今回は、【=tempus=】というブランドが手掛ける、究極の時短シャツ!時短とは、、、脱ぎ着する時間が非常に短くてすむ、という意味です。はたして、なぜ、このようなシャツを開発されたのでしょう?そのHidden Story、ご紹介します。

今回取材にお答えいただいたのは、ブランド【=tempus=】を立ち上げた、株式会社ロイネの岩井竜太さん。そして、シャツの共同開発者、山田千紘さんです。
時短シャツ開発のきっかけは、岩井さんが、山田さんのYouTubeチャンネルを見たことでした。それはどんな動画だったのか、山田千紘さんに教えていただきました。
「山田:僕自身が二十歳のときに電車に轢かれるという事故にあって、その事故で片腕と両足を切断してました。手足3本ないという体でも、気持ちを前向きにいろんなことにチャレンジしていけば楽しく生活できるんだよ、というのを配信しているのが僕のチャンネルです。おそらく見ていただいた動画は、僕は家の中では義足と義手をはずしていて車椅子を使っているんですが、その状態から外に出るときに、義足と義手をつけて立ち上がるんです。僕自身がサラリーマンなので朝スーツに着替えるだけでも20~30分仕度のかかるんですけど、その動画をご覧いただいたときに、片腕でボタンをするということもそうですし、脱いだり着たりするのも簡単に片腕でもできるようなものを一緒に考えたい、と言われたのが最初のきっかけですかね。
岩井:千紘さんは左手一本で器用に着られていたんですけど、それでも大変な部分があるだろうなと思って。」
総合アパレルメーカー・ロイネでシャツの開発を担当する岩井さんがインスタグラムのダイレクトメッセージで 山田さんに連絡。一緒にシャツを作ることになりました。
「山田:シャツって僕もサラリーマンで毎日着ますけど、そのシャツがより着やすいとなったときに、従来であればボタン式だと思うんですが、僕としてはボタンをする動作がなくても着られるのがいいかなと思って、マグネットボタンを提案させていただきました。従来、そういうものがまったくないというわけではないんですが、Yシャツで使われているのを見たことがなくて。僕自身がそれがあれば一瞬で脱ぐことも着ることもできるし、それこそ手が不自由な人もボタンで手間どることも減るのかなというところでその提案をさせていただいきました。」
『マグネットのボタンを使うことはできないか?』この提案を聞いたとき、ロイネの制作チームはどう感じたのでしょうか?
「岩井:ボタンのつけはずしを簡単にするという点で画期的だなと思ったのと、あと、マグネットを使った商品はあるんですが、Yシャツに使っているものはなく、高齢者向け・介護向けのシャツはあったんですね。僕らはみんなが着れるシャツに取り入れようということでやってきましたね。使っているマグネットもいろんな種類があったんですが、その中で僕らが見た目はかっこよくやっていく中で、どういうマグネットがいいか選定してやってきました。どのようにつけたらいいかは試行錯誤して、うちのパタンナーであるとかと打ち合わせしながら、どうやったら一番目立たずすっきりできるかを考えてやってきました。」
【=tempus=】の時短シャツ、ボタンの部分がマグネットになっていて、脱ぎ着がしやすく、また、しわになりにくい素材を使っているのも 特徴です。
「岩井:やっぱりマグネットが重たい分、生地自体は軽くしたい、というところで、今回使ったのはストレッチ性もあって複合繊維という特殊なポリエステルの生地なんですが、それをハイゲージで編み上げているというか、非常に着心地が軽いんです。ストレッチ性もあって動きやすい、某有名なアウトドアブランドで使用されているような生地なんですけど、それをワイシャツに使用している感じです。やっぱり、時短ということで、アイロンがけの時間も短縮したいのでしわになりにくいとか、洗濯したあとにすぐ乾いてしまうような速乾性も優れた生地、ちょっとした雨なら撥水性があるものとか、生地の素材にはこだわりましたね。」
およそ1年をかけ商品が完成。岩井さん山田さんは、そのシャツを着用してみて、こんなことを感じたそうです。
「岩井:上のボタンをあわせるとバチバチバチといくんですね。それがくせになるというか
山田:もう一瞬でとまったときは気持ちいいですよ。
岩井:近未来的な要素もあって。うちの娘がダンスをやっているんですけど、早着替えのときにもいいね、って。
山田:パッとできるんで。見た目は普通のシャツ、むしろ普通のシャツよりめちゃめちゃかっこいいので。」
最後にうかがいました。このシャツを通して、みなさんに、メッセージとして届けたいのはどんなことでしょう?

「岩井: 洋服の業界って、大量生産大量廃棄の問題とか社会問題に出されたりもするんですけど、こういう特徴のあるというか、ファッション性も追求して便利なもの、受注生産するものに目を向けていただくきっかけになって、ファッションっていろんなアイディアがあって面白いよねとか、楽しみながらこういうのを着たいよね、ということを考えるきっかけになったら嬉しいです。
山田:僕はケガをして障害をおってしまいましたが、例えば僕だけでなく、障害があるからファッションもそうですけど何かが狭まってしまうことがあったりするんですね。でも、それってあってはいけないなと思っていて、ファッションも楽しんでほしいし、幅を広げられるようなきっかけをこのブランドを通してできればなと思ってますね。」