今回、ご登場いただくのは、サザンオールスターズのベーシスト、関口和之さんです。
関口さん、ソロとしては、ウクレレを演奏し、ウクレレの魅力を広く伝える活動を続けられています。そのHidden Story、語っていただきました。
スペシャルアルバム『FREE-UKES』をリリースした関口和之さんですが、まずは、関口さんとウクレレの出会いについて教えていただきました。
「80年代後半になりますかね、全然ハワイと関係なく『カイロの紫のバラ』という映画が日本で公開されまして、それを見に行ったんです。その映画の中で主人公のミア・ファローがウクレレを弾くシーンがあって、多分30秒なかったと思うんですけれども、これかわいいし、なんか弾けそうな気がする、と思って。その映画を見た足ですぐに渋谷の大きな楽器屋さん、YAMAHAに走りまして『ウクレレありますか?』って聞いたら、その当時は全然ウクレレは流行ってなくて、あれだけ大きな楽器屋さんなのに国産のウクレレが3本かかってるだけだったんです。その3本のうちの1本、パイナップル型のウクレレを買いまして、『教則本はないんですか?』って聞いたら、その一時代前のハワイアン世代の教則本しかなくて、本当にワイキキビーチの写真が表紙になってるような感じのものだったんですよ。まあいいかと思って買って帰ったんですけども、その後で友人でありますえのきどいちろうさんというコラムニストの方が、僕と同じきっかけ、つまり僕と同じ映画を見て、同じ楽器屋さんで同じ型のウクレレを、同じ教則本付きで買ってたっていうことが判明しまして。2人だけで盛り上がってたんですね、これからもしかしたらウクレレじゃないか、と。」
この ウクレレとの出会いからしばらくして、関口さんがウクレレの活動にのめり込んでいくきっかけとなる出来事がありました。
「そのえのきどいちろうさんがやってらしたラジオ番組がありまして、そこに世界一のウクレレ弾きがハワイから来るっていう話をえのきどさんから直接伺いまして、ラジカセの前に正座して聞いたんです。そしたら登場したのが、ウクレレの神様と言われているハーブ・オオタさんだったんですね。生でウクレレで1本で演奏してくれたんですけども、それがショパンのエチュードと、ジャズスタンダードの『スターダスト』っていう曲。その2曲が本当に素晴らしくって、ウクレレでこんな演奏ができるんだ、こんな奥の深い楽器だったんだってことを改めて気づかされまして。これはオオタさんをたくさんの人に紹介したいってのもあったんですけど。ウクレレの素晴らしさもきっとわかってもらえる人たちがこの世の中にはたくさんいるんじゃないかなって思って、そこからウクレレ普及活動を始めたっていう感じです。」
ハーブ・オオタさんのウクレレに衝撃を受けた関口和之さんは、ウクレレの普及活動をスタート。1997年、アルバム『UKULELE CALENDAR』をリリースします。
「97年に出した『UKULELE CALENDAR』っていうアルバムの前から、僕は割と企画書を書くのが好きで、いろんなところにウクレレの企画書を持ってこうと思って書いてたんです。でも、その話をするたびに、『じゃあ次の夏ね』って言われちゃうんですね。そうか、やっぱり夏のイメージなんだなと思ったんですけども、冬に聞いてもウクレレの音は逆にちょっと温かく感じるしね。一年中ウクレレでいきたいと思って考えたのが『ウクレレ・カレンダー』というアルバムだったんですね。12ヶ月分、一年中ウクレレっていうアルバムだったんです。」
お話にあったアルバム、『UKULELE CALENDAR』からは、「悲しき雨音 」が、今回の『FREE-UKES』に収録されています。『FREE-UKES』には、これまでの関口さんが発表してきた曲に加え、関口和之&1933ウクレレオールスターズが新たに録音したナンバーが5曲。1933、というのは、バンドの【象徴】と呼ばれている高木ブーさんが生まれた年にちなんでいるそうですが、その高木ブーさんをヴォーカルにフィーチャーしたのが、新曲『パパの手』。
「曲の構想は、ブーさんと娘さんのかおるさんの関係を見ていて、すごくうらやましいな、いいなと思ったのがきっかけで。自分のことを振り返ってみて、子どもと手を繋いでいたのは子供が小さいとき。ずっと手を繋いでたんですけども、そのうちいつの間にか繋がなくなって、この次繋いでくれるのはどいうときなのかなって考えたときに、自分が子供の助けが必要になったときなんじゃないかな?なんて考えまして、詩を書きました。」
ちなみに、アルバム・タイトルの『FREE-UKES』にはこんな意味が込められています。
「『FREE-UKES』っていうタイトルなんですけども『UKES』っていうのはアメリカの方でウクレレのことはユークって呼ばれてまして、そのウクレレの複数形としてユークスっていう言葉なんですけれども。ウクレレ自体は自由な楽器であるっていうこともそうだし、『FREE-UKES』って最後にエクスクラメーションを付けると、『ウクレレに自由を』っていうことにもなるんですよ。そしてもう一つ、メンバーの皆さん本当に自由な人たちばっかりで、ステージで喋りだしたら止まらないとかね、あと楽器を忘れてくるとかね。本当に自由な人たちばっかりなんで、こういうタイトルがふさわしいかなと思いました。」
楽しいウクレレ仲間とともに制作された『FREE-UKES』。このリリースと時を同じくして、現在、そごう横浜店では、関口さん企画・プロデュースのウクレレ展が開催中。関口さんご自身のウクレレ・コレクションも展示されています。
「僕自身は300本ぐらいウクレレを持ってまして、その中から選りすぐって、レアなウクレレを引っ張り出してきたりとか、このウクレレ展のために特別制作したウクレレもあります。ハワイのアンティークショップで見つけたりとか、あとはいろんなツテで僕のところにやってきたウクレレという感じですかね。中には清志郎さんのイラストが入ったウクレレとか、あとはビリー・アイリッシュのシグネチャー・ウクレレとか。彼女は子どもの頃からウクレレを弾いていて、ウクレレで曲を作ってたらしいですね。」
最後にうかがいました。関口和之さんは、ウクレレの魅力、どんなところに感じているのでしょうか?
「他の楽器とは違うんですよ。その違いってうまく言えないんですけど、ウクレレってうまくなくても楽しめる楽器なんですね。他の楽器って頂点を目指してみんな一生懸命練習するみたいなところがあるような気がするんですけど。
ウクレレは下手は下手なりに楽しめるんですよ。たとえ失敗しても、演奏が終わって、そのときに出るそのみんなの笑い声。それがウクレレの魅力なんじゃないかなと思っています。ウクレレが好きな人同士ってすごく簡単に繋がれるし、それがもう海外で言葉が通じなくても友達になれちゃうっていうところがあって、ウクレレはそのコミュニケーションツールなんじゃないかなと思うぐらいですね。」
