今回注目するのは、東京の三鷹市と武蔵野市。都市部で農業をおこなう農家のみなさんを応援する【まちなか農家プロジェクト】です。このプロジェクトのリーダー、苔口昭一さんにお話をうかがいました。

東京の三鷹市、武蔵野市の農業、ブロッコリー、カリフラワー、なすなど 野菜を主に作る野菜農家のほか、花、植木、さらに、キウイなどフルーツを生産する方もいらっしゃって数にすると250名ほどの方が農業をおこなわれている、ということ。
ただ、三鷹に暮らす苔口昭一さんも以前は このことに気づいていませんでした。
「2016年に三鷹市の『市民×IT』っていうイベントがあったんですけど、いわゆるプログラムとかアプリを作って地域課題を解決していく、ということに関するイベントでした。三鷹で農業、観光、防災、子育てなど、地域課題を解決しているプレーヤーを呼んで話してもらって盛り上がるイベントだったんですけど、ずっと三鷹に住んでるのにこの地域で農業をやっている方がそんなにいらっしゃることを実は私もあんまりよくわかってなくて、そこで初めて都市農業っていうのもわかりましたし、こんなに頑張られている農家さんたくさんいるんだと、そこで初めて知りまして。」
IT系のお仕事をされている苔口さん、このプロジェクトの前から、ITで地域の課題を解決する活動を展開されていました。そんな中、都市部の農家さんと出会い、仲間たちとともに、農業にまつわるアクションを起こすことを決めます。
「農業を、ITを使ってどうやって解決していこうかっていう観点で、10回ぐらい打ち合わせを重ねました。最初は皆さんやアプリを作って直売所をされてるので、例えば、その畑の近くにある直売所にセンサーを仕掛けたりとかして、直売所に今何が置いてあるかみたいなことをリアルタイムで可視化するアプリを作ろうとか考えて、そういったことを農家さんに実際にぶつけてみるんです。すると、『そんなの必要としてないな』とか実際に生の声を聞くと、自分たちが面白いと思ったことが全滅で、そもそも農家さん自体が面白いので、農家さんを世の中に知ってもらうっていうことが一番最初に必要なんじゃないかと、みんなの意見がそこで一致しまして。」
最初に考えたアイディアは、すべて却下...でも、そこですぐ 次のアイディア=まずは農家さんのことを知ってもらうために情報発信をしよう、ということで、【まちなか農家プロジェクト】のウェブサイトを立ち上げられました。
こちらは三鷹、武蔵野の農家のみなさんを取材。写真とテキストで紹介する企画を進めたところ、ページへのアクセスも徐々に増えていき、そして、次のステップは、農産物や 農家のみなさんに直接触れてもらうことでした。
「三鷹の駅前や駅の近くで、野菜を買える場所が少ないんですよね。なので、月に1回なんですけど、6人・7人くらいの農家さんから今旬の野菜を仕入れさせていただいて、『今旬な野菜セット』を予約制なんですけど、販売させていただく機会を作ったりとか。FC 東京の石川直宏さんや後援会 三鷹トレファルコと連携して畑を一緒に耕して試合前に野菜を販売させていただいたり、地元の大学生が全く農業のことを知らなかったりとかするので、地元の大学生=国際キリスト教大学、杏林大学の学生さんと一緒に畑に出て、畑でブルーベリーを採ってそのブルーベリーのドリンクを作って文化祭で販売するとかですね、そういったようなプロジェクト、共創型というような形で増やしていきたいなと思っています。」
プロジェクトリーダー、苔口昭一さんはまちなかの農地について、防災の側面もあると指摘します。

「住宅と住宅の間に畑があるんですね。それってそもそもなんですけど、例えば火事が発生した場合に、ある程度、何もない区画がないと火って止まらないんですけど、この辺りの農地の平均的な土地の面積が防火に必要な面積以上の面積があるので、まず防火に繋がる。あと地震とかそういったことがあった場合に、一時避難場所でうちの畑に逃げ込んでもいいよっていう農家さんが登録されていたりして、そこに逃げ込んで一夜ぐらいは過ごせる、というようなことができるので、防災機能があると言われています。一応、行政的な話でそこまでなんですが、農家さんって、結構その地域の消防団とかに入ってる方が多いので、いわゆる防災知識を持っている方が多いんです。どうしたら炊き出しが作れるのかとか、一時避難場所に避難した後、避難場所がどこにあるのかとか、そういった防災知識を持ってらっしゃいますので、そのリーダーである農家さんに、何かあったときに聞いて、しかるべき場所へその後避難するとか。あとビニールハウスだったりとか、全員ではないんですけど井戸もあったりするので、暖を取ったりとか、水道機能が止まったりとかした場合は、最悪、井戸水を沸かして飲むとか。」
最後にうかがいました。プロジェクトをスタートして6年、苔口さんは都市の中での農業についてどんなことを感じてらっしゃるのでしょうか?

「都市農業の機能の一番大きいところで地産地消のところがやっぱり大きいかなと思っています。やっぱり子供の頃から野菜とかがどういうふうにできて、どういうものが美味しいのかっていうのがわかってないと、大人になっても何がいいのかって見分けがつかないと思うんですよね。例えば、よくスーパーにある魚の切り身だけ見て、『あれが本当に泳いでるんですか?』という、子どもからの質問があるみたいなことを聞いたことがあるんですけど、それと同じように、なすがどうやってできてるのかとか、きゅうりがどうやって育つのかとか、やっぱり食育みたいな観点が、地産地消で、かつ、その食育の部分がやっぱりこの都市農業の一番の価値かなと思います。だから、小さい頃に農に触れておきたい、そういった方がいらっしゃいましたら、三鷹・武蔵野あたりは畑をオープンにしている方も結構たくさんいらっしゃいますので、ちょっと調べていただいて、そんなに遠くはないと思いますので、来ていただいて、農体験をしていただきたいなというふうに思っております。
