今回は映画【にしきたショパン】の監督、竹本祥乃さんのHidden Storyです。

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(C) 2020 Office Hassel

竹本祥乃さん、平日は国立研究開発法人理化学研究所に勤務、脳の病気についての研究などを担当。映画製作は 週末を中心におこなっています。そして、実は研究職につく前は、公務員として働かれていたそうです。

「最初の就職先があまりにも厳しくて、そこで創作意欲が芽生えたんですよ。このまま定年までいくのはしんどすぎるという時に妄想が生まれるわけですね。楽しいことしたいという。で、頭の中で、こういう映像があったらいいなという妄想が生まれて、やめたら私映画作るぞ、というのが芽生えたんですね。もう頭の中で映像が浮かんだんです、自分が作りたいものが。作りたいという欲求がすごく出て、でも、何も作り方も知らないし、学校もそういうところにいってないのに作りたくなって、最初の就職先をやめて次のところに行っている時に、大学生のシネマサークルを手伝いに行ったんです、スタッフとして。1回か2回手伝った時に、あ、こんな風に作るのかとなんとなく分かったんですよ。そこから自分で作ろうと。」

映画制作の知識ゼロだった竹本さん、大学のシネマサークルを手伝いに行って、そこで映画の作り方を知り、短編映画の製作をスタートします。しかし、

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(C) 2020 Office Hassel

「やってみたら大変だった!わーっていっぱい失敗して、あ、こういう時にこう動かないといけないと分かりました。1回目はスタッフワークに失敗したので、2回目は改善していきましたね。普通は多分、制作さんがいたり、助監督さんとかいたらスムーズなんでしょうけど、一人で全部やってたのがまずかったですね。一人で抱えることが多すぎて連絡ができず齟齬が生じたり、役者さんにも迷惑をかけたので、スタッフをちゃんと作らないと、と思いました。」

これが今から10数年前のこと。その後、短編を20本以上 作りました。そして、今回、初の長編となる映画【にしきたショパン】を監督されたわけですが、この作品を手がけることになるきっかけは、どんなことだったのでしょうか?

「短編映画で【アルカディア】という作品を私が撮る時に、撮影場所を探していまして、ヨーロッパ風の撮影に良さそうなカフェを見つけて、そこのオーナーが今の映画のプロデューサーなんですね。出会って、私の活動に興味を持ってくださって、そこから『一緒に作りましょう』ということになりました。近藤さんがプロデューサーです。で、近藤さんが書かれたエッセイで『マスター先生』という本があるんですが、それを渡されて、私読みもしないで、いけると思って、『これ映画にしませんか』と言ったんです。それは阪神淡路大震災など震災をテーマにしたエッセイだったので、それをもとに映画を作りましょうとなったんですが、長編にするには難しかったので、1年くらいかけて根幹を作っていったということですね。」

【にしきたショパン】、タイトルの『にしきた』とは、兵庫県の西宮北口駅のこと。西宮北口の街も、阪神淡路大震災で 大きな被害を受けました。今回の作品のプロデューサー、近藤修平さんは、震災当時、ガス会社の社員として、復旧作業に携わったそうです。そして...

「仕事が終わって、ボロボロの街を歩いている時にショパンが聞こえてきたと。下手なショパンが。泣けちゃったらしいんですよ。すごく印象に残っていたらしくて。それでショパンは入れたいと。」

映画のプロデューサー、近藤修平さんは、【にしきたショパン】のクラウドファンディングのため、こんな文章を寄せています。

目に入る景色からは、阪神淡路大震災の傷跡もほとんど見られなくなったある日、『左手のピアニスト』と出会いました。局所性ジストニアのため左手だけで演奏するピアニスト。『左手のピアニスト』を応援することをテーマに映画製作に取り組んでいます。

そう、今回の作品には、左手のピアノ曲が登場します。さらに、【にしきたショパン】は、こんなテーマも描いています。コンクール という『夢』をあきらめるピアニスト。しかし、競い合うこと以外に、音楽の楽しさ、豊かさがある、ということ。

20210326h03.jpg(C) 2020 Office Hassel

「やっぱり人の心というのは、なんていうんでしょうね、心の底から湧き上がるものでしかないといけないというか。例えば仕事でも、すごくいい条件の仕事でも心が動かなければつらいんですよ。逆に、条件が悪い仕事でも心がワクワクしたら楽しい、というような、気持ちとか心とは何かというのをすごく大事にした部分があります。人はトラブルが起きると周りの人のせいにしてしまいがちなんですよ。でも、全部自分の心次第なんだってことですかね。モヤモヤしたことがある方はみたあとに何か得るものがあるんじゃないかなと思っております。」

【にしきたショパン】WEBサイト


映画「にしきたショパン」竹本祥乃監督のHidden Story、お送りしました。映画のストーリー、少しだけご紹介すると...

凜子と鍵太郎は、幼なじみ。二人ともピアノに打ち込みますが、鍵太郎は、阪神淡路大震災で怪我をして、ピアノを うまく弾けなくなります。一方、凜子は、鍵太郎の代わりに ポーランドへ音楽留学。時が立ち、日本へ帰国した凜子は 鍵太郎と再会しますが、鍵太郎の心は、かつてとは全く違うものに変わっていました。そして...という物語。

監督からは、「心の底から湧き上がるもの」「ワクワクすることの大切さ」こうしたことがテーマだとおっしゃっていました。

監督自身が、研究職につきながら、映画製作。まさに、ワクワクを追求してらっしゃる!ぜひこの作品、ご覧ください。「にしきたショパン」、東京では池袋のシネマロサで公開中です。感染対策実施の上、お出かけください。