今回は、マカロニえんぴつのニューアルバム【ハッピーエンドへの期待は】のHidden Story。
■通常盤[CD]TFCC-86799 / ¥3,300(税込)
語っていただくのは、マカロニえんぴつヴォーカル・ギターのはっとりさん。アルバムの1曲目は、タイトルトラック『ハッピーエンドへの期待は』。冒頭、アカペラで始まります。

「ずっとアカペラ始まりやりたかったなっていうのがあるんですよ。それこそクイーンもそうですし、僕が好きな洋楽はコーラスがうまいバンドが多くて。このイメージはエレクトリック・ライト・オーケストラ、通称E.L.O.っていうバンドが僕大好きなんですけど、 E.L.O.がワイルド・ウエスト・ヒーローだったかな?その曲の中盤で急にアカペラだけでサビを歌うところがあって、そこがすごくぐっときてたんですね。そういったようなアプローチをいつか自分のバンドでもやりたいなってのは思ってて。せっかくやるんだったら冒頭でやった方が引きは強いかなというか、インパクトがあるかなと思って。」
マカロニえんぴつのナンバー、アルバム冒頭のアカペラをはじめ、コーラスが多用されています。
「コーラスも楽器の一種だと思ってまして。大きく分けるとコードはメジャーとマイナーっていう、二つで進行していくんです。それで十分なんですけど、そこにmaj7とかadd9とか13thとか、何か響きが結構複雑になってくるんですよ、この数字が増えていくと。僕もよくわかってないんですけど、その響きの感じを 僕はコーラスでするのが好きで。何だろう、やっぱ楽器じゃ出せない響きがあるので、人間の声っていうのは。スタジオ音源では自分が全部コーラスやってるんで、 当然混ざりはいいんですけど、いかんせん、ただの3度上とか5度上とかいうオーソドックスなメロディーラインじゃないから、結構複雑なんですよ。それを自分だからはまるけど、ライブとかでメンバーにやってもらうとメンバーもすごく苦労していて。難しいラインだから。(笑) 混ざりが良くなるまで練習すごい時間かかったりします。でも僕は反省しないでいつも難しいコーラスラインを考えてしまいます。」
そして一転、アルバムの7曲目は、ギター弾き語りの『キスをしよう』。

「これは、姉の結婚式で頼まれたんですね、『歌ってくれ』と。『ああ、いいよ。back number歌おうか?』って言ったら、『いや、作ってくれ』って言われたんで、一応タイアップですね。クライアントが姉だったという。 結婚式のために書いたんですけど、歌ったら会場にいた人のリアクションが良かったというか、 一番リアクション薄かったのがその頼んできた姉貴だったっていうね。(笑) 姉の旦那の方が感動してました。」
はっとりさんにこんなことも聞いてみました。作詞の際、大切にしているのはどんなことなのでしょうか?
「あるあるを書いても駄目だと思ってます。そんなのはあえて歌わずともいいというか、上部をなぞるあるあるよりは、そのちょっと1枚剥がした下にある気づき。知ってたんだけど、そう言われると確かに、みたいな。薄々わかっていたんだけど、言葉に変換したことはなかったわっていうような気づきを探したい。自分も気づきたいし、聞いた人にも何かはっとしてほしいというか、そういう想いはいつも言葉を探すときには意識してますね。 」
アルバム10曲目は、サウナ、をテーマにしたナンバー、『TONTTU』。なにかをカリカリこするような音がします。
「ギロみたいな音が欲しかったんですよ。ギロってわかりますか?洗濯板みたいなね、ギザギザになってる断面を擦って、ガリガリっみたいな。でも、ギロがそのスタジオになかったので、マジックペンのキャップの後ろがギザギザなペンを見つけて、それを鉛筆で擦って、それっぽい音を出したみたいな。
そのために作られた楽器ってその音を出すプロなんですよね。だから言ったら、歌を入れるときに、プロのコーラスの人を呼んでいるみたいな。そしたらスッゴイ上手なコーラス入れてくれるけど、みんなで合唱みたいなときに全員がうまい人だと、ちょっと雰囲気違ったりしません?うまくなりすぎちゃってまとまり良くなりすぎて。だから、普通の素人の人を呼んだ方がワーッて歌ったときのずれの感じが人数感出ていい!みたいな場合があるじゃないですか。それと同じように、楽器もその音を出すプロを使うと、あまり意外性はないというか。そうそう、この音この音、ていう、面白さはその先にないっていうか。だからその音を出すために生まれてきたものじゃない素人を使うというか、楽器も。」
アルバムのラストに収録されたのは、『mother』。この曲でアルバムを締めくくった理由、教えていただきました。
「今回、すごい気づきがある主人公がたくさんいるんですよ。愛を知った主人公がいたり、優しくなれた主人公がいたり、信じてみようと、自分の殻を破った主人公がいたりとか、ちょっと強くなってるんですね、自分の中の歌が。昔の作品に比べると強くたくましく、頼もしく優しく。だけどやっぱり孤独を愛しているし、自信がないし、誰かの言葉や、誰かの存在に寄りかかっていたいっていう本質がやっぱり自分の歌にはあるのかなっていう。それがまざまざと出てるのがやっぱ『mother』だったので。弱い人物で最後は終わらせたいなというか。やっぱり自信がないんだなぁ、マカロニえんぴつって。マザーに出てくる人物がいじらしくて、自分に似てるというか、それで終わる安心感っていうのもありました。」
