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今回は昨年、ポーランドで開催された第18回ショパン国際ピアノコンクールで 2位入賞!反田恭平さんのHidden Story。

5年に一度開催される ショパン国際ピアノコンクール、出場資格は30歳以下。27歳の反田恭平さんにとって、昨年のコンクールが最後のチャンスでした。

「ショパンコンクールを受けようと思ったのが6年前くらいかな。でも、12歳のころ、15年ほど前に存在は知っていました。ただ、存在を知っているのと受けようと思って準備するのはぜんぜん違うわけでして。その上で、ショパンは大好きなんだけど、好きと得意は別問題で、出るからには優勝を目指すわけですけども、優勝を目指すのであれば僕はポーランドに行くべきだなと思いまして、留学先をロシアからポーランドに変えました。生活を変えたわけです。そこから、ざっと2010年、2015年の参加者800名が何を弾いたか、正の字書いて調べていって、この人は何次予選でこの曲を弾いて、何人今回の回で弾いたのかみたいな。それをやったことで浮き彫りになる結果があって、その中から自分にあう曲を見つけだして、コンサートで実際に弾いてあうのかどうかを試していったここ5年くらいでしたね。」

反田さん、受賞後のインタビューで、『髪型や体型にもこだわった』とお話されています。髪型については、一見して日本人だと分かってもらうこと、自分のことを認識してもらうことがポイントでした。

「先生から言われたのはステージに出てくる瞬間の格好を作れ、ということでした。じゃ、日本だし、侍かな、みたいな単純なノリで。ただ、髪を切るところにも問題があって、ロシアで先輩が美容師さんのところに行って『前髪3センチ切ってください』って言ったら、前髪3センチだけ残って帰ってきたんですね。しかもその彼、僕くらいの年だったんですよ、27、28歳くらい。27、28歳の前髪3センチってやばいですよ、15歳くらいだったらわかるけど、三十路手前の、3センチ、、、ねえ(笑)。こりゃ切れないなと思って、必然的に伸びていって、だんだんくくるようになったわけでした。名前を覚えてもらうよう、あの侍は誰と認知してもらうためには髪型が必要でしたね。」

そして、『ふくよかな音を鳴らすために、体型も変えた』と聞きますが、この点についても 詳しく教えていただきました。

「僕の先生がロシア人の先生で、御年85、86歳くらいなんですけど、すごくお腹が大きいんです。どこでシャツ作ってんの?っていうくらいお腹がすごい。そういう先生の演奏ってふくよかな音が出るんですよ。これが非常に面白い結果論なんですけど、脂肪分の多い人の演奏というのはより深みがあるというのがあるんです。逆に気になったのは、筋肉質になったらどういう音が出るのかなと疑問に思って、周りにマッチョな人がピアノを弾いているという現象がなかったので、自分でやってみようと。ダメだったら落とせばいいので、自分で1年前か2年前に、上質な筋肉をつけたかったので、トレーナーつけてバーベルとかやってみたんです。そうすると、ささいな差なんですけど、自分で演奏してて音が硬質、硬いというか、そういう印象を受けたんですね。それは打鍵のスピード、筋力の伸び縮の速度があがったのか、重みもそうなのか、そういう印象が出てきたので、これはショパンにあわないなと思ったので、それならばと、徐々に1年かけて落としていくというか、自然に、最低限の運動をしていけばいいくらいかなと思って落としていきましたね。それくらい差があるんですよね、このピアノの世界には。0.0何ミリの世界で指をコントロールして動かしているので。」

筋肉は落として、脂肪分を多くしてのぞんだ、というお話でしたが、どっしり座るのが大事、ということで、足の筋肉は 落とさなかったそうです。反田さんが 万全の態勢を整えて挑んだ、ショパン国際ピアノコンクール。書類審査のあと、7月に予備予選。そして、10月に、一次審査、二次審査、三次審査、さらにファイナル。合計6つのステージで争われました。

「こんなに大変なのかと、人生で一番メンタルの浮き沈みが激しい1か月でした。だって一次審査が終わったところで先生に、『棄権を視野に入れている』というメールを長文で打って、もうあと送信という状態だったんですけど、まあ一回寝てみようと思って、寝て、そしたら次の日、いけるかもとなって全部削除してって感じでした。」

ショパン国際ピアノコンクール、ファイナルで演奏する曲は、ピアノ協奏曲の第一番、または 第二番。オーケストラと一緒に演奏されます。

僕は迷う余地もなく『第一番』を演奏しました。というのも、この世に存在するすべてのクラシックの作品のなかで、一番好きな作品で、すごく自分に近い作品、みたいな。第1楽章は、ちょっと厳格なところもあったり、ころって変わる、人には見せないような可愛らしいシーンとかも出てくるんですね。一楽章は、ほんと青春みたいな感じなんです。ですので、このコンチェルトを弾きたいがために、しかも、40分あって全部好きなんですけど、その中でもとりわけ大好きなのが20秒くらいなんですよね。一楽章のあるシーンなんですけど。それを弾きたいがゆえにコンクールを受けたのもあるし、それをあの場所で弾くのが夢だったし。」

反田さんがとりわけ大好きだという20秒ほど。YouTubeで公開されている ファイナルの演奏でいうと、18分30秒すぎからの部分です。ぜひ反田さんのコンクールの動画もチェックしてください。

さあ、今日は、反田恭平さんに第18回ショパン国際ピアノコンクールについてお話をうかがいましたが、ショパンの音楽を演奏する上で大切なこと、反田さんはこう考えています。

「最終的には自分を信じること、で、2つ目に、鳴らしている空間に身を委ねること。これって結構難しいんですよ。でも、これができたのが、予備予選とファイナルだったんです。お客さんの反応もありますし、家で練習しても予想がつかないことがライヴだと思うんですよね。お客さんにどう聞こえているか、審査員にどう聞こえているのか、今時分が弾いている側として、自分が求めているショパンなのかということをコントロールしながら、あとはもう音に身を任せる。全部身を任せる、というのがショパンを一番きれいに弾けるんじゃないかなと。」

反田恭平さんウェブサイト