今回は、使用済みの蛍光灯や道路のトンネルで使われていた低圧ナトリウム灯、テレビのブラウン管などをリサイクルしたガラスを使い、新たなものづくりを進めるガラス工房、STUDIO RELIGHTのHidden Story。
事業を統括するゼネラルマネジャー、田口貴将さんにお話をうかがいました。

石川県金沢市にある【STUDIO RELIGHT】は、株式会社サワヤが手掛けるガラス工房です。
サワヤは1974年の創業以来、電気工事や照明器具の販売などをおこなってきました。そして、あるときこんな課題に気づきます。
「創業当時よりうちの会社は電気工事をやっていて、その電気工事をするなかでどうしても廃蛍光灯というものが出てくるんです。微量ながらも蛍光灯には水銀が含まれているにもかかわらず埋め立て処理されているという現状を知りました。そこでうちの会長が『それは土壌汚染につながるので、いかがなものなのだろう』と。だったら自分たちでやろう、ということになったわけですね。まずそこから蛍光灯を処理する工場の設立から始まるんですけども、その際に無害化する機械もなかったので、そもそも機械から開発していなかければならない、ということがあったんです。でも、やるなら徹底的にやろうということで仕事をしていたら仕事が増えてきたという。」
廃蛍光灯をリサイクルする工場が設立されたのは、今から22年前、2000年のことでした。

「蛍光灯、もちろんご覧になったことはあると思います。例えば、40ワットとか直管のストレートの蛍光灯=よく会議室なんかにあるもの、これは一番量が多いんですが、両端にアルミですとか真鍮とかいろんな素材がついていますので、それを適正にはずさなければならない、という工程もあります。いろんな素材、できる限り分別しろと、ということで分別を進めた中で、最終的に中の水銀など有害な物質を取った後、ガラスの部分が残るんですよね。そのガラスをどうしうようか?ガラスだから溶かせば何かできるだろう。そこから始まったのがSTUDIO RELIGHTですね。」
2003年、【STUDIO RELIGHT】をオープン。しかし、当初はリサイクルガラスから何を作ればいいのか?そんな迷いがあったそうです。
「環境にやさしいガラスがあったとしても、それで何を作ればいいのかというのが一番むずかしいところでしたね。私たちのような職人がハンドメイドでグラスを制作すれば1500円とか2000円になるんですけども、安価なショップにいけば、数多くのものが安く販売されています。なので、こうなったら誰もやってないジャンルのガラスをやるしかないなと思いました。あと、蛍光灯の処理で出てくる量があるので、ある程度、量を使えるものを考えたときに、建材、建材のアイテムといえばオーバーかもしれませんが、建築で使えるような装飾ガラスをやってみようということで、発想を変えてみましたね。」
【STUDIO RELIGHT】では、内装、照明、インテリアなど さまざまなアイテムをオーダーメイドで手がけてきました。なかでも、田口貴将さんが『忘れられない』と話すのは東京・六本木にある焼肉屋さんからのオーダー。
「一番胃が痛かったのが六本木にある焼肉屋さんなんですけど、そちらの焼肉のガラス天板を制作したときです。焼肉なので真ん中にロースターが入って丸く焼くところが抜けているじゃないですか、それ以外の部分、食事をするテーブルです。ガラスのテーブルはそれまでも制作してきましたが、そのお店の使用するガラスはテクスチャーがいろいろ指定があって、天板だけで6500あるんですけど、6メートルと50センチということですね。それを3等分するんですが、その柄をつなげてほしいという依頼でした。分割するのに模様はつなげてほしいと。もちろん焼き肉を焼くので真ん中に大きな穴があいているんですが、ガラス天板の真ん中に大きな穴 、450ファイの穴をあける、という仕事をしたときが一番緊張感がありましたね。」
田口貴将さんに 最後にうかがいました。今後のヴィジョン、どんなことを思い描いてらっしゃるのでしょうか?
「いま使っているのが蛍光灯、低圧ナトリウム灯、あとテレビのブラウン管なんですが、今後、適正な処理をしなければならないガラスってもっと出てくると思うんですよ。そういったガラスにも積極的にトライしていきたいと思っています。難しいんですよね。みなさん、ガラスだから溶かせばいいだろうと思うんですが、組成だったり色だったり、色もいろんな色を混ぜちゃうとわけのわからない色ができたりします。そういった管理も難しくて。
あと、数十年前からワインブームがあってワインが消費されていますが、そのあと飲みきったガラスびんがどうなってるか?その飲んだワインの瓶はどの国のどの工場で作ったのか、どんな組成なのか、そこまで追跡できないんですよね。そうなると結局、溶かして再利用できないんです。ガラスである以上、またガラスに戻すのが一番のテーマだと思います。我々がすごくこだわっているのが100%のリサイクルガラス。環境に配慮したものづくりをして納品しますが、数十年後、また廃棄するときが来ると思います。そんなとき我々が作っているものは100%リサイクルであれば、また溶かしてあげればまた違うガラスとして再生できる、というところに、一番、ガラスの魅力を感じてます。」
