今回ご紹介するのは、沖縄に一つだけ存在するプロのオーケストラ、琉球交響楽団。

20210528h02.jpg

2001年に創設されたこのオーケストラが、来月はじめての東京公演を開催します。お話を伺ったのは琉球交響楽団の音楽監督・指揮者の大友直人さん。まずは、琉球交響楽団、その始まりについて教えていただきます。

20210528h03.jpg

「もともと沖縄は音楽は盛んなところなんですけど、いわゆるプロフェッショナルなオーケストラはなかったんです。今から30年数年前に、沖縄県立芸術大学ができまして、そこに音楽学部が新設されて、そこの先生から連絡を受けました。その先生というのが、祖堅方正さんという日本を代表するトランペット奏者の方で、長年に渡ってNHK交響楽団、N響の首席トランペット奏者を務めていた方なんですが、その方がN響を退団して、沖縄県芸の新設の音楽学部の教授をされていたんです。最初は、1994年に大学のオーケストラの指揮をしてくれないかということで沖縄に行ったんですが、そこで祖堅先生とお話をしていたら、実はここでこうして新設の音楽学部をやっても、ここで勉強した学生が沖縄で活動する土壌が全然できてないんだと。沖縄で勉強した若い才能が活躍できる場所を作りたいんだよな、という話が発展して、プロフェッショナルなグループを立ち上げよう、ということでスタートしたのが琉球交響楽団で、ちょうど今から20年前になるんです。」

オーケストラの立ち上げ、、、そこには、大きな壁がありました。

「オーケストラを作るというのは非常に難しいことで、何よりも経済的な財政基盤、グループとして活動する資金が必要になるんです。世界中そうですけど、オーケストラを維持運営するには、かなりしっかりした財政基盤が必要で、最初のうちは楽観的にそこは組み立てられるんじゃないかと思っていたんですが、この壁は異常に厚くて、実は20年たった後でもその辺の課題はクリアできていないというのが今の琉響の抱えている課題です。でも、音楽家、演奏者の皆さんはそんな苦境の中でもこの20年間、演奏をたやすことなく、グループとしての活動を続けているのは本当に素晴らしいことだと思います。」

東京交響楽団、京都市交響楽団など、数々のオーケストラを指揮してきた大友直人さん。大友さんからみて、琉球交響楽団はどんな特徴を持ったオーケストラなのでしょうか?   

「琉球交響楽団は、これは多少、手前みそではありますが、近年の琉球交響楽団は技術も演奏も非常に高い水準になっています。私からみますと、独特のサウンドがあると思います。わかりやすくいうと、ノリがいいところ、それから、音楽的な気前がいいというか、みんなが一丸となってやるところは一丸となって音楽を作る。いろいろな音楽づくりに対してとてもピュアだと思います。純粋でメリハリのある、勢いのあるサウンドを聞かせてくれるグループだと思います。みんな苦楽を共にして、沖縄のコミュニティの仲間ですから、そういう意味での一体感は確かにあると思います。」

琉球交響楽団は去年、2枚目のアルバム『沖縄交響歳時記』をリリースしました。

「今から15年ほど前にいろいろと沖縄の知られた歌をそのままオーケストラ用にアレンジしたアルバムを出しているんです。でも、新しいアルバムを作るならばオリジナルの作品を作ろうということになりまして、作曲を萩森英明さんという30代の才能ある作曲家に委嘱しまして書き下ろしていただきました。アイディアとしては沖縄の民謡、親しまれている音楽、リズム、そうしたものを自由自在に取り入れて、オリジナルの作品を作ってほしいと。」

沖縄でお祝いの席で歌われる『かぎやで風』や民謡「てぃんさぐぬ花」。そのほか、様々な沖縄音楽を取り入れたメロディがつむがれました。そして、実は、去年の春、このアルバムのリリースのあと、はじめての東京公演が予定されていました。

20210528h01.jpg

その頃、東京公演の話が持ちあがりまして、せっかく東京公演をやるのであれば、メインとしてオリジナルの新しい作品を持ってこようと企画されたのが東京公演だったんです。でもこれはなかなかチャレンジングなことで、普通、日本でも世界でもオーケストラが地方ではじめて公演をおこなうときにはスタンダードな作品を持ってくるんです。ブラームスやマーラー、ベートーベンだったり、これが定番のプログラムの作り方で、そこに誰も聞いたことのない初めての曲をメインの曲として持ってくるのは常識では考えられないんです。でも、琉球交響楽団はこれからも今までもそうでしたが、何よりも自分たちのオリジナルのサウンドとオリジナルのレパートリーが何よりも活動にとって大事なことだという認識を私も含め、楽員のみんなも持っているものですから、この際、思い切って東京公演も初めての新作初演、という形でおこなおうということになっています。」

去年は開催できなかった東京公演、、、新作『沖縄交響歳時記』の演奏を含むプログラムが、来月、サントリーホールで 予定されています。響け、ウチナー・シンフォニー!琉球交響楽団、初めての東京公演が まもなく開催されます。

琉球交響楽団ウェブサイト