今回は、あるアイスクリームをご紹介。このアイス、主な原料はお米です!牛乳や生クリームなどの乳製品や卵を使っていません。いわば、ヴィーガンアイスです。葉山のアイスクリームブランド【BEAT ICE】のHidden Story。

【BEAT ICE】の山口冴希さんにお話をうかがいました。【BEAT ICE】は、以前は都内で暮らしていた山口さん夫妻が、葉山へ移住して立ち上げた アイスクリーム・ブランドです。ただ、移住した当初からアイスクリームを作っていたわけではありません。おふたりが最初に取り組んだのは、傾斜地の斜面に階段状につくられた『棚田』でお米づくりを手伝うことでした。
「やっぱり葉山って海のイメージだったので葉山に棚田があるなんて全く知らなくて、移住してから半年ぐらいしてから棚田に出会って、そこでお米作りを手伝うようになりました。当時、幼稚園のパパ友に誘われて『お米作りをちょっと手伝わないか』という話で行ってみたら、葉山の棚田で。まさか葉山にこんな棚田があるのも知らなくて、見た目がとても素敵だったので、それに魅せられてもうすぐに手伝うことになりました。」

山口さんご夫妻が参加したのは、『葉山棚田耕作隊』という棚田を応援するボランティアのチームでした。
「最初はお米を作るのが楽しくてをやっていたんですけど、やっているうちに近くの農家さんだったりそういう方たちから、後継者の方がいらっしゃらないとか、棚田には機械が入ることができないので収穫量がとても少ないというように、困ってる人が実はたくさんいらっしゃるということを知って。その一方で、私達みたいに美しいと思っている人もいるという、そのギャップがすごくあるなと思って、棚田からもうちょっと笑顔を生み出すことができたら棚田が自然と続いていくんじゃないかなと思って、何か棚田からできないかなと思って考えたのが、アイスでした。」
棚田を持つ農家のみなさんの課題を解決するため、思いついたのが『アイス』だった、というお話でしたが、、、そのアイディアが生まれた経緯をもう少し詳しく教えていただきました。
「葉山って海のイメージがあると思うんですけど、アイスだと葉山の海に来てくれたお客さんにアイスを食べてもらって、山の魅力を知ってもらうということができるなと思ってアイスにたどり着きました。
まず、お米の収穫量がすごく少なかったっていうのがまずポイントで、お米として販売できればいろんな人にそのお米を食べてもらうことができたんですけど、その量がなかったので、少ないお米から何ができるかな、というところで、いろいろ考えたんです。
お米からアイスにすると10キロから1,500個のアイスができるんですよね。なので、それだけの人に棚田を知ってもらうきっかけになるなと思ってアイスになりました。」
お米からアイスクリームをつくる。これは、どんな方法で製造するのでしょうか?
「お米を麹と混ぜて甘酒を作ります。麹とお米を合わせて発酵させて、ノンアルコールの甘酒を作ってそれをベースに作ってます。ココナッツミルクと豆乳と、あと、きび砂糖をベースで作っていて、乳製品を使わないアイスになってます。」
音を楽しむ『音楽』のように、農業の『農」を楽しむ『農楽』をコンセプトに、美味しいアイスづくりを続ける【BEAT ICE】。棚田のお米を使った『葉山アイス』は、2018年に発売スタート。実は、このアイスを1個買うと『10円』が棚田の保全活動に使われます。そして、この棚田にまつわる活動のなかで、全国各地の棚田のみなさんとの出会いがありました。
「葉山アイスっていう棚田のアイスを始めてしばらくしてから、違う地域の、長野の姨捨の方に『うちのお米のアイスも作れないか』というお話をいただいて。やっぱり棚田はどこも問題が一緒で、皆さん困っている方もいらっしゃって、最初は葉山でしか考えてなかったんですけど、他の棚田の方にも喜んでもらえたらいいなと思って、そこからまず最初に長野の姨捨アイスを開発して作りました。」
今では、全国10箇所ほどの棚田のアイスを販売中。さらに、日本の田園風景を残す活動をしている『三河みりん』とコラボしたアイスも発売されました。

「みりんって、どうしても日本だと煮物とかそういう料理に使うイメージが強いんですけど、海外だと『ライスワイン』というふうに呼ばれていて、スイーツやチョコレートの材料としても重宝されているんですよね。なので、そういう風にみりんをアイスに今使わせていただいています。みりんを半量になるまで煮切って、その旨みとコクをギュッと濃縮させて、それをブレンドしてます。」
最後にうかがいました。【BEAT ICE】が、アイスクリームを通して伝えたいのはどんなことなのでしょうか?
「棚田の保全活動しましょう、と言っちゃうと、ちょっと難しく考えちゃうんですけど、まずここに美味しいアイスクリームがあるよって、このアイスは何のアイスかな?棚田のアイスなんだ、というところから棚田を知ってもらって、そしたらワクワクしながら応援できるかなと思って。この活動で棚田が救えると思っているわけじゃなくって、この活動が一つのきっかけになって、また何か面白いことをする人が出てきたらいいなと思っていて。そんな何か一つのきっかけになったら嬉しいなと思ってます。」
