今回は、KANA-BOONのニューアルバム【Honey & Darling

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Hidden Story。 語っていただくのは、KANA-BOONボーカル・ギター、谷口鮪さんです。

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Honey & Darling、フルアルバムとしては、4年半ぶりのリリースとなります。実は、谷口さん、2020年10月からおよそ半年間、体調不良によって休養。 厳しい状況を乗り越えて制作されたアルバムです。

「休養期間に入って大好きな音楽にも触れられない時間が続いて、自分としてはいろんな深い悲しみだったりとか、寂しさがあったり、マイナスの状態に落ちてしまっていて。でも、その悲しみとか寂しさを共有する仲間たち、メンバーも含め出会って、自分の中でその悲しみとかそういうものに向き合うことができ始めて、それで自然と生まれていきました。メンバーは本当に親身になってというか、僕は休養中、ずっと家にいたんですけど、そのときもメンバーが家に遊びに来てくれて。なかなか人の傷ついた部分に踏み込むっていうのは難しいことですけど、メンバーはそのタイミングではあくまで、もう10何年の付き合いの友達としてそばにいてくれた、寄り添ってくれたっていう感じですね。」

休養期間に入ったあと、最初にできたのが『HOPE』。"まださみしいけれど、ゆくよ"と歌われていますが、アルバム9曲目のナンバー『alone』はまさに その"寂しさ"と向き合った1曲です。

「すごく大切な友人を亡くしたということもあって、この友人に向けて生み出した曲、そういった歌詞でもあったりするから。でも、実際レコーディングして、自分が改めて聞く側としてこの曲に向き合ったときに、本当に僕だけの歌ではあるんですけど、僕と友人の、僕たちだけの歌ではあるんですけど。でも、これもしかしたら、ここに、この曲に共感を感じたりだとか、自分と誰かを重ねたりする人もいるのかな、なんてことは、思い始めました。」

『alone』は、古賀 隼斗さんのギターソロも印象的です。

「『alone』のギターソロは古賀がソロを弾いてるときに、エフェクターといってギターの音色を変える機材があるんですけど、そのギターの歪み具合っていうのを僕がリアルタイムで足元でつまみを操作しながら古賀がソロを弾いて。ソロの後半に向かっていくにつれてどんどん僕が歪を増していくっていう、そのときにしか録れないテイクっていうのも今回やってみましたね。」

そして、アルバムのリードトラックはラストに収録された『メリーゴーランド』。

「アルバムを通して言っている『生きること』について歌っている曲です。この曲は最後に『生きることはつらいものです/死ぬことすら眩しく見える/それでも日々にしがみついて生きよう』っていうそういう歌詞が出てくるんですけど、唯一、""という言葉を用いている曲ですね。生きることの力強さを描きたかったから、その局面にある死っていうものに、ちゃんと覚悟を持って触れようと思って書きあげて。レコーディングの時に最後に『生きよう/光れ 光れ』って叫びを歌ったときに、すごく自分の生きたいっていう願望に気づけたというか。

これまでは休養期間を経て、いろんな人たちの声を聞いて、姿を見て、自分は誰かにとって特別な人であり、そして、だからこそこれからも生き続けなければいけないっていう責任感みたいなものに突き動かされてやってきたところもあるんですけど。でもそうじゃなくて、自分自身、根本的に生きたいから生きているっていう、そういう気持ちがあるっていうことにしっかり気づけたんですよね、この最後の一節を歌っている時に。だから、このアルバムの中でも最も重要な存在。なので最後の曲に収録してあって。このアルバムのテーマをもっともリアルに、そして純度は高く歌われてる曲かなと思います。」

谷口鮪さんに最後にうかがいました。アルバムをリリースして、いま、ご自身としては どんな感想をお持ちなのでしょうか?

「この日々の、休養期間の1年・1日を生き延びた記録でもあるから。このアルバムが出来て本当に生きることを選んで良かったなと思うし、聴く人にとっても、そういう崖っぷちにいる人であったり、毎日毎日、楽しくて仕方ないっていうわけじゃない人たちにとって、何か重なる瞬間があるものになればいいなって、今、思っています。」

KANA-BOONウェブサイト

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