今回、注目するのは福岡県南東部、人口2万7千人ほどの うきは市にある会社【うきはの宝】。代表取締役の大熊充さんにお話をうかがいました。

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「うきはの宝株式会社は、福岡県うきは市という農村にある、75歳以上のおばあちゃんたちが働ける会社です。飲食店のばあちゃん食堂や、農産物の加工品といった食と料理を商品化したものを販売しております。」

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代表の大熊さん、そもそも、なぜ、こうした会社をやろうと考えたのでしょうか?

「我々の暮らしているふるさとなんですけれども、福岡県うきは市は農村で、超高齢化が進む町です。何かこの地域に貢献したいと思っていたんですが、なかなか前に進まない状況をかなり長い期間過ごしました。結局、なぜ前に進まなかったかというと、対象である人が明確に浮かんでいなかったんです。私自身の原体験として、おばあちゃんに救われて社会に戻ってきました。20代のころにバイクで事故をおこしたあと4年ほど長期入院することになり、入院中、精神的にもまいっていたときに、おばあちゃん達に助けられながら退院することができて、社会に戻ってこれたというか、そういったところでおばあちゃん達に恩返しをしたいということで始まってます。」

その後、大熊さんは3000人以上の高齢者のみなさんに聞き取り調査をしました。その結果、『75歳以上のおばあちゃんが働く場所を作ろう』と決意します。そして、2019年に【うきはの宝】を設立。

では、具体的におばあちゃんたちはどんな仕事をされているのでしょうか?

「やはりおばあちゃんたちの特性をいかした、得意な商品とサービスしか行わない、ということを掲げています。それは何かというと、おばあちゃんたちに聞き取りをすると、社会に出たことがないおばあちゃんもたくさんいらっしゃるんですよ、農家しかしたことないとか、その中で、何が得意なのかと聞いていくと、料理、それと食。この2つはおばあちゃんたちも自信持ってできる、ということでこういった事業をやっています。ひとつは飲食店、ばあちゃん食堂というのを運営しております。

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コロナウイルスの影響で、いま飲食店はいったん休業していますが、ばあちゃん食堂から生まれた食をおばあちゃんたちとともに加工品として販売する食品加工業の部門も作って、『万能まぶし』という万能の調味料、料理や惣菜などにまぶして食べるかつおぶしベースのまぶしを販売しました。

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そして今現在もおばあちゃんたちと新商品をどんどん開発しているので、今度はばあちゃんにじいちゃんも加わって、じいばあスイーツというものも開発しております。」

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福岡県うきは市で、75歳以上のおばあちゃんたちが働ける会社として誕生した【うきはの宝】。実際、会社はどのような仕組みで運営されているのか、代表の大熊さんに教えていただきました。

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「私が経営者で、うちは『75歳以上のおばあちゃんが働ける会社』と言っていますが、実際は75歳以下のおばあちゃんとおばちゃんも来ているんですよ。どういう仕組みかというと、75歳以上のおばあちゃんをばあちゃんと呼んでいて、75歳以下のおばあちゃんとおばちゃんをばあちゃんジュニアと呼んでいます。そこに若手のスタッフがサポートにはいるようなばあちゃんチームを作っています。なぜこういう形にしているかというと一過性で終わらないようにです。おばあちゃんもいずれは引退するときがきますので、そこは後輩たち、75歳以下のばあちゃんジュニアたちが今もチーム内に入って、次の世代のリーダーとして引き継いでいく、若手のスタッフもときが経てばばあちゃんジュニアに繰り上がって、その後ばあちゃんになっていく。僕が死んでも続く事業、ということでこのような形にしています。」

現在は 12人ほどのおばあちゃんと事業をすすめる【うきはの宝】。

この活動に注目が集まり、すでに隣町での活動や、他の地域での同じような取り組みのサポート。さらに、企業と連携して、この仕組みを全国へ広める動きもスタートしているそうです。

そんな【うきはの宝】、大熊充さんに最後にうかがいました。この会社を通して、メッセージとして伝えたいのはどんなことでしょう?

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「僕のメッセージとしては、この国は超高齢化社会に突入していっていると思うんですが、いま、若い子が右肩におじいちゃん、左肩におばあちゃんをのせて苦しい、という構図がみなさんの脳裏に浮かんでいるので、この構図を僕はひっくり返したいなと思っています。それは、いまはおばあちゃんたちが働ける会社、ということですが、その中に私達のような30代、40代のスタッフ、社員が含まれていますので、多世代で協力して働くことで乗り越えていこうと。『多世代型協働』と呼んでいるんですが、多世代型協働モデルを全国に広めていきたいと思っています。超高齢化地域だったとしても、心の豊かさ、経済の豊かさは多世代で協力すれば作れるだということを示していきたいと思っています。」

うきはの宝ウェブサイト