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今回注目するのは、山梨県笛吹市で生まれた、その名も【ふえふきマスタード】。このマスタード、広く流通しているマスタードとはちょっと違います。どんなところが違うのか? そして、どうやって誕生したのか?そのHidden Story、ご紹介します。

【ふえふきマスタード】を考案したのは、風間早希さんと八木優彰さん。おふたりとも、2016年に、地域おこし協力隊として山梨県笛吹市に着任しました。

「ふたりで考えて、農産物加工をしていきたいなという想いがありました。笛吹市の特産品は、桃やぶどうなんですが、やっぱりジャムとかだと先輩方がすでに作られていてそこにはかなわないなというので、違う目線で特産品を作りたいと考えていたときに、たまたま『農産物加工セミナー』に行きました。そこで講師の先生が『山梨県はワインが有名でフランスに似ているところがあるよね』というお話をしてくださって、その中で、フランスのある地域にはマスタードが有名なところもある、という話があったんです。それがきっかけで、自分たちもワインとかぶどうが有名な笛吹市でマスタードが作れるのでは?ということで始めました。なんでフランスではマスタードが有名なのかなと調べたところ、歴史をたどると、からしなの種に未熟なぶどうの果汁をまぜたのが始まりだった、という説を見つけて。だから、ぶどうやワインの有名なところがマスタードの産地なんだなと気づいて。」

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では、『からしな』は どうやって手に入れたのでしょうか?

「からしなについて調べていくと、川でも自生しているような植物だと気づきまして、それなら自分達でも作れるんじゃないかということで、畑を借りて、栽培を始めました。最初は500平方メートルくらいからですね。自分達が最初に種をまいたところも長年使われてなくて草だらけのところを使用したんですけども、耕作放棄地や遊休農地を持っている農家さんにも、栽培が簡単だということで買取りも含めて一緒にやってもらてます。去年ですと、全部で5000~6000平米をカラシナ用で土地を活用してもらっています。」

そして、もうひとつの原料、未熟なぶどうの果汁。未熟なぶどうに限るのは、どんな理由からなのでしょうか?

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「酢の代用として使うんです。マスタードってからしなの種と酢をねったものなんですが、普通のぶどうを使うと糖度が高くて酸味が全然ない状態なんですよ。そうなる前の酢と同じくらいの酸度のぶどうを使って、それでマスタードを作ることが必要です。ぶどうを栽培する過程で間引く作業が必ずあるんですが、糖度があがってなく酸味が強い段階の粒を落とす。最初のころは農家さんにその粒を集めてもらって果汁にしてました。今は、自分がマスタード屋さん兼ぶどう農家もやっていて、自分の畑から農薬もかからないようにして収穫してマスタードの材料として使っています。」

ほかのマスタードとは違う、【ふえふきマスタード】ならではの特徴について風間さんに教えていただきました。

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「普通のマスタードは、塩や砂糖で結構味付けがされているんですが、自分達のマスタードは極限までそれをしないマスタードなので、いろんな料理で味のじゃまをしないのが特徴です。熱を加えると香りが飛んでしまうので、料理の仕上げにちょっと入れていただければと思います。一番人気なのが、【ふえふきマスタード】のプレーンなんですが、これはシンプルな材料を使っていて、食塩も使わず、素材の味を感じられるマスタードになっています。あとフレーバーマスタードで、山梨県産のすももを使った『すももフレーバー』や山梨県産のワインパミスを使った『ワインフレーバー』もあります。ワインパミスはワインを作るときにしぼりかすができるんですが、それをペースト状にしたものを混ぜてます。」

【ふえふきマスタード】は、今年、笛吹市に直営店をオープン。そこではマスタードのほか、ピクルスやサンドイッチも発売されています。地域おこし協力隊を経て、見事にマスタードの製造販売を事業化した風間早希さんと八木優彰さん。おふたりに 最後にうかがいました。これからの目標はどんなことでしょうか?

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「笛吹市といえば、桃、ぶどう、プラスそこにマスタードが入れるような名物にしていきたいなというのと、山梨県には美味しいものがたくさんあるので、マスタードを通じて美食の町がアピールできるような、そんな事業にしていきたいです。耕作放棄地の問題もそうで、たくさん植えてもらっても、消費する先がないと事業が広がっていかないので、3月にアンテナショップをオープンしたように、これからもマスタードを活用したものをみんなに食べてもらって、どんどんマスタードを消費してもらって、耕作放棄地を減らしていくということをいっしょにできたらいいな、と思っています。」

ふえふきマスタード ウェブサイト