今回はこの番組で以前、朝6時台に放送していた「POWER YOUR WEEKEND」=リスナーのみなさんにカビラがコールして元気注入!というコーナーで、2012年の11月に電話をさせていただいた方をご紹介します。

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月崎竜童さん。 実は、コールさせていただいた時は、東京大学の大学院で学びながらJAXA 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所で、小惑星探査機 はやぶさのイオンエンジンの性能がどうやったら向上するか、研究されていました。そして、その後、、、

「卒業してほぼすぐにJAXAの職員として、教育職の助教として採用されて、当時、はやぶさ2の開発がすでに始まっていました。はやぶさ2は、2014年12月まで3年しかなかったんですけど、通常の半分の期間で開発しなければならなくて、その怒涛の開発期間に新入の職員として参加し始めました。

当時はもうトップスピードでプロジェクトが走っていて、たとえるならば、私は静岡出身なんですが、静岡駅を通過するのぞみ号に飛び乗るような覚悟で飛び乗りましたね、大怪我をしましたけど。」

月崎さんは、はやぶさ2のイオンエンジンの開発に参加します。

「非常に苦しい作業で、メーカーはNECという会社、推進材やタンクとかは三菱重工長崎さんが担当されていますが、それを取りまとめて、JAXAの責任でイオンエンジンのシステムを作り上げて、はやぶさ2システムに引き渡すというのが、私たちの仕事でした。はやぶさ2は、いろんなサブシステムがあるんですが、私たちのイオンエンジンのシステムが一番手がかかるというか、一番スケジュールのクリティカルなところになっていて、私たちが一日遅れると、探査機全体が一日遅れる、というところまで追い込まれていました。」

はやぶさ2の様々なパーツの中でも、大きく、非常に複雑だというイオンエンジン。いったいどんなものなのでしょうか?

「燃料となるガス、ありますよね。普通、小学生中学生の理科だと個体液体気体とあると思うんですが、その気体の状態を、さらにエネルギーを与えると電子が飛び出して、プラスのイオンとマイナスの電子の集合体になるんですね。これはエネルギーが非常に高い状態で、これがプラズマという状態。その電気の質を帯びたプラズマ状態のガスを、電気の力、磁石の力、磁場の力で加速することで推力を生み出す装置で、それがイオンエンジンです。

はやぶさは500キロの機体だったんですが、はやぶさ2は、小惑星探査機で科学衛星なので、いろんな装置がついていて、重さが500キロから600キロに増えたんです。600キロに増えたことにエンジンも対応しないと小惑星まで辿り着けないという状況で、それを私が研究した成果でエンジンを改良するとうまくはやぶさが行って帰ってこられるとわかったので、無事設計に反映されて、宇宙に行きました。」

月崎さんの研究成果を反映し、性能を高めたイオンエンジンによってはやぶさ2は、小惑星リュウグウへ行き、サンプルを採取しました。でも、そもそも なぜ、この星が選ばれたのでしょうか?

「地球は今から45億年前に誕生したんですが、非常に熱い星でした。そのような状況で水が生まれて、有機物、生命が生まれるということはありえない状況で、じゃあ、どうやって生命が生まれたのかというと、地球の外側から小惑星が降り注いで、その小惑星の有機物が生命誕生のきっかけになったのでは?という学説があります。それを直接的に調べるには、小惑星に行って有機物がどういう状態にあるか調べる必要がある、ということで。」

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はやぶさ2は、リュウグウで採取したサンプルを入れたカプセルを地球へ投下。昨年12月6日、無事回収されました。ここまでで、はやぶさ2は ミッション達成!なんですが、実は、、、。

「はやぶさ2は非常に順調で60キロの燃料を積んでいるんですが、半分しか使用していません。半分の燃料が残っていてエンジンも状態がいいので、2031年にむけて拡張ミッションに入っています。

はやぶさ2は、地球にカプセルを投下したあと、別の小惑星にむけて旅を始めました。直線距離で言うと太陽の向こう側なので3億キロくらい離れています。打ち上げからトータルで100億キロ以上の航海をすることになっています。

非常に長い旅路になります。設計寿命をはるかに超える、いつ壊れてもおかしくない旅になっています。設計寿命を超えた領域です。」

月崎竜童さんに、最後に伺いました。日々、どんな想いを胸に、宇宙に関わる仕事にのぞまれているのでしょうか?

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「非常に難しいですが、一つは、コロナで暗いニュースが多かったじゃないですか。そんな中、小惑星からのサンプルリターンをどんな困難があってもちゃんと計画通り実現して戻ってこれたというのを示せたのは非常に良かったなと思っています。これからも惑星探査、人類が行ったことがないところに行ってみてこんな世界が広がっているんだというワクワクドキドキの楽しさは科学者として伝えていきたいと思っています。じゃあ、これが我々の生活の何の役に立つんだと言われるかもしれませんが、今回活動してみて、我々が生きていく上で、楽しさとか、希望とか、学術的面白さもそうでうし、新しいことに挑戦して成功するということは非常に重要だと思いますので、その魅力をぜひ伝えていけたらなと思っています。」

はやぶさ2 ウェブサイト