今回は、NHK 連続テレビ小説『ちむどんどん』の主題歌、三浦大知さん、【燦燦】のHidden Storyです。

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この【燦燦】。まずは、曲を書き始めるときに、ドラマのスタッフから三浦大知さんに、『こんな曲にしてほしい』というようなリクエストは あったのでしょうか?

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「一番最初にあったのは、今回『ちむどんどん』の舞台が沖縄である、沖縄の家族の物語である、というプロットというか、あのストーリー自体をまず聞かせていただきながらも、ドラマスタッフさんからは『沖縄というものを意識しすぎないように作ってほしい』という話をしていただきました。それは、もちろんドラマが終わった後もこの楽曲はずっと世に残っていくものだから、ドラマにももちろん寄り添うんだけれども、そこの枠に収まらないというか、沖縄だから沖縄らしい曲、ってことではなくて、普遍的な楽曲を作ってもらえたら、というリクエストも一番最初にいただきました。

その時は楽曲の曲調とかBPMに関してはそこまでリクエストがなかったので、まずチームで3曲ぐらいアップとミッドとスローなものを作らせてもらって、そのときは歌詞はまだついてなかったですね。ラララ~の状態で3曲作って、まず聞いていただいたというのが最初でした。」

アップ、ミッド、スロー、3つのテンポの曲を作り、その中から、スローなものが選ばれた、ということなんですが、、、では、そのトラック=UTAさんと三浦大知さん作曲のトラックに、どんな歌詞を書こうと考えたのでしょうか?

「僕もドラマの台本とかを本当に最初の方だけですけど、ちょっと読ませていただいて、やっぱり家族って言うのが一つキーワードになってくるなというふうに思ってそのイメージで一度書かせていただいたんです。そしたら、テーマ自体はいいんだけれども、むしろ僕は台本を最初の方読んでたこともあって、ちょっとドラマに意識が行き過ぎていたところが逆にあったみたいで、ドラマのスタッフさんから『もっと、本当に三浦さんのパーソナルな言葉というか、三浦さんの個人的な気持ちだったり、想いみたいなものを入れたものを聞いてみたいです』っていうふうに言っていただきました。もっと自分のパーソナルな、もっと自分の個人的な想いをむしろ詰め込んでみようかということで、自分にとっての家族とかっていうことで今、歌にしたいことって何だろう?っていうのを考えたんです。昨年、父方の祖母がなくなったっていうのがあって、その祖母というのは本当に自分のことを、三浦大知のことを、信じてくれてたんですよ。自分以上に自分のことを信じてくれたっていうか。そのおばあちゃんからもらったものっていうのは、自分にとっての大きな家族の光だったなあというふうに思って、じゃあ、そのおばあちゃんに向けた手紙のような、とても個人的なんですけど、それぐらいパーソナルな歌詞にしてみようということで書き始めました。」

沖永良部島にお住まいだったおばあさま。去年、星になってしまったおばあさまへ宛てた"手紙"のような曲、それが【燦燦】ということなんですが、この【燦燦】というタイトルはどうやって決めたのでしょう?

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「もともと歌詞の中にも入っている『順光線』からとって『順光』っていうタイトルだったんですけど、順光ももちろんいいキーワードだなと思いながらも、もっとぴったりくるものがあるだろうという思いがあって。いろいろ悩んでたときに、自分にとっておばあちゃんからもらった光というものは、今でも燦燦と降り注いでるなっていうふうに思いましたし、うちのおばあちゃんが、美空ひばりさんの『愛燦燦』がすごく好きだったんですよ。それでおばあちゃんのお祝いのときに歌ったりとかした思い出もあって、タイトルからもちょっといただいて、【燦燦】というタイトルにしようというふうに決めました。」

キーワードになっている『順光線』という歌詞ですがこれはどんなイメージで書いたものなのか、教えてください。

「今でもそうだと思いますけど、おばあちゃんからもらっている光っていうのは、自分にとって何だろう?っていうのを考えたときに、自分が見ている景色とか自分が進んでいく、目の前に広がっている未来みたいなものを背中側から照らしてくれてる光なんじゃないかな?というふうに思ったんですよね。家族の光ってもちろん『頑張ってね』とか『応援してるよ』とかっていう目の前で言ってくれる言葉もあるかもしれないですけど、どちらかというと、やっぱり見守っている光だと思うんですよ。それはきっと、自分の目の前に広がる世界には光点っていうか、光ってる光点は見えなくて、自分の背中側からさしている光なんじゃないかなと思ったんですよね。なので、おばあちゃんから、もちろん自分の両親もそうですけど、母親も父親からもその光をもらってると思いますけど、家族の光、自分にとっての家族の光っていうのは、自分の背中側から、自分の未来とか自分の景色を見守ってくれている。その見ている景色を照らしてくれている『順光線』なんじゃないかなというふうに思って、この歌詞を入れたという感じでした。」

そして、歌詞のなかで繰り返されるのが、『大丈夫、ほら見ていて』という言葉です。

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「おばあちゃんが本当に自分以上に自分のことを信じてくれていて、いつも『そのまま感謝を忘れずに頑張りなさいよ、大丈夫よ、そのまま頑張ったら大丈夫よ』っていうことを言ってくれてたんです。その『大丈夫』っていう、自分を支えてくれる言葉みたいなものを、おばあちゃんからたくさんもらったなというふうに思っていて。ずっと見ててくれたし、ずっと見守ってくれた感じもとてもあるなと。あと、ちょっと年齢を重ねてくると、おばあちゃんも膝が悪くなったりして、そういうときによく電話して、『おばあちゃん大丈夫?』とかっていう話をしたりしてたんですけど、そのときに『大丈夫、大丈夫よ。直すから大丈夫だからね、心配しないでね。』っていうことをいつも言ってたんで、そういう『大丈夫』っていう言葉、キーワードで繋がっていたところもあったのかなっていうふうに思ったりしていたんです。本当に一番最初に出てきた言葉がそこでしたね。『大丈夫、ほら見ていて』っていう。なので、一番最初に歌詞を提出させてもらったときから、その場所だけは変わってなくて、その部分はもう本当に、この楽曲の中の1個軸になっているような大切な言葉かなというふうに思ってます。」

最後にうかがいました。【燦燦】を制作し、世に送り出した今、三浦大知さんは、この曲について、どんな想いをお持ちなのでしょうか?

「本当に今までで一番パーソナルな曲になったんですね。特定の誰かに向けてここまでフォーカスして書くっていうのは今までやったことがなかったので、たくさんの方に聞いてもらえる場所で、ものすごく個人的なことを歌うっていうことを挑戦させてもらえたこの経験っていうのはとっても大きいなというふうに思っていますね。ですが、蓋を開けてみると皆さんが自分が思ってる以上に、それぞれ皆さんの思い出とか皆さんのパーソナルな部分とちゃんと重ねてもらえてるなっていう気がして。何か自分の気持ちのコアな部分と誰かの気持ちのコアな部分が、この【燦燦】によって繋がれた感覚がとてもあって、それがやっぱり自分の中でもとても大きな経験だし、とても大きな気付きだし、【燦燦】を作らせてもらえたことで、これからの楽曲制作だったり音楽人生の表現の仕方みたいなものっていうのはきっと変わってくるんだろうなと思います。だから自分自身もこれから三浦大知が、三浦大知チームとして新しい音楽を生み出していくってなったときに、どんな曲が生まれるんだろう?っていうのを自分自身も今、とてもワクワクしてます。 」

三浦大知ウェブサイト