今回は【あたりまえは変えられる】という想いのもとスイッチ・スタンダード・プロジェクトを展開するファッションブランド『ALL YOURS』を紹介します。『ALL YOURS』が変えようとしているのは、どんな"あたりまえ"なのか?代表の木村昌史さんにお話をうかがいました。

20210115h01.jpg

アパレルの販売員を18歳から始め、その後、店長、バイヤー、商品企画などファッションの仕事を続けてきた木村昌史さん。『ALL YOURS』を創業したのは、2015年のことでした。

「2015年の7月にALL YOURSというブランドを立ち上げたんですが、それまで私はサラリーマンをしていました。アパレルの小売店、メーカーみたいなものでやっていたんですが、年をとるごとに自分が着たい服がなくなってきたなということで、自分たちがきていて気持ちいい、心地いい、長く着れるものを作りたいと思って始めました。一番大きなきっかけは2011年の震災が大きくて、自分の仕事の仕方もそうだし、買うものもエッセンシャルなものが欲しいと、本当に大切なものが欲しいなと思って、その想いの積み重ねが2015年の独立につながった気がします。」

心地よく、長く着られる服を作りたい。そして、ブランド名のALL YOURSにはこんな想いが込められました。

「アパレル業界というのが、ミラノコレクションとかパリコレとか、コレクションからトレンドが生まれてそれをハイブランドから末端のブランドまでそれを模倣していくみたいな大きな流れがある産業なんです。でも、トップダウン的だなと感じていて、もっとボトムから始まっていくことがあってもいいんじゃないか、トレンドから始まるのではなく、着用する人たちのことを考えてものづくり、サービスが始まってもいいんじゃないか、ということで、ALL YOURSとつけました。」

では、どんな服を作るのか?創業当初に考えられたのは、こんな商品でした。

20210115h03.jpg

「履き心地がいいジーンズ。これは、その当時だとストレッチのジーンズは見るからにストレッチのジーンズであまりかっこよくなかったんですね。私たちはアメリカのヴィンテージウェアが好きだったので、しっかりヴィンテージに見えて、かつ楽にはける、そういうジーンズ。あとはスウェットパーカーなんですが、水をはじくパーカーです。急に雨が降ったときに傘を持っていればいいんですが、そういうときに多少の雨なら傘を持たなくていい、天候にしばられない服があればいいなと思って作りました。最初はこんな商品があったらいいとか、こんなものがあったらいい、という飲み会の話みたいなところから始まったんですが、その後、サンプルを作りながらこれでいけそうだというものでクラウドファンディングを始めました。」

最初にクラウドファンディングをおこなった『水をはじくコットンパーカー』は400万円の支援を集め見事、商品化。さらにその後、2017年の5月からは24ヶ月連続でクラウドファンディングを実施します。

「2017年の7月にやったプロジェクトで、日本で一番支援をいただいたプロジェクトをやることができました。これは『着たくないのに毎日着てしまうジャケットとパンツ』というもので、700人の支援者の方に1800万円くらいご支援頂いたんですが、その時は、自分たちでやってる感じがしなくて、本当に、どんどんインターネット上に『応援してます』などのコメントをいただいて、すごく盛り上がるプロジェクトをすることができました。

私たちが買っていただきたいなと思っているお客様が自由に仕事をしている人たち、普段着で仕事をされている方なんですが、そういう方がちょっと打ち合わせの時にジャケットが着たい、というときに、着たくなるジャケットがないと。そういう方のために楽に着れるジャケットとパンツをと思いました。楽に着れるしシワにならないし、洗ってもすぐ乾くので、出張に持っていっててホテルで洗っても次の日また着れる、みたいな、そういうことで開発した商品です。」

『ALL YOURS』が 今 取り組んでいるのがスイッチ・スタンダード・プロジェクトです。

「スイッチ・スタンダード、というスローガンのもと、目線を変えたら見える社会が変わるんだということで、社会的に意義があることにシフトしていこうとしています。服で社会が課題を抱えているところをアピールできないかと考えていまして、例えばうちの服はメンズレディーズがありません。小さいサイズから大きいサイズまであって、メンズレディーズという言い方はやめて全てフラットに見てもらったり、その中で商品数は減らして、サイズ数を増やす、ということをやっています。

お店に来ていただく方で、男性女性と分けられない、間の方がいるなと感じたんですね。そもそもアパレルでは入り口をメンズウイメンズで分けるんですけど、そうするとその人たちの居場所というか存在をないものにしているなと気づいて。そこに違和感を感じて、とりあえずできることから、ということで、ALL YOURSは、サイズをいろいろとり揃えているので、メンズウイメンズの言い方をやめる、ということに切り変えました。」

20210115h02.jpg

自分が着て気持ちいい服から、社会が気持ちいい服へ。木村昌史さんは、最後にこんなことを話してくれました。

「今は誰もが認められる社会が作りたいということをヴィジョンにしながら、どうしたら誰もが排除されない社会、というのを服を通して表現できるのか、というのを社内で話している感じです。

単純に大きいサイズの方って選択肢がいきなりなくなったりとか、小さいサイズの方って男性だとそれだけでコンプレックスで、レディース服を着ないとサイズが合わないという方もいらっしゃって、ファッション産業が、無意識のうちに排除してしまっている方が多いなというのが課題です。そういう方をなくしたいなというのが自分たちの想いです。」

ALL YOURSウェブサイト