今回は、滋賀県高島市で生産される素材、帆布=かつては船の帆に使われたことからそう呼ばれているそうですが、その厚手の布=帆布を使ってバッグをつくる、【かばんやえいえもん】の Hidden Story。

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【かばんやえいえもん】は、デザイン、制作、そして販売まで滋賀県高島市ご出身の山内麻衣さんが手掛けるお店です。関西の大学に在学中は 理系の分野の勉強をされていた山内さん。そもそも、どんな経緯でかばん作りの道に進まれたのでしょうか?

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「大学を卒業して一度、関東に就職をしまして、そのときにものづくりを生業にしたいと思いました。それで、谷中・根津・千駄木、そのあたりをプラプラと歩いていたときに素敵なカバン屋さんがありまして、こういうカバンを作れたらいいなと思って、自分で手作りしたレザークラフトのものなどを持って、『こういうものは作れるんですけども、ここで作り手として働かせてください』というふうに門を叩きました。3回ほど『そんな簡単なものじゃないよ』ということで丁寧に断られたんですけども、それでもやっぱり諦められなくて、もう一度お願いしに行ったときに、埼玉県の草加に工場があるということで、そこに連れてってくださって。後から聞いたら、『そこに行ったら諦めるだろうと思っていた』と言われたんですけど、『ここで働きたい!』とさらに強い想いになったので、工場長に直談判をして、そのまま働かせていただくことになりました。」

山内さんは3年弱の期間、工場で主にハンドバッグ作りを学びます。そしてその後、自身の作品を 手作り市で販売したことで直接お客さんに販売する楽しさを実感。独立へと動き出します。

「『自分で作ったものを販売したいんや。』というのを田舎で母に話したときに『そういえば地元に帆布っていうのが名産であるで』と教えてもらいました。地元の素材を知ってもらいたいな、というのがあったので、まずはカバンの素材にしようと思いました。でも、やっぱりハンドバックと帆布のバックの作り方は違うので、またどこかで学ばないといけないなと。その頃まだYouTubeとかもそんなに発達していなかったもので、浅草の犬印鞄さんっていう帆布の鞄屋さんのところを叩きまして。『独立するんだけども、勉強させてください。』と社長にお話をして、『ライバルになるやん。』と言われたんですけど、『そこを何とかよろしくお願いします。』ということで、『じゃあ、やってみ。』というふうに教えていただきました。」

浅草のかばん屋さんで 帆布のバッグづくりを習得。では、どこで売るのか、という点ですが、山内さんは行商というスタイルを選びます。

「直接、手売りをしたいなと思ったので、アトリエ店舗を考えたんですけども、お客さんもゼロで、何の資金もないのにいきなりお店を持つのはとても大変だなと。できる範囲でやるにはどうしたらいいかなと思った時に自転車行商を思いつきました。街で自転車にカバンを並べて立ってるという、インパクトがすごく強いことをしたもので、最初はなんだ?っていう感じで、街行く方や住人の方にちょっと遠巻きな感じでは見られてたんですけど、やっているのが台東区の谷中という下町になるので、気さくに『何やってんの?』って声かけてくれる方もちょくちょく出てきて。まずは1年、平日に制作したものを土日に販売するっていうのを続けよう、という目標が私にもあったので、毎週毎週出ていたところ、1年ぐらい経ってから地元の方からも声かけてくれるようになりまして、アイスコーヒーとか差し入れしていただいたりとか、皆さんの温かさで続けられたという感じですね。」

山内麻衣さんのお店【かばんやえいえもん】。出産のため、一時は少しペースを落として制作や販売をおこなわれていましたが、今回 新たに、清澄白河に アトリエ店舗をオープンされました。

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「ちょうど今住んでいるところの近くの清澄白河という地域に、築90年近いすごく味のある鉄筋の建物の物件で出てまして、こういう古い建物でやれるのも素敵だなと思って、清澄でお店を持ったんです。地元の滋賀県の琵琶湖のほとりにあるようなアトリエの雰囲気にしたいなと思って、お散歩とかしてるときに感じる、緑とか鳥の声とかさざ波とか、水はないんですけども、ちょうどアトリエの窓から、借景で都心には珍しくお寺さんの境内の緑が見えても鳥も鳴いてすごくほっこりする空間なんです。そういうイメージでやったら、滋賀の帆布のバックのイメージを伝えやすいかなと思って、そういうコンセプトで作りました。」

ちなみに、お店の名前【かばんやえいえもん】ですが、関西の言葉【ええもん】にちなんで、【えいえもん】なんだそうです。では、どんな【ええもん】が、アトリエ店舗に 並ぶのでしょうか?

「お客様が楽しい気持ちになるようなネーミングのバッグがとても人気で、その中の一つに、『ツートーンとーと』というバッグや『よくはいーる』というリバーシブルのショルダーバッグ、あと、最近とても人気なのが『そらまめショルダー』という、そらまめの形のような3色展開のボディバッグ。あと新作でパンを入れて持ち歩けるようにバケットの仕切りなどもついた『パンとーと』だったり、食パンがつぶれないように仕切りになる『食パンBOX』という商品があります。」

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最後にうかがいました。山内麻衣さんが【かばんやえいえもん】を通して、みなさんに伝えたいのは どんなことでしょうか?

「私の場合は、滋賀の帆布を使うということで、地元の素材を皆さんに知っていただきたい、地元を多くの方に知っていただきたいという気持ちもありますし、あとはアトリエ店舗で対面で作りながら販売をするので、こういうふうに作るんだという、作る工程を見ていただく中で、ものづくりの楽しさを知っていただけたら嬉しいなと思います。」

かばんやえいえもんウェブサイト