あいみょんさんご自身が語ります。アルバム制作。一般には、アルバムのために作曲してラインナップを決める形が多いかと思います。 でも、あいみょんさんは違うんです。

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「基本的にあまりシングルもアルバムもそうなんですけど、制作を『来月、再来月シングル出すから曲作るぞ!』っていうのは全てにおいてなくて、もう年中、常に作っています。常に制作してるみたいな感じなので、あんまりアルバムのために書き下ろすぞ!とかはないです。ないまま、アルバムを制作して曲が決まっててもずっと曲作りしちゃいますし、だからたまに、『あいみょん 、変わっちゃったね』とか言われるんですけど、『これ、マリーゴールドと同じ時期に書いてるんやけどなぁ』とか思いながら、すごい嫌なやつになってます私が。変わってないぞ。(笑)」

10代の頃から現在に至るまでずっと書いてきた膨大なストックがあって、そこからのセレクト、ということで『桜が降る夜は』も2017年に書いた曲なんだそうです。そんな中、アルバム2曲目の『スーパーガール』は?

「この楽曲は今回のアルバムの中だと割と新しい方かなと思います。あんまり楽曲を作るときに、特にこういう曲を作りたいから作ろうっていうふうにギターに向き合うことはないんですが、たまたま出てきたメロディーと言葉がちょっと妖艶といいますか、良くない男女の関係を歌う楽曲に自然となっていったんですよ。

レコーディングのときはすごくキーが高くて、大変でしたね。ライブでも結構キーが高くて、Bメロはすごく裏声で歌わなきゃいけないとか、結構自分のその歌もテクニックみたいなものをフル活用しなきゃいけない楽曲なので。一瞬、なんでこんなん作ったんやろう?って思ったこともありましたし。Bメロでファルセット、裏声で歌うんですよ。サビに向かっていくところでファルセット・裏声から地声に自然に変えていかなきゃいけなくて。変えていかなきゃいけないというか、私自身が作ってるときにそうやってもう既に歌ってしまってたので。ファルセットから地声に帰るところをいかに滑らかに、境目がわからないように歌うかとかはすごく大事です。ライブのときはBメロはすごく腹筋に力を入れて、裏声を出してたりします。(笑)」

そして、アルバムの6曲目は『3636』。

「基本的に私の楽曲はもう全て妄想・憧れか、自分の実体験と憧れと、その半分半分のどっちかなんですけど、この『3636』は自分の実体験と妄想・憧れが混じっていて、実際に宅配ボックスが開かなくなってしまったっていう出来事をきっかけに、作りましたね。そのタイトルの『3636』が、その預けてた宅配ボックスのいつもの暗証番号だったんですけど、頭の中にずっと『あのとき宅配ボックスあかへんかったの、なんか気になるな』ってのが続いて、曲にしたいなって思ったって感じはありました。忘れられない記憶みたいなものがやっぱりこう出てきてしまった。私はやっぱこれを曲にしたいんやなって自分が気づくといいますか。」

こういう言葉、どうやって出てくるのでしょうか?メロディが先にあるのでしょうか?

「私は同時進行ですね。基本的にはギターを持ってコードを一発鳴らしたときに出てくる言葉だったりとか、瞬間的に出る言葉から、曲作りを始めたりすることも多いので、ほぼ同時進行で常に作ってます。」

言葉といえば、『オムライスの返り血』という歌詞が印象的な曲、『ペルソナの記憶』。

「この曲は2020年にできてた楽曲なんですけど、当時、たくさんインタビューとか取材させてもらってたときに、『この頃はどういう曲を作られてるんですか?』っていう質問をされたときに、『最近、オムライス作ってて、オムライスのケチャップが服に弾け飛んできたときに曲ができたんですよ』っていうのを、ずっと言ってたんです。だからそろそろ答え合わせしとかなあかんなと思っていた曲で。オムライスを作った後にケチャップ少ないのに頑張ってプシューってやったら、服に弾け飛んできて、『私はオムライスの返り血を浴びたんだな』って思って曲作りし始めたっていう楽曲で。」

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全13曲が収録されたアルバムのラストは『愛を知るまでは』。

「2017年とかそれぐらいに作ってた楽曲なんですけど、すごく人間関係も家族も友達も、なんかすごく満たされてたんですけど、唯一私はやっぱ音楽からの愛はまだまだ感じられてなくて、ここでだから歌っている愛っていうのは音楽なんですけど、やっぱ音楽からの愛を知るまではまだまだ死ねないなっていう風に、きっと当時の私は思ってたのかな、と思いますね。」

『音楽からの愛』、というのは、たくさんの方に聞いてもらうことや、これがあいみょんだ、という曲を作ること。そんな意味だと語る あいみょんさんですが、最後にうかがいました。数々のヒット曲も生まれ、今は『音楽からの愛』を感じることができる日々なのではないでしょうか?

「そうですね。だからそうなんですよ、去年は音楽からの愛を知るまでは死ねないとか言っちゃったんで、そろそろ死ななあかんのかなと思って。(笑)

まだまだ貪欲にやっていけたらなと思ってます。月日を重ねるごとに、だんだんやっぱ毎月作る楽曲のペースは減ってはいるんですよね。すごく日常いろいろ音楽のことで取材させてもらったりだったりとか、バタバタと動かせてもらう日も増えたので、それでっていうのもありますけど、全然そのアイディアが減ったとか、そういうことは全くなくて、今でも気持ちは月にやっぱり1曲は必ず作りたいですし、1曲と言わず月に正直言うと、2曲は作りたい。そういう気持ちはもちろんずっとあります。暇があればギターを触り、曲はやっぱ癖なんですよね、ずっと作ってしまうっていうか、そんな感じの生活です。」

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