今回は、Shingo Suzuki、mabanua、関口シンゴ、Ovall、Kan Sano、Michael Kaneko、Nenashi、Hiro-a-key といったアーティストが所属するレーベル、マネージメント、クリエイターチーム【origami PRODUCTIONS】のHidden Story。

今年、設立15周年の【origami PRODUCTIONS】。こちらは、代表の対馬芳昭さんが2007年に立ち上げたレーベルです。対馬さんはそもそも、どんな理由からレーベルを作ろうと思ったのでしょうか?
「もともと僕自身がレコード会社のビクターに所属して、いわゆる洋楽部で海外アーティストをプロモーションしていて、それこそJ-WAVEに音源を持っていったりとか日々していたんですが、そのレーベルの中に日本人のアーティストもいたんですね。そのうち、彼らがやっているジャムセッションに顔を出すようになったんです。日々、そのセッションを観に行く中で、彼らがどんな生活をしていて、どんなニーズがあってっていうのを何度も何度も会話を重ねていきました。一番彼らが生活の糧にしていたのが、いわゆるバックミュージシャンとか、スタジオミュージシャンって言われる職業で、そのバックでやるものももちろん素晴らしいんですけど、ただやっぱり彼ら自身がやってる音楽、彼ら自身のセンスっていうのがすごく面白かったので、これをどうにか音源化して、リリースしたいなというふうに思ったんです。でも、『当時は』ですが、なかなか大きいレコード会社でやるようなヒット性の高い楽曲ではないというところがあって。であればミニマムで自分1人でもいいんでレーベルを立ち上げてみようと。」
2006年、対馬さんは ビクターエンタテインメントを退社。レーベル設立のため、まずは、名刺代わりのアルバムを制作しようと動き出します。
「最初に出したアルバムっていうのが30人ぐらいのバンドっていう。(笑) 架空のバンドではあるんですけど、その当時、ジャムセッションに出入りしていたミュージシャンに片っ端から声かけていきました。こういうコンセプトのアルバム、渋谷のジャムセッションシーンを1枚にしたアルバムを作りたい、ってことでジャム・ナッツっていうバンド名なんですけど、架空のバンドを作って1枚作ったんです。謎の集団みたいな触れ込みで。ウータン・クランとか、アメリカのヒップホップ・アーティストが『メンバーが何人いるか俺たちも把握してない』みたいなこと言ってたのがすごい面白かったので、僕らもそんな形にしてやってみよう、みたいなすごい大所帯バンドみたいな見せ方でスタートしたっていう感じです。」
2007年8月8日、JAMNUTSのアルバム『Nu Jam』が発売されました。その後、このJAMNUTSに参加したミュージシャンのソロアルバムを制作。レーベルの活動が本格化していきます。
ちなみに、origami PRODUCTIONS。この名前は どんな想いで つけられたものなのでしょうか?
「レーベルの名前は、世界に通じる日本語にしたかったっていうのがあって。『富士山』とか『寿司』とか『もったいない』とか、日本語がそのまま海外で通じる言葉ってたくさんあると思うんですけど、『折り紙』もやっぱり日本の文化としてそのまま折り紙と言えば海外の人もわかるっていう言葉なんですね。1枚の紙があれば何でも作れるっていうので、折り紙っていうカルチャーはすごいっていうふうに海外の人もリスペクトしてくれてるっていうのがあって。であれば僕らもその音楽のジャンルっていうよりは、楽器一つあればどんな音でも奏でられるということで、折り紙に近いものを感じたというか、そのアーティストたちの日本語で表すと、折り紙と一緒なんじゃないかということで、origami productionsという名前にしましたね。」
2007年、対馬芳昭さんがたったひとりで立ち上げたorigami PRODUCTIONS。その後、素晴らしい作品を発表し続け、人気を獲得していきました。あーまだいけるよあーまだいけるよ
そんな中、2020年、コロナ禍となり、音楽活動が難しい時期がやってきました。その状況を受け、対馬さんは、音楽シーンに、個人資産2000万円を寄付すると 発表します。

「個人的にも何か恩返しをしなきゃいけないなっていう気持ちが数年ずっとあって、どんなミュージシャンでも素晴らしいミュージシャン、プレーヤーとして実力がある人たちはもっと日本でいろんな人の目に触れるべきだなと思っていたんです。でも、なかなかヒット曲があったり大きなレコード会社に所属してないと日の目を見ない人たちっていうのがいて、そういう人たちに何かを提供したいなっていうのはずっと思ってたんです。そんなさなかコロナの緊急事態宣言になってしまって、僕が何か彼らに還元したいと思っていたんですけど、それさえもできないんじゃないか、これから音楽なんてできないんじゃないか、みたいなことになってしまって。例えば楽器を売りに行こうかとか、なんかそういう話を、ミュージシャン同士でし始めたんで、これは本当にまずいぞっていうことになって、たまたま自分に余裕があったんで、少しでも手助けをしたいなっていうことで寄付をしたっていう感じですね。 」
今年で設立から15年。origami PRODUCTIONS、今後のヴィジョンについても教えていただきました。
「Ovalのメンバーとか、昔からいたアーティストもそうなんですけど、途中から入ってきたKan Sano、Hiro-a-key、彼はNenashiっていう名義でもやってるんですけど、それからMichael Kaneko。やっぱりどんどん良いアーティストがいっぱい出てくるので、これからアーティストをもっともっと増やしていきたいなっていう気持ちはすごくあるのと、あとは今、NFTとかメタバースって言われる言葉がすごく話題になってますよね。音源の価値を再定義するというか、古い音源であってももう一度新しい世代の人たちに聞いてもらうためには、デジタルでそうやって新しい価値を作っていくってのはすごく重要なことだと思っているので。レーベルとしてはそういうNFTなんかにも力を入れていきたいなというふうには思ってますね。」
対馬芳昭さんに、最後にうかがいました。日本のミュージック・シーンについて、いま、どんなことを感じてらっしゃいますか?
「日本の音楽シーンって実はすごく宝の山なんですよ。昔からすごくいい音源をたくさん作ってるんですけど、なかなか世界に広がっていかなかった。ただやっぱりインターネットがこうやって普及して定着していった中で、例えば日本だとシティポップ・ブーム。これが世界中で起きていたり、あとはアジア全体でいうとやっぱり韓国のアーティスト、BTSとか世界中で話題になったりとか、エンタテイメントに垣根がなくなってきたっていうのは、やっとそこに立てたな、みたいのがあって。こうなってくると本当に変に『日本の音楽は日本でしか売れないから』なんていうふうに自分たちで閉鎖的にしちゃってた部分もあるんですけど、海外の人たちは今すごく日本のカルチャーにより興味を持っているので、ここからどんどんどんどん世界に広がっていくことは間違いないんじゃないかなと思ってますね。」