今週ご紹介するのは、北海道のユートピアアグリカルチャーが製造、販売するチーズケーキ、その名も【CHEESE WONDER】。ユートピアアグリカルチャーの代表、長沼真太郎さんにお話をうかがいました。

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北海道の洋菓子屋さん『きのとや』の創業者、長沼昭夫さんを父に持つ、長沼真太郎さん。実は以前、焼きたてチーズタルト専門店を展開する『BAKE』を創業、4年ほどでスタッフ1000人を抱える会社へと成長させました。長沼さんが その『BAKE』を離れ、立ちあげたのが、ユートピアアグリカルチャーです。

「もともとBAKEをやっている時から、美味しさの3原則がありまして、一つがフレッシュに提供する、二つ目が手間をかける、もう一つがとにかくいい原材料を使う、ということ。でも、そのいい原材料を使うというのがネックで、こだわりきれない、という状況だったんです。それを克服するには、自分たちで乳製品を作りたい。自分たちで牧場をやって自分たちでミルクを作りたい、というのは、BAKE時代からずっと思ってまして。」

『BAKE』を離れたあと、長沼さんはアメリカ、スタンフォード大学の客員研究員として学び、帰国。北海道で牧場を始めるべく、動きます。

「牧場の運営方法っていろいろありまして、牛を放牧するやり方と、牛舎式といって牛舎だけで飼う方法、など、いろいろあるんですが、その中で、放牧にこだわっています。北海道の日高町に牧場があるんですが、その牧場を居抜きで買い取りました。もともと日高って、馬の牧場がたくさんあるところで、馬の牧場がある、ということはいい草が生える、と言われています。そしてさらに、雪が少ないんです。青い草が生えている時期が長ければ長い方がいい。」   

しかし、『放牧式』の場合、エネルギー量の高いエサを与える『牛舎式』よりも、一頭の牛から取れる牛乳の量が少ないんだそうです。それにもかかわらず放牧式を選んだのには、こんな理由がありました。

「まず私の中で放牧式を選ぶ一番大きい理由は、お菓子に置いて、放牧式が一番あうと思っているからです。放牧式の場合は青い草を食べるので、ミルク自体にカロチンとかビタミン類が豊富だと言われていて、実際、牛乳を見ると黄色いんです。そして、風味があると思っています。牛乳を飲むだけではそれほど違いがわからなくても、チーズにするとかバターにするとか加工すると風味にあらわれます。なので、放牧式は、お菓子にはよく合って、美味しい。あともう一つは、北海道の酪農業界にとって、これからは放牧がいいだろうと思ってまして、実際、北海道って放牧ができないと皆さん思っているんです。日本は土地がないと思われている。でも、今の時代、離農、農家をやめる方が多かったり、地方から人がいなくなっていて、実際、土地は余ってるんです。なので、その土地を利用するという意味でも可能性は秘めてたりするので、これからの北海道にとって重要だと考えています。」

ユートピアアグリカルチャーは、北海道の日高町で放牧式の牧場をスタート。そして、そこで生産された材料を使ったお菓子づくりに着手します。

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「当初からオンラインで販売することにこだわりたかったので、通販の良さが一番出るお菓子にしたいと思ってチーズケーキを選んだんですが、チーズケーキは冷凍で味が劣化しずらいと言われています。一番の特徴は、私はもともとお菓子屋で生まれまして小さい頃からお菓子に囲まれて育ったんですが、工場で食べるチーズケーキが一番美味しい。特に美味しいのがチーズケーキの出来立てなんですが、チーズムースのしぼりたてが一番美味しいと思っていて、これを提供できないかと考えていたんです。なので、今回は特に焼くとかそういうことはせずしぼりたてのムース自体を瞬間冷凍して、それをそのままお客様に届ける、そういうお菓子になっています。」

一番下にクッキーのタルト生地。その上に、生の状態のスフレ生地。さらにその上にチーズムースをしぼって 瞬間冷凍。このチーズケーキ【CHEESE WONDER】は、今年2月、発売を開始するとすぐに 大人気となりました。会社を立ち上げ いきなりヒット商品を生み出した、ユートピアアグリカルチャー、長沼真太郎さん。最後に、放牧式の酪農が持つ可能性について、こんなことを話してくれました。

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「環境への負荷、というポイントなんですけど、今、世界的に牛が環境負荷の高い生き物だと言われているんです。世界の温室効果ガスの最大20%が農業分野から出ると言われて、その中のすごい割合で牛が出すメタンガスが問題だと言われています。ただ、放牧をすることで、そのメタンガスをオフセットする可能性があると言われていて、それを今、北海道大学の先生と実証実験をしています。メタンガスが二酸化炭素に変わるんですが、それを吸収するものが、実は土壌なんです。土ですね。大きい話をすると、地球上で二酸化炭素を最も吸収するのが海で、その次が土だと言われています。微生物量が多くていい土になればなるほど吸収量が多くなると言われています。我々としてもそれを実証していきたいなということで今研究をしています。」

CHEESE WONDERウェブサイト