今回は、ミュージアムショップの企画・運営、グッズの制作などを手掛ける、株式会社EastのHidden Storyです。

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取材にお答えいただいたのは、株式会社East、代表取締役の開 永一郎さん。まずは、なぜ、ミュージアムショップにまつわる仕事をしようと思ったのか?開さんに教えていただきました。

「2000年ごろにサラリーマンだった自分が独立して、仕事を始めるんですけど、もともと、ものを作る仕事をしていたんです。それはときにテーマパークだったり、動物園だったり、ミュージアムだったり、そういうところにあわせてものを作る仕事を19歳のころから続けてきたんですが、独立するにあたって、一番最初に頼まれたのがたまたまミュージアムだったんですね。ひとりだからもちろんそれで手一杯で、手一杯のまま気がついたら20年、ほぼミュージアムの仕事しかしてこなかった、という感じです。」

2009年、開さんは、株式会社Eastの代表となります。

「もうその時点では、まるごとミュージアムショップを、商品を企画してデザインして制作してショップを作ってそれを販売する、というのを、一括して請け負う形ができ始めていたころだと思います。」

Eastが担当した展覧会、例えば、2010年には、国立新美術館で開催された陶芸家ルーシー・リーさんの展覧会を手がけました。

「ルーシー・リーさんの展覧会のときは、当然ながらご本人は亡くなってらっしゃったわけなんですが、まずどんな人なのか、ということを知りたかったので、ロンドンに行きました。実際に生前ルーシーさんと親交のあった方たちにインタビューしてまわって、いろんな言葉をお聞きして、『ルーシーは、白いシャツを着て、白いエプロンをつけて、白い焼き物を焼いていたけど、ご本人が真っ白な洗いざらしの木綿みたいな人だった』みたいなコメントをいろんな人からもらいました。『ルーシーはマジックピープルで、ほんとに会って嫌な気持ちになる人はひとりもいなかったんじゃないかな』とか、生前のルーシーさんを知る言葉を集めて、それをグッズの形にしたくて商品を作ったんです。ポストカード・ポスター・マグネット、という風に持ち帰ることができるグッズを作りました。」

これまで担当された展覧会の中から、もうひとつ、ご紹介いただきます。2020年、東京都美術館で開催された【ハマスホイとデンマーク絵画】。

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「ハマスホイという画家は、室内を描いていることが多くて、登場する人物も後ろから描かれている、背中側から描かれていることが多くて、静かな絵が多い。また、基調となる色はグレーが中心となっていて、でも、無限の色彩を持つグレーを使う画家として、日本人の心を捉えている部分があるんです。グレーなんだけれど美しい、というハマスホイの魅力をどうしたらショップにできるんだろうと考えて作ったのがハマスホイのショップでした。壁紙もいろんなグレーのトーンで貼り分けて、そのために作ったテーブル什器を配置して、それぞれのテーブルに、麻の、リトアニアに直接オーダーしてサイズと色を特注したテーブルクロスを作ってそれをかけて、ショップそのものもいろんな色を持つグレーのグラデーションで、ハマスホイの作品に寄り添うような空間を作りました。」

数多くのミュージアムショップのグッズ制作をおこなってきたEast。グッズを作るときには、どんな想いをもって のぞまれているのでしょうか?

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「世界的に価値のある作品を、仮に160円で販売するポストカードにしたときに、その魅力をそのまま全部そのポストカードに残せるわけはないんです。そこは実際の作品をご覧になった方が記憶している本物の良さとその力を借りて、そのポストカード1枚がその作品に近づけるものになる、と思うんですけど、私達としてはミュージアムグッズがはたしていけたらいいな、という役割をこれからも提案し続けていきたいなと思っています。」

ちなみに、Eastの代表、開 永一郎さんの今のお仕事の原点とも言うべきエピソードを最後にお話いただきました。それは、独立する前、会社員をされていたころのこと。

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「テーブルウェアが好きで、食器、焼き物、窯業がすごく好きで、サラリーマン時代にヨーロッパに行ったときに、窯業を見たくて、ヨーロッパの窯元を見て回ったんです。そのときに産地を回ってもなかなか本物のその国の文化に触れることができなくて、どうしたらいいかわからなかったときに、行った先にミュージアムがあったんですよ。ミュージアムに行くと、本物があったんです、お土産品ではなくて。それで助けられたんです。情報がない時代、特にそうで、ミュージアムの存在に感謝しているし、ミュージアムにふさわしいものってどんなものだろうと考えながらやっているのは、そこにつながると思うんですけど。」

株式会社 EAST ウェブサイト