今週は、パナソニック発のベンチャー企業、ギフモ株式会社が手がける調理家電、【デリソフター】に注目します。

「【デリソフター】という調理家電なんですが、こちらは一般家庭向けの調理家電です。炊飯器、電子レンジと同じように、そのとなりに置いてもらうことを想定していますが、デリソフターはかみごたえのあるお食事、歯を使って咀嚼して飲み込むお料理を見た目と味、そのままで柔かくすることができる調理家電です。」

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お話をうかがったのはギフモ株式会社の代表、森實将さん。そもそも、こうした調理器具を開発しようと思ったきっかけはどんなことだったのでしょうか?

「最初にアイディアを考え出したのがパナソニックの二人のベテランの女性社員だったんです。小川と水野という二人の女性なんですが、このふたりが親御さんの介護の経験があったんです。家で介護した経験があって、その中で困ったのがお食事。どう作るか、相手にどうやって楽しんで食べてもらうか、そこに苦心したということでした。これは、小川というGIFMOの社員の経験ですが、小川はお父さんの介護をしていました。お父さんがお食事、ごはんを食べるのが好きな方で、現状、食べるのに困り始めた方は介護食を食べるのが一般的なんですが、ミキサーでどろどろにして元の形がわからないもの、もしくはもともと柔らかくしてあるものを食べてもらうのが一般的なんです。でも、人生70年80年生きてきた中で、自分が食べたいのは、どろどろにした介護食じゃないんですね。お肉料理、野菜料理、家庭の味、慣れ親しんできた味を一緒に分かち合いたい。ですが、一人食べにくい方がいらっしゃるとミキサーでどろどろにしたものを食べさせていただかなくてはいけない。お食事を作る側、食べる側、それぞれの想いがかなわない環境が今の介護の食の環境なんですね。」

ギフモのみなさんは この課題をどうやって解決しようと考えたのか?ポイントは、圧力・筋きり・穴あけ。

「どのように柔らかくしているかというと、まずは圧力を使っています。ここ最近、電気圧力鍋が巣篭もり需要で売れているという背景があるんですが、この電気圧力鍋の技術を一部採用しています。圧力のかけられるスペックとしましては、日本国内最高の2.0気圧まで圧力をかけることが可能です。この2.0気圧は日本では唯一、世界で見ても電気圧力鍋としては2、3社しか開発していません。

もう一つ、これが弊社で独自に開発したものなんですが、食品、調理済みのお料理、唐揚げ、ステーキ、温野菜、こうした調理してあるお料理に筋きり、穴あけをする調理器具を開発しました。その調理器具で穴開け、筋切りをおこなった後で、圧力と熱で調理する形になります。」

【デリソフター】の使い方は、電気圧力鍋に入れる前に、お料理に独自開発した器具で筋きりと穴あけを行う、ということですが、その器具の開発が一つの壁でした。

「これも試行錯誤でしたね。最初はいろんな刃の形、フォーク、本当に剣山を買ってきてやってみたり、検証を重ねました。柔らかくなる穴の大きさやどのくらい切れば柔かくなるか、それに加えて、食べ物の見た目を崩さずにそれができるかを考えて開発しました。大きな穴が開いてしまうと、ある程度形が残っていても、食事をとる前にああなんかやったんだなというがっかり感だったり、極端にいうと、ミキサーにかけたもののように形が変わってしまわないようにこだわって、見た目がわからないように、変わっていないように見えるように加工ができる道具を作りました。」

【デリソフター】は、去年の夏から販売スタート。すると、想定していなかった反響が寄せられました。

「我々、高齢者に使っていただきたい、と思っていたんですが、障害児、障害児の親御様に非常に好評をいただいていまして、ケアチャンネルといった情報交換のサイトにどんどんデリソフター を使った例を紹介していただいたり、SNSでもこんなお料理をしたら子供がこんなに食べた、という事例を紹介いただいています。」

ギフモ株式会社の代表、森實将さんに最後にうかがいました。今後、どんなものづくりをしていこうと考えていますか?

「GIFMOという会社名の由来なんですが、GIFTと想いを組み合わせた造語になります。想いを贈りあう社会を作っていきたい、という想いを社名に込めています。作る側が食べる側においしいと思ってほしいなと思ってごはんを作る。

食べる側は、今日も美味しいもの作ってくれてありがとうといった思いを口に出したり、ひそかに思ったり、そういう想いを交わし合うことが食事の喜びだと思っています。介護食を食べる高齢者、障害児、全ての方が食事の喜びをいつまでも感じていただきたいなと思います。

今回はお食事なんですけど、例えば、飲み物。飲むということも課題のある領域なんですね。とろみをつけて飲み物を飲まなくてはいけない方がいらっしゃいます。」そう言ったところも、我々のケア家電で解決して安全に、食の喜びを感じていただける社会になっていったらいいなと思っています。」

デリソフターWEBサイト