20210716h03.jpg

今回注目するのは、蚊帳の素材を使ったふきんです。蚊帳、、、昭和の中頃までは多く使われていました。夏、就寝する際に、蚊などの虫がこないように部屋につるして使うモノです。その蚊帳の素材を使ったふきん、その名も「白雪ふきん」が人気となっています。奈良県にある株式会社白雪の代表取締役、垣谷欣司さん、そして、垣谷弥生さんにお話をうかがいました。

かつては日本の夏の風物詩だった蚊帳。実は、奈良県がその製造の中心でした。まずは、蚊帳の歴史について、垣谷欣司さんに教えていただきました。

「文献によりますと本当に古くて、奈良時代の大和朝廷の時に高貴な方々は蚊帳を使用されているんですよ。ただ、その時は限られた王族貴族のみが使っていて、一般庶民は使っていなかったんですが、明治時代になると、織物がローコストで、機械が普及したのと紡糸技術も進んで安価な糸が提供できるようになったんです。昔は網戸もなく、殺虫材もなく、田んぼも多くて水利の溝があったのでも蚊がたくさん出る環境がありました。クーラーもなかったので、窓、縁側を開け放っておやすみになる時には蚊帳は必需品。ローコストで作れるようになって、明治から大正、昭和の初期にかけてぐわーっと普及していきました。」

20210716h08.jpg

当時、蚊帳の製造は、そのほとんどが奈良でおこなわれていたそうです。では、なぜ、奈良で、蚊帳づくりが盛んになったのでしょうか?   

「もともと麻の糸で奈良時代には織物を織ってましたよね。薄ごろもを織る織部が大陸から招聘されて技術を伝えにきて、薄織物を織る技術が奈良に最初に普及したので、そういう技術者がたくさんいたんでしょう。それが蚊帳の機屋になって一子相伝で家業をついで行ったんで、産地として形成される条件が整っていたんでしょうね。」

その歴史は、古く奈良時代にまでさかのぼる『蚊帳』。そんな蚊帳の素材でふきんを作る。このアイディアはどうやって生まれたのでしょうか?

20210716h06.jpg

 「蚊帳を裁断して構成して大きな部屋くらいの布の箱を作るんですけど、お洋服を作る時にもそうですがパターンで裁断すると端切れが出るんです。うちの祖母の時に、その端切れをほかすのはもったいないなということで、当時は簡単にたたんで縫い込んでノリを落としたらふきんにすごく向いていたんで、それがスタートです。

麻と綿がほとんどですね、昔ですから。その後に、今ふきんで使っている、日本名称レーヨン、これは木材からパルプを取って使うパルプ繊維なんですけど、天然系の素材です。これが出だして、このテクスチャーがふきんに向くんですよ。吸水性がよく、すぐ乾くし、臭いもつきにくい。私の代になってから、ふきんはこのレーヨンを多用するようになって、ふきん用に生地を改良していった、それで現在に至る、という感じですね。」

最初は、蚊帳の端切れで 家庭用に作っていた ふきんを商品化。現在は、様々なシチュエーションに合わせた ふきんが 製造されています。

例えば、プロの割烹さん、板場で使うのであれば、麻の強度のあるモノ、そうしないと使用に耐えないんですよね、ハードだから。でも家庭で使うのであれば、テーブルでキッチンで季節を感じながら使ってもらえるものがいいかなと思いまして、今コロナ禍で外出もままならないので、春は桜、今は紫陽花とか夏の柄、秋はもみじ、もみじも緑、黄色、朱色とそろっているので、四季を愛てもらうこともできるし、あとは童話をモチーフにしたモノ、モダンなデザインのモノ、いろいろそろってます。今キッチンもいろんな趣味のキッチンがあると思いますので、そこにあうふきんを選んでいただけたらなと思います。」

20210716h07.jpg白だけでなく、豊富なデザインがある白雪ふきん。色や柄は、京友禅の技で、染められているそうです。そして、このふきんとともに、今、人気となっている商品について垣谷弥生さんに教えていただきます。それは、代表の垣谷欣司さんの経験を元に生まれたタオルです。

20210716h04.jpg

今、タオルがおすすめです。タオルと言いましてももちろん蚊帳生地で作っているもので、もともと本人がお肌がデリケートで、その時にふきんのような柔らかいもので肌に負担がないものをということで商品開発しまして、先ほども話がありましたレーヨンに、深海ザメのスクワランオイルを練り込んで、しっとりする柔らかいタオルを開発することができました。これが美容関係の方にうけまして、私自身も自分に何かいい使い方ないかなと思いまして、20年くらい前から蒸しタオルをしているんです。蒸しタオルはお湯40度から42度かと思いますが、それを絞ってお顔にのせる、だいたい30秒くらい、深呼吸3回分くらいです。」

20210716h10.jpg

奈良県にある 株式会社白雪の代表取締役、垣谷欣司さんに最後にうかがいました。毎日、どんな想いを込めて、ものづくりに取り組まれていますか?

「徹頭徹尾、決めたことは変えない、ルーティンワークをずっと続けていかないとちゃんとしたものは作れないです。僕らにとっては当たり前のことを普通に続けているだけなんです。今は変なものが多いじゃないですか。昔はお豆腐でもなんでも井戸水で国産の大豆でニガリで作っていた、だから美味しかったんですけど、それを今も続けているだけです。ものづくりとして至極当然のことを続けているだけで、やっぱちゃんとしたものっていいですよ。」

20210716h09.jpg

白雪ふきんウェブサイト

* 8/10、新橋に移転してオープン!奈良まほろば館でも販売されます。

https://www.mahoroba-kan.jp