今週は、Nulbarichのニューアルバム『NEW GRAVITY』のHidden Story。NulbarichのJQさんにお話いただきました。

20210423h02.jpg

2019年12月1日、Nulbarichはさいたまスーパーアリーナでライヴを開催しました。ファーストアルバムのリリースから3年、JQさんいわく、「このライヴを経て、ようやく、『俺たちがNulbarichです。』と胸を張って言えるような気がした。」そして、翌2020年。JQさんは制作の拠点をアメリカのロサンゼルスへ移します。

さいたまスーパーアリーナを経て、自分の中でさらなる飛躍というか、自分に新たな力が欲しい、インプットの環境を変えたいと思ってアメリカに行くのを決めました。いろいろ練って、やっと2020年に行くことができたんですけど、コロナで街がロックダウンして、今帰るとまた戻ると1ヶ月取られるんで隔離とかで、そうすると制作もできない。それじゃあ、しばらくいようかってことで 2020年は夏過ぎまでずっとLAにいましたね。」

コロナ禍、ロサンゼルスでの日々の中で作られたのが、ニューアルバム『NEW GRAVITY』です。

「2020年に感じたこと、というか、LAに行った自分の心境にリンクする曲が重なっていったっていう。古い曲もあるし、新しい曲もあるし、作った時期はバラバラなんですけど、気持ちがそこにフォーカスされたアルバムというか。『Tokyo』とかも、自分がナルバリ星から東京に降り立ったときって不安じゃないですか、音楽でやっていこうと思って右も左もわからない状況が今とリンクしたんです。『Tokyo』はその時に作っている曲なんですよね。だから古い曲なんですけど、それをアレンジして歌詞もディテールを変えて書き直した曲なんですけど、2020年の僕が割と自分と向き合う時間が多く、古いハードディスクをあさっていると、昔の曲が出てきて、『ああ、なっちーな』と、そこのリリックに救われたので、その救われた曲を歌えそうな気がしたので、リリースしたんです。」

過去の自分が書いた曲に、救われた。それが、アルバム冒頭『Intro』に続く2トラック目に収録された『Tokyo』。大きな会場でライヴで聴くと気持ちよさそうな曲ですが...

「このTokyoも、捉え方によっては壮大なんですが、ビートのキックがドンドンドンって鳴っているだけとかも僕のイメージではハートビート、鼓動というか。だからわりと今回のアルバムはライヴ規模に合わせてというよりは、2020年、ライブができてない分、自分と向きあった。だから音作りはミニマムで、だけど、なんていうんですかね、自分の世界っていうのが一番広いんですよね、結局。自分の想像の世界の方がそれこそマディソンスクエアガーデンでやるより、規模感でいうと、自分の脳みその中の方がでかいんで。」

どんなライヴ会場よりも、自分の中にある世界が一番広い。そこに向きあって制作された新作『NEW GRAVITY』。 ここ最近の大きな流れとも言える 80sサウンドのアレンジも聞こえてきます。   

アメリカという国は音楽に溢れているので、どんな時も音楽と一緒にという方が多いです。日常的に音楽が流れているし、普段から別にアーティストも応援してないけど、あの曲は歌えるよね、みたいな。日常的に流れていてそれに対して自然と体が動く国というか、絶対音楽聞いてないだろうという人がラジオでビリーアイリッシュかかってたら口ずさんでいるけど誰だろうこの子みたいな。その辺ではもう80sとかリバイバルとかすごく流行るんですよね。だから、80sの影響ということではLAの影響はあるかもしれないですね。」

『NEW GRAVITY』、 DISC1のラストは『In My Hand』。

In My Hand』は、これも意外なんですけど、『Tokyo』と同じタイミングでできてる昔の曲で。だから、どのタイミングで何の言葉が響くかって全然わからなくて、でも少なくとも過去の自分から今の自分へメッセージをバシバシに与えてきたリリックではあるので、それをIntro挟んで1曲目と最後に入れることで中の曲の自由度がだいぶ変わったりもしました。アルバム最後に歌うのはこれしかなかったし、1曲目は『Tokyo』でありたいってずっとあったんで、逆にこの2020年の環境がなかったらこの楽曲たちはリリースされることなく、僕のハードディスクの中で、僕だけを支える曲になったかもしれないですけど。(笑)ぜひみんなに聞いてもらいないなと思って。」

最初と最後に収録された、『Tokyo』と『In My Hand』。『Tokyo』には、マーヴィン・ゲイという歌詞が出てきますし、『In My Handには、名曲『What's Going On』を彷彿とさせる言葉も出てきます。JQさんに、最後に このことについて聞きました。

20210423h01.jpg

「やっぱり音楽のあり方を彼は教えてくれてたというか、もちろん、女の子にカッコいいと言われたくて始めた音楽ではありますが、最終的にそれを続けることによって、たくさん音楽に救われてきたし、きっとみんなそうだからという、それを音楽をやる理由に自分の中でしてきたというか。音楽の一言で何かが救えるのなら、そのポテンシャルは直接何かを助けるよりもっと幅広く人を助けられるかもしれないし、一言言うよりも深く伝わってもっと深みのある助け方もできるかもしれない。無限の可能性みたいなのを感じていたので、音楽に。そのマーヴィン・ゲイとかが言う言葉とか、そのくらい影響力のある人間になりたいという目標は多分あって。みんなのマインドに寄り添える音楽がもし僕が作ることができるなら、それは最高だよねっていう。だから今、俺もバチっときちゃうんだろうなっていう感覚はあるんですよね。」

Nulbarichウェブサイト