空き家をどう改修するかっていう、アイディアソンじゃないですけれども、大学生の子たちが友達をたくさん連れてまた再訪してくれて、一緒にアイデアソンを開いて、実際に空き家の改修まで一緒にやったっていう話を聞いています。」
現在、【おてつたび】の受け入れ事業者は 全国におよそ800箇所。参加者を受け入れる事業者のみなさんからはどんな感想が寄せられているのでしょうか?

「例えばですけれども、熊本県の戸馳島っていう地域で胡蝶蘭の花を栽培されて梱包をされている農家さんがいらっしゃるんですが、やっぱり母の日前ってすごい忙しくて、ゴールデンウィークのときが普段だと寝る間も本当に惜しくて、人手を募集してもなかなか集まらなくてっていうようなところなんです。
2年前からご一緒していておてつたび募集して20名ぐらいの子たちが戸馳島に集結してっていうような形になりました。農家さんがおっしゃってたのがやっぱり、農繁期ってすごい忙しくてみんな余裕もなくて覇気もなくてっていう状況なんですが、おてつたびの子たちが来ると収穫フェスのような、一大イベントのような形ですごいスタッフも一緒に楽しんでできるっていうのがすごいありがたいっていうのをいただいてまして。なので、毎年おてつたびの子たちが来るゴールデンウィークをスタッフの皆さんも楽しみにしてくださっているっていうような声であったりとか、いろいろいただいてますね。」
株式会社【おてつたび】の代表、永岡里菜さんに、最後にうかがいました。今後のヴィジョン、思い描いているのは どんなことでしょう?
「日本全体としてやはり人が減っていく事実はもう止められない。目に見えている事実でもあると思ってますので、人を取り合うのではなくて、人をシェアしながら、そこに住んではいないんですけれども、手伝いに来て労働力っていうところを解消してくれたり、時にはですね、そこの地域のものやお手伝いしに行った農家さんのものを買い続けてくれたり、お手伝いに行ったお宿さんにまた遊びに行って経済を観光という形で回してくれる方であったりとか、いろんな形で1人が1役ではなくて、2役3役になっていく未来っていうのを作っていきたいなと夢見ながらチームで頑張っていますので、引き続きそういった気持ちを持ちながらやっていきたいと思ってます。」