今回注目するのは、お茶どころ、佐賀県嬉野市のお茶農家16人が始めた【グリーンレタープロジェクト】。

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手紙のように、お茶を誰かに贈ってほしい。そんな想いが込められたプロジェクトをご紹介します。取材にお答えいただいたのは、【グリーンレタープロジェクト】の代表で『三根孝一緑茶園』の5代目、三根孝之さん。そもそもの始まりは、三根さんと農業支援機関のコーディネーターの方との会話でした。

「今コーディネーターをしてもらっている方と『お茶どうなの?』という話をしていて、自分が就農してから右肩下がりで、売れていない状況が続いている、ということで、『なんで売れてないの』と話したときに、自分の考えとしては、贈答用のお茶がなくなったことが要因にあるんじゃないかと思っていたんです。そしたら、その『贈る』ということをコンセプトに何か自分たちでできることを始めようかと、5年前になりまして。自分たちは、作ることと売ることしか考えてなかったんですが、そこで『贈ってもらうような取り組み』、今までなかった取り組みをしてみたらどうかとアドバイスを受けたんですね。」

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『贈ってもらうこと』をテーマにしよう。では、贈ってもらうために、どんなことが必要だと考えたのでしょうか?

「お茶って、最初に入るハードルが高いと思っています。グラム数だったり温度だったりお茶を抽出する時間だったり、そこがわかりづらいというところがあったので、手に取りやすい形ということで、私達は5グラムでやってるんですけど=お茶一杯美味しくいれていただけるグラム数で、一袋あけたらそのまま急須にいれてもらって、お湯とかもミリ数と時間を書いて、贈ってもらった方が裏を見たらすぐに美味しいお茶がいれられる状態で販売すればいいんじゃないか、ということでこのような形を取りました。」

1回に使う量=5グラムごとの個包装になっていて、16軒それぞれご自慢のお茶と、16軒のお茶のブレンドで、緑茶、釜炒り茶、ほうじ茶、紅茶の4種類。合計20種類が用意されています。

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緑茶も、紅茶も、同じお茶の木からとれる茶葉で作ることができるんですよね。ただ、紅茶に向いている品種のお茶の木と、緑茶に向いている品種の木があるそうですが、、、三根さんの茶園では どんな木から紅茶を作ってらっしゃるのでしょうか?

「和紅茶といって、緑茶っぽいというか日本人にあわせたようなまろやかさ、海外の紅茶だと匂いがきつかったり渋みが強かったりという人でも飲めるような紅茶ということで、うちでは日本の品種を使った紅茶の製造をしています。ただ、今回のプロジェクトに参加している個人農家の中では、紅茶を作るための品種を使っている人もいて、そうやって、自分の得意分野のお茶を出すことが目標というか、私は緑茶が得意だから緑茶を出します、釜炒り茶が得意だから釜炒り茶を出します、ということで一番得意なお茶をパッケージしていますので、どれを飲んでもイチオシのお茶となっています。ただ、贈ることをメインとしているので、自分たちが立って説明すると、緑茶と、違うやつがいいね、ということで緑茶と紅茶とほうじ茶とか。おじいちゃん緑茶好きだから緑茶だけ3つ入れてくださいとか、選ぶ楽しみもあります。」

古くからお茶の産地として知られる佐賀県嬉野市で始まった【グリーンレタープロジェクト】。では、この地域のお茶=嬉野茶の特徴はどんなところにあるのでしょうか?

「鹿児島とか静岡とか八女茶とか代表的なところは、煎茶といって針みたいな形のお茶を作っているんですが、嬉野茶は蒸し製玉緑茶といって、針のようにせずに丸まった形のお茶で、蒸し製玉緑茶の産地としては一番大きな産地になります。煎茶は一番最後に圧をかけて針みたいにするんですが、嬉野茶は最後に圧をかけずに丸みを帯びさせます。嬉野茶はみるめと言って若い葉っぱをつんで作りますので、味が濃いというか、こくがある。そういう特徴がありますね。」

そんな嬉野の茶農家、16軒が参加した【グリーンレタープロジェクト】。『郵送パッケージセット』という商品は、5グラム入りのお茶が3種類、ポストカード、そして、どなたかへ郵送するためのパッケージのセットです。そして その個包装のお茶の袋には、子どもたちの絵がデザインされています。

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「最初は嬉野の子どもたちに募集をかけて絵を描いてもらおうと。自分の描いた絵がパッケージになっていろんなところに送られるってワクワクしないとい?うことで子どもたちに声をかける予定だったんですが、コロナ禍で子どもたちを集めることができず、そこで苦肉の策で自分たちの子どもに描いてもらおうということで、茶農家16人の子どもを集めたら、30何人になりまして、そこで30何人に描いてもらったんです。そのときに佐賀県のアーティスト、ミヤザキケンスケさんに講師として来てもらって絵の描き方のワークショップをして、3歳児から小学6年生くらいまでの子どもに描いてもらいました。お茶をテーマにということで茶畑を描く子もいれば、お茶の花を描く子もいて、いろんなヴァリエーションがあって、選ぶのにも苦労したんですけど。」

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最後にうかがいました。三根孝之さんが、このプロジェクトを通して思い描くヴィジョンとは?

「だから最終的にはこのグリーンレターでどんどんどんどん全国に嬉野のお茶が飛び交うなかで、このお茶美味しいなと思ってくれた方がいたら、そのお茶の裏面を見てもらって、農家の販売サイトとか、家の電話番号を載せていますので、直接その農家さんにお茶が注文できる仕組みにしています。

一概に嬉野茶って言っても広いんですけど、自分にあうお茶が必ずあると思うので、探す楽しみだったり、いれる楽しみだったり、グリーンレタープロジェクトを通して、お茶の楽しみ方をわかってくれたらいいなというか、広まってくれたらいいなというのが願いですね。」

グリーンレタープロジェクトのウェブサイト