今年3月に授賞式が開催された第63回グラミー賞。実は、住友ゴム工業に所属する会社員、大久保有記さんがある部門で受賞しました。大久保さんがアメリカ駐在中に参加したバッファロー・フィルハーモニック・コーラスなどによる『THE PASSION of YESHUA』でBEST CHORAL PERFORMANCE=最優秀合唱パフォーマンス賞!!今回はそのHidden Story、ご紹介します。

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住友ゴム工業の人事総務部に所属する大久保有記さんは、2015年からアメリカ、ニューヨーク州のバッファローに駐在。そして、現地での仕事が落ち着いた2017年...

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「昔から合唱はやってましたので、何かやりたいと思ってました。2015年当時からバッファロー・フィルハーモニック・コーラスの存在は知っていてコンサートにも行っていましたが、2017年に仕事が落ち着いたところで、バッファロー・フィルハーモニック・コーラスのホームページを見たら、オーディションのページを見つけたんですね。『お、これは。』と思って、そのオーディションの要件を見たら、なんとかトライできるかなと思って、ある夏の日、教会みたいなところに一人で行ってオーディションを受けて、それで運よく合格することができたんです。それで2017年から帰任する2019年の夏まで2年間、バッファロー・フィルハーモニック・コーラスのバリトンとして歌うことができました。」

そのバッファロー・フィルハーモニック・コーラスとはどんな合唱団なのでしょうか?大久保さんに教えていただきました。

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「枠からいうとNPOなんです。Nonprofit Organizationなので、特に歌うことでお金をもらうことは我々団体もないんですけど、とにかく歌うことが好きだという人が集まって、毎週月曜日に練習してました。登録メンバーは120から130人、そのシーズンによって今シーズンは休みます、というのもあるので、100人くらいですかね。基本的には、月曜の夜7時から10時の間に100人くらいのメンバーが大学のホールに集まって練習します。ほんと年代に関しては、まだ学生、地元の大学で音楽を勉強している学生から、上は80代、このバッファローで歌い続けて50年です、みたいな方もおられて、人種に関しても様々で、アジア人に関しては、エイジアンアメリカンが多くて、日本から来た日本人は私だけでしたね。もちろん、アフリカンアメリカンの方もいらっしゃったので、本当に様々です。混声合唱団なので、男女比はそれなりにいます。アートが盛んな街とかだとイメージしやすいと思いますが、バッファローという製造業の街でそういう音楽好き、歌好きが集まって作品を作り上げる、そういう環境があるのは素晴らしいと思いますね。」

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ニューヨーク州北部、人口25万人ほどで、製造業が盛んな街・バッファロー。その街の合唱団に参加して、大久保さんは どんな感想をお持ちになったのでしょうか?

「社会人になってする音楽っていうのは本当に貴重だなと思いましたね。先ほど人種、ダイバーシティの話もありましたが、職業も様々なんですよね。私みたいなビジネスパーソンもいれば、現場のコンストラクションワーカーですとかブルーカラーの方々もたくさんいらっしゃいました。そういった方も本当に歌いたいという一心で限られた時間の中で集まってきて、コンサートの日程が決まっている中、音楽を作りあげていこうという、月曜のマンデーナイトの集約するエネルギーはほんとすごいなと思いました。苦しさ、しんどさは嘘じゃなく全然なかったです。月曜、マンデーナイトが楽しみすぎて。早くみんなに会って歌いたいなという。これが正直な感想です。」

いくつもの"熱い"マンデーナイトを経てレコーディングされたのが今回のグラミー受賞作『THE PASSION of YESHUA』。

「これは、リチャード・ダニエルプアさんという現役のUCLAの教員の方なんですけど、『ヨシュアの受難曲』と言いまして、『マタイ受難曲』とか『ヨハネ受難曲』とかバッハが書いてたりして、有名どころはいくつかありますが、ご存命の方が書いた受難曲として今売り出し中というか、そういう曲でした。もちろんオーケストラ伴奏、合唱団がいるんですが、作曲者のダニエルプアさんがUCLAの教員ということで、アメリカのウエストコーストでは初演が2017年に行われましたが、2019年4月にレコーディングした時は東海岸での初演、ということで、バッファロー・フィルハーモニック・オーケストラとコーラス、それぞれのソリスト、UCLAの学生たちも20~30人ジョインしまして、大規模なコンサートを行ったという運びになっています。」

この作品が、BEST CHORAL PERFORMANCE=最優秀合唱パフォーマンス賞に輝きました。ここに参加した大久保有記さん、100人以上で声を合わせて歌うこと、その魅力について、こう語ります。

もうその中で歌うのはすごく気持ちいいですよ。聴衆として聞きにいく音楽も素晴らしいんですけど、その合唱団の中で、後ろからも声が聞こえ、自分も発してというのはエネルギーが渦巻いているんです。そういう意味では、体で人の声の響きを感じる、自分のもそうですが、周りの合唱メンバーの響きも感じるんで、なんとも言い表しにくいんですけど、感動します。」

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そして、最後に、大久保有記さんからはこんなメッセージもいただきました。

「ほんとに好きだから続けてきた音楽で、たまたまなんですが、こういう風に、巡り合わせでグラミー賞受賞ということになりました。ほんとに迷っている人はぜひ、とりあえずやってみてと思います。それを僭越ながら若い方には伝えたいなというところはありますね。」