今回は、魚のサブスクリプションサービス【Fishlle!】のHidden Storyです。 

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「日本近海で水揚げされた天然魚を水揚げされたその日のうちに加工して、毎月、サブスクリプションという形でお届けするサービスです。最大の特徴が『未利用魚』と呼ばれる、味には全く関係のない理由で規格外とされてしまう魚を漁師さんから買付させてもらっているところで、そういう魚にも付加価値をつけて美味しく食べていただける、ということを目指しているサービスです。」

お話をうかがったのは、【Fishlle!】を手がける、株式会社ベンナーズの代表、井口剛志さんです。

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先ほど出てきた『未利用魚』。これについて、もう少し詳しく解説いただきました。

「例えば、マイナーすぎてあまり知られていないような魚、漁師さんたちは食べるんだけど市場には出回らない魚。あとは加工がしづらい、例えば骨が複雑に入っているとか、背びれに毒ばりがあるとか、そういった理由で加工がしにくい魚。または、水揚げ量が少なすぎてひとつの規格にならない、逆に、大量にとれすぎて市場に出しても相場がつかない魚。これらを総じて、未利用魚と呼んでいます。我々が普段食べる魚は種類が限られているので、それに当てはまらない魚がどうしてもたくさんあって、そういうものは価値がつきにくいのが現状ですね。」

井口さんはこうした未利用魚がたくさん存在する、という課題に気づきます。ならば、未利用魚を食べやすいサイズにカットし、さらに味付け。これを特殊な技術で瞬間冷凍して販売しようと考えました。

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「魚って肉に比べて食べにくい、料理のレパートリーが少ない、というイメージがあるみたいです。実際にアンケートを行ったんですけども、『魚を料理するのは難しいですか?』という問いに対して、82%の方が非常に思う=調理するのは難しいと回答されまして、これはまさに魚離れが進んでいるというのを顕著に表しているなと思いました。でも、みんなお寿司は好きですよね。人は魚を嫌いになっているわけではない。ただ、魚を料理することから離れているという意味での魚離れであれば、魚を料理しやすくすればそこの課題は解決できる。ということで始めたのが、下味をつけた状態でひとつひとつ個包装して瞬間凍結する、という方法ですね。」

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未利用魚を味付けして瞬間冷凍したミールキット【Fishlle!】。煮物用タレ漬け、ハーブオイルコンフィ、中華用カルパッチョなど味のヴァリエーションは現在13種類。鮮度を大切にしているので、水揚げされた魚を見て、その日のうちに その魚にあわせた加工が行われます。そして、調味料やハーブには、こんなこだわりが。

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「使用する調味料にも非常にこだわっておりまして、ハーブオイルコンフィのハーブも海外産ではなく福岡の八女で持続可能な農業をされている農家さんから仕入れたりとか、そういうところまでこだわっております。調味料の世界もスポットライトが当たるのは大きなメーカーさん、という傾向があるなと思っていて、それ以外の小さい、スポットライトが当たらない生産者さん、メーカーさんもものづくりにちゃんとした想いを持ってのぞまれていて、すごくいい商品を作っている方が日本全国にたくさんいらっしゃるなと。そういう方々の調味料を使うことで彼らにもスポットライトが当たるといいなと思っているので。」

【Fishlle!】は、今年3月に本格的に販売をスタート。それから9ヶ月ほどになりますが、未利用魚の活用は、どのくらい進んでいるのでしょうか?

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「『いら』という魚がいます。南方系の魚でカラフルな見た目で、正直あんまり美味しくなさそうな魚なんですけど、食べてみると非常に美味しく、上品な白身でクセもない魚です。ただ、我々が扱い始めたころはそもそも売れる魚ではなかったので、漁師さんの扱いも丁寧ではなかったんですけど、我々がすごい量を買うようになったので漁師さんも丁寧に扱ってくれるようになって、さらに、それなりの価格がつくので漁師さんも嬉しいという、ウィンウィンの関係が築けてきたなという風には思ってます。」

最後にうかがいました。井口剛志さんの 今後のビジョンとは?

「現状、我々はすごく小さい工場一箇所でやっているんですが、そうなると扱える魚の量も限られているので、もうちょっと規模を拡大して、より多くの未利用魚を未利用魚でなくすことができればと思っていますし、福岡以外でも未利用魚の課題は顕在化しているので、福岡県外にも出ていって、そういったところの未利用魚も価値化していければなと思っています。まだまだ始まりの始まりだと思っています。」

Fishlle!WEBサイト