今回は、毎年5000点ものエントリーがある、というお米のコンクール、【米・食味分析鑑定コンクール 国際大会】のHidden Story。

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このコンクールを主催するのは、大阪に本部のある米・食味鑑定士協会。会長の鈴木秀之さんが、この協会を立ち上げた理由、その背景には、お米の価格の調整などをおこなっていた食糧管理法、いわゆる食管法が、1995年に廃止されたことがありました。

「これは僕が、食管法がはずれてちょうど3年目くらいに熱海の三島の駅で、関西の女性5人くらいで井戸端会議やっているのを聞いて。『最近、コシヒカリやと思って安い値段で売ってて買ったらとんでもない。私50年生きてて、あんなまずいコシヒカリ初めてやわ。』と言うてる人がいて。そのなかで、お米屋さんは古い米と新米をまぜて売る習慣があると。『私は生産者の親戚から買って一年中美味しいお米いただけるんやわ』という、3人のそれぞれの意見のなかで、ワインのソムリエのようにお米も鑑定する人がいたらいいのにね、と会話しているのを聞いてね。そういう市場のなかの種を拾い上げてニーズにしていこう、これはいいことやねと思って、米・食味鑑定士協会が発足したと。」

98年、米・食味鑑定士協会が発足。翌年、最初の【米・食味分析鑑定コンクール】が開催されました。

「一番最初は340くらいの出品検体でありました。今は5000くらいやから、今思うと340というのは多くはないと思うんやけどね。中国は今、31検体、中国代表で出品しますって言うてきたからね。国際大会と名前がついたのは、12年前やね。やっぱり、台湾、アメリカ、中国から出品したいという人がおったから、国際大会を12年前からスタートきっていったと。これがひとつ大きな広がりを見せてきたなと。特に中国が動いたのが一番大きいかもしれんね。去年からうちと同じ方法で、鑑定士協会と近い名前で、うちとも連携して、中国大会第一回開いたから。中国の米の生産量は世界一やからね。日本の20倍。日本は700万トンくらいの生産、消費量やけど、向こうは1億4500万トンくらいあるから。」

そして、本家【米・食味分析鑑定コンクール】へも中国をはじめ 台湾、アメリカなどから お米が出品されています。

「僕が思っているのは、スマートフォンで電子決済できて情報も簡単にとれるとなると、お米も日本の加工食品のように世界に流通する時代がくるとすれば、コンクールで評価されたものを買いたい、というのが世界の人の願望でしょうな。」

99年開催の初回から数えて、第23回の【米・食味分析鑑定コンクール】が今月27日に開催されます。会長の鈴木さんによると、今年のお米は、いいものが多い、ということ。

「農家さんも一生懸命選んで出してるのかなと思って。今年、米価がどーんと下がってしまって農家さんが大赤字みたいな状態の値段やから。それやったら表彰受けようと思って、農家さんも危機感を持っとるということは確かですわ。来年になったら米がまた上がるという保証がないから。この値段で引きずってやられたら、赤字やからね。去年からコロナという中で外食産業の需要が一気に減ってしまったから、それが20万トンくらい消費が落ち込んだ理由なんじゃないかなと。そのお米がだぶついたためにJAさんが一気にドーンと値段を下げよった。大型農家さんやったら、会長500万から赤字やで、と言うてる農家さん、たくさんおりますわ。大きな農家さんのほうが大きな打撃を受けたんやね。こんなんでは若い子に農業継がすわけにはいかへんで、という声が出てきとるから。食料自給率のなかで米だけは100%自給できる。そういうものについては、国がコントロールするか、もしくは補填するかしないと、若手農業者、継ぐ人がおらんからね。」

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そんな中、いいお米には高い付加価値をつけて評価していこう、というのが、今日ご紹介しているコンクールです。鈴木秀之さんに、最後にうかがいました。ここまでの道のり、振り返って、どんなことを感じてらっしゃるのでしょうか?

「ここまでこれたのが不思議ですけどね。小さな地元の大会から始まって、今やうちも協力しとるけど、コンクールは全国何十箇所、おお流行りやね。昔はうちだけやったのが今では数十箇所やってますわ。やっぱりコンクールのなかで農家さんにイノベーションちゅうか考え方をあらためてもらって、安全でおいしいものを追求してほしい。日本の米が一番美味しいという慢心をもったらいかんよと。必ず、中国、台湾、ASEANの国でも、いいものを作ったら評価される制度が日本にあったら出品しようという意識がどんどん出てくるんじゃないかと思います。だからあと5年から10年経ったらあらゆる国が参加する姿を想像しとるけどね。このコンクールというものは、本当に日本の米作り農家さんにとって大きな宝のイベントやね。農家さんが大きく人としてのブランドができるのがこのコンクールです。あとは海外をどう巻き込んでいくのか、というとこまできたと。今年の世界最高のお米は日本の誰々だったと報道する時代がくるでしょうな。」

米・食味鑑定士協会

米・食味分析鑑定コンクール